別視点観光ツアー 片手袋現象〜目に見えないものを意識すること〜
2020年2月24日に観光会社別視点主催ツアーに参加した。
タイトルからして長いし濃い。
「空想地図作家、珍スポマニア、片手袋研究家とバスで行く「動く!別視点大学」
固有名詞がやたら多く初見の人には「?」がやたら付くはずなので一つ一つ説明したい。
まず観光会社別視点の説明から。
観光会社別視点のウェブサイトにはこう説明がある
「世の中に視点を増やす。
増やした視点から見れば、日常はそのままの姿でおもしろくなり、日常の価値が高まる。
そんな想いを使命として、マニアの知見を活かしたプロモーション活動や地方創生支援をおこなっています」
要するにマニアックな人たちをガイド役に都市を観察するツアー会社、と思ってもらえればいい。
今回は空想地図作家「地理人」さんと「片手袋マニア」石井公二さんとバスツアーである。
これだけだとますます「?」である。
地理人さんは7歳の頃から架空都市「中村市」の地図を作成している。国内外問わず都市を綿密に分析し地図の観点から地理を解き明かしている。
一方、片手袋マニア石井さんは道端に落ちている軍手やゴム手袋を観察しつ続けている。
濃いメンバーである。この面々と12時間のバスツアーである。
ルート
12時間のバスツアーのルートは以下。
①池袋(集合地点)
<関越道>
②川越本丸御殿の公園
③笹川(昼食)
④川越菓子屋横丁
⑤高崎洞窟観音
<高速道>
⑥池袋(解散地点)
別視点代表松澤さんから池袋出発直後に
「普通のバスツアーならバス移動は休憩の時間です。けど今回は休憩ではなくメイン。解説を聞き続ける疲れるツアーです」
と衝撃的宣言がされる。
池袋出発直後の30分間で片手袋マニア石井さんは4個も片手袋を見つけてしまった。
取り上げたいことは8時間の長丁場で山ほどあるが、印象的だった「高崎洞窟観音」と片手袋マニア石井さんの締めの挨拶を取り上げる。
高崎洞窟観音は群馬県高崎市にある巨大観音様である。
呉服商山田徳蔵が私財を投じ50年の歳月を経て完成された。
大型重機は使わずツルハシやスコップといった人力で建設されたと伝わる。
徳蔵氏は生涯を観音様の建設に捧げた。
観音様の周囲には徳明園という風光明媚な庭園が有り、四季を通して楽しめる。
洞窟内には400mの参道に39体の観音像がいる
観音様の案内スタッフには陽気な老翁がいた。
別視点ツアー一行を見つけると徳蔵氏の生涯について語り、巨大観音様を見つめながらこう言った。
「猫を飼ってんだけど、猫の顔描けないんだ。徳蔵さんは観音様を見たこと無いはずだし、誰も見たこと無いけど彫れるんだもんな」
片手袋マニア石井さんは締めの挨拶として、観光様の麓から高崎の街を見つめ、こう言った。
「いまこの瞬間にも片手袋は発生している」
片手袋マニア石井さんは、とある片手袋を定点で2週間観察し続けたという。
誰かが動かしたのか、ひとりでに動いたのか。
何も知らない人が見ればよくある地方都市のパノラマビジョン。
しかしいまこの瞬間にも誰かが片手袋を落とし、片手袋は移動し、街に溶け込む光景。
本来片手袋は誰にも見つけられず存在を知られることも無い。
だけれども今日一日片手袋マニアと過ごした人たちは" 片手袋"という別の視点が加わり"片手袋"という世界が自分の中に生まれた。
これからは片手袋の存在に気付けるのだ。
「猫を飼ってんだけど、猫の顔描けないんだ。徳蔵さんは観音様を見たこと無いはずだし、誰も見たこと無いけど彫れるんだもんな」
案内スタッフの老翁の発言と繋がる。
徳蔵氏は観音様という見えないものを巨大像にして可視化した。
誰の中にも”片手袋”はあり視点を生むのだ。
見えないものが見えるようになるのだ。