インドカレーナハマジャ
グランドクロス、、、それは惑星が十字型に並ぶ奇跡の瞬間。
占星術では凶座相を意味し、太古から人々は星々が描くラインの交わりを畏れ敬ってきたのだ。
そんな決して交わることのないモノが交わる瞬間、まさに趣味のグランドクロスを私は経験したことがある。
「ステーシー」である。
なんのこっちゃと混乱するのも無理はない。ステーシーとは大槻ケンヂのホラー小説のタイトル。15歳から17歳の少女たちが突然狂い死にし、その死体が蘇り人間を喰らうという現象が蔓延した世界で、さまよえる屍少女たちは誰言うとなしに「ステーシー」と名付けられる、、という世界観の物語だ。
ホラー小説にハマっていた高校生の自分は、たまたまブックオフで購入したこの文庫本の異常で狂ったそれでもただただ美しい物語に心酔し、己に留めるに至らずクラスメイトに薦めまくって引かれていた。
作者の大槻ケンヂも執筆中はかなりまいっていたようで、締め切り間近に編集者を呼びつけ今から脳内にある原稿を音読するから録音して!!ってペラペラ喋ったらそれがきっちり指定された文字数だった、、みたいなエピソードを後書きで読んだ気がする。
読者も作者も正気ではないコカインのような魅力に溢れるステーシー。
少ないお小遣いを工面してなんと加藤夏希主演のDVDも買った!生まれて初めて購入した記念すべきDVDである。
それが悲しいことに酷い出来だった。原作の狂気を欠片も再現できていないただの安いC級ゾンビ映画がそこにはあった。評価できるところがあるとすれば、美少女ゾンビ達はかなり気合が入っており肉片を撒き散らかしながらバラバラになっても這いずり回り、なぜか出演していた筒井康隆を引き裂き生首を持ってうろうろ徘徊するシーンはグッと来た。
しかし求めているのはそこじゃない。
この世界のゾンビは165分割にしなければ死なない。愛する恋人を自らの手で細切れにした男達が理性と狂気の狭間でぎりぎり生きているガラスのような世界が俺は好きなんだ。グロいだけじゃないんだよ。この美学がわからないならバッテリーが切れるまで豚の屠殺動画を見てろ!!
そんなわけで自分の中で人生のステーシー第一幕が終わり、時は流れた。
2012年、、、ステーシー舞台化である。
俺は自分の耳を疑った。なんと、演じるのは大好きなハロプロを支える筆頭アイドルのモーニング娘。である。
嘘でしょ!?一人きりの部屋に驚嘆が響く。俺はこんなに大きな声が出せるのかとビックリした。
モー娘。黄金期に思春期だった自分も周囲の影響で例に漏れずどっぷりとハマりモー娘。のことが好きだった。
しかし、自分は凝り性なので、一度ハマったらよほどのことがないと嫌いにはならない。ブームが去り薄情者どもがどんどん興味を失った後も俺はずっとモーニング娘。しいてはハロプロを追いかけていた。
2012年、仕事の関係で草木も生えない不毛の大地で泥水を啜っていた自分だが、これは久々に東京の地を踏まねばならない。
インターネットを駆使してなんとかチケットを入手し、期待と不安を胸に新幹線に乗り込む。過去の実写化で痛い目を見ているので、心中穏やかではない。モー娘。のことは大好きだが、それと演技力や脚本、演出は別の話だ。つまらないものはつまらない。青春時代を彩る作品であり、思い出補正もかかって自分の中で実写化のハードルはかなり上がっている。果たしてアイドルがその期待に応えられるのだろうか!?
会場である全労済ホールスペース・ゼロでの記憶をこの先一生忘れない。
大傑作でした。
原作の世界観を完璧に再現しており、ケチの付け所がない。記憶の中の登場人物たちが歩きまわり笑って泣いて死んでいく。現役アイドルが狂い死にという物騒な単語を発し、筋肉少女帯の楽曲を歌いこなしている。目の前の奇跡に涙がこぼれた。
ステーシーからは銀粉が舞いハーブティーの香りがする、、、そんな設定がこんなに美しく残酷だなんて実写じゃなきゃわからなかった。
他にも、臨死遊戯状様(ニアデスハピネス)があんなにも悲しいものだとは知らなかったなぁ。凄惨なシーンで「今日の日はさようなら」を流すなんて発想はまさしく狂人の仕事だ。エヴァでも同様のシーンがあるが、なんとステーシーの方が断然前なのだ。
あと、ルパンイエローこと狂犬チワワ工藤のハルちゃんが超かわいい。
終演後はすぐに直後の公演チケットを購入し、その日のうちに舞台を梯子してしまった。ホラーをこよなく愛する俺を完璧に満たす内容に、純粋にモー娘。が好きで観劇に来たオタクは引いたと思う。それほど原作に忠実な容赦のない素晴らしい舞台だった。映画にはダンマリだった原作者である大槻ケンヂもこの舞台は大絶賛しており、無関係な自分もなぜか誇らしくなった。
こうして、愛するホラーとアイドルのコラボは見事に成功し、決して交わることのない二つの趣味のグランドクロスは新たな人生の思い出の1ページを飾ることとなった。
再び時は流れ2019年。平成最後の年である。奇跡は二度起こる。
アンジュルム「恋はアッチャアッチャ」公式アッチャアッチャ応援隊動画である。
なんのこっちゃと混乱するのも無理はない。アンジュルムとはハロプロのアイドルグループであり、その新曲がインド風のメロディーが癖になる「恋はアッチャアッチャ」なのだ。
その販売促進プロモーションとして作られたこの動画なのだが、見事に気が狂っていた。
まず、歌っているのがアンジュルムではなく謎の男Hという本気でお前誰!?っていう意味不明な人物で、終始このどこの馬の骨とのわからぬ中年男性の歌声を聞かされることになる。
この時点で相当攻めた映像なのだが、自分が感動したのは、カレー屋の店主を演じるシャ乱Qのたいせいだ。
これでピンとくる人は相当の物好きだ。
そう、ブラックカレー、鼻、、、こいつはカレー将軍鼻田香作だ!!!!
鼻田香作とは、漫画「包丁人味平」に登場するカレークレイジーで、最終的にカレーのスパイスを嗅ぎ続けたために麻薬中毒になってしまう狂気のキャラクターである。
こんなの誰が元ネタわかるんだよ!!てか、目の付け所おかしいだろ!!販売促進って何!?当初の目的忘れてない!?誰!?鼻田香作を好きで仕方のない大人は!!?
俺の愛してやまない変な漫画とハロプロが交わった奇跡の瞬間、再びである。なぜか公開から狂ったようにこの動画をリピートしている自分がいます。
本家のMVも相当に攻めた作りなので是非ご覧いただきたい。
好きなものと好きなものが重なるとその破壊力は倍増です。
死ぬまでにあと何回この感動を味わえるんでしょうね。今日も頑張って生きています。
では、ステーシーのDVD観て寝ますね。アディオス!!!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?