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脳卒中患者に対する上肢の課題指向型訓練のエビデンスと臨床応用#4【ランダム化比較試験編Ⅲ/慢性期Part.2/2020年版】

課題指向型訓練はこれまでの研究数が多く、シンプルな課題指向型訓練に加えて、ミラーセラピーと併用するもの、電気刺激と併用するものなど数多くのパターンがあります。

課題指向型訓練のみを行うのではなく、課題指向型訓練を他の療法と併用するものをここでは「課題指向型訓練+α」とし、筆者が厳選した10件の研究をもとに、この記事でまとめます。

なお、課題指向型訓練のみの効果はこちらの記事にまとめています。

課題指向型訓練+αによって、課題指向型訓練単独よりも大きな効果を報告しているものもあります。

自分が提供できる治療のオプションとして、課題指向型訓練も、課題指向型訓練+αも持っておきたいところです。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果①

Arya KNら(2015)は、発症から12.88 (8.05)ヶ月、年齢48.76 (13.58)歳の脳卒中患者に対する課題指向型ミラーセラピーの効果を検証しました。

課題指向型ミラーセラピーとは、ミラーボックスなどのミラー環境下で課題指向型訓練を実施するものです。

一般的な課題指向型訓練に比べ、ミラー環境下で行う課題指向型訓練は麻痺手が動いているような錯覚が起こるため、錯覚による付加的な効果を期待することができます。

麻痺手を非麻痺手と一緒に動かすパターン、麻痺手を動かさないパターンがありますが、この研究では麻痺手は動かさないでおいたようです。

一方で、非麻痺側を動かさざるを得なくなる、課題の種類がミラー環境下で行えるものに制限されてしまう、といったデメリットもあります。

介入前のFugl-Meyer Assessment Upper Extremity (以下、FMAUE)スコアは19.71 (7.22)だったことから、重度の運動麻痺を有する人が対象だったようです。

Fugl-Meyer Assessment Upper Extremity: FMAUE
脳卒中患者の麻痺側上肢・手の運動機能の評価です。4つの下位項目から成り(A. 肩/肘/前腕関節、 B. 手関節、 C. 手指、 D. 上肢全体の協調性や速度)、全33項目について評価します。それぞれについて0〜2点の3段階で点数をつけ、0〜66点で評価します。66点が満点(最も状態が良い)です。

この研究では、課題指向型ミラーセラピーを90分、週5回、8週間実施しています。

結果として、上肢運動機能(FMAUE)が30.41 (9.07)まで大きく改善しています。

また、対照群としてブルンストローム法、ボバース・コンセプトに基づく作業療法が設定されていますが、対照群と比べても有意な成績向上を示しました。

慢性期の脳卒中患者に対する上肢の課題指向型ミラーセラピーの効果②

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