このブログでは、ストレチックス本部著書「70歳からのゆる~い筋トレ&ストレッチ」執筆者が、本で書いたことの要点や、書ききれなかったことを、お伝えしていきます。
今回のテーマは「骨盤のつくりと動き」です。
●成長過程でつくられる骨盤
骨盤という名称の骨は存在せず、いくつかの骨がひとまとまりになりそのかたちをつくっています。
骨盤とは両側の寛骨という骨と背骨の仙骨から作られる輪のようなかたちをした構成体となっています。
全体を少し細かくみるために、中央部分の骨と左右の骨に分けてみていきましょう。
骨盤は穴の開いた受け皿のようになっていますが、人の身体でいう背中側、お尻の割れ目の上にある骨を仙骨といいます。
これは背骨からつながっている骨で、成長の過程で仙椎と呼ばれる5個の骨が一体化したものです。
骨盤の一部であるとともに背骨の一部でもあります。
仙骨の下に出っ張ってついているような骨が尾骨、もしくは尾てい骨という呼び名でご存じのかたもいると思います。
尾骨も尾椎という3~5個の骨が成長過程で一体化したものです。
犬や猫には細かい骨が連なった尾椎がありしっぽとして存在しています。
仙骨の上側には腰椎がつながっていて、その繋がっている部分を腰仙関節といいます。
仙骨の両側には寛骨という骨が連結しています。
寛骨は3つの骨をまとめて呼んでいるものです。
腰に手を置く時や、わき腹、ウエストの部分に引っ掛かるように触れることができる骨が腸骨です。
腸骨の下には坐骨という骨があります。
お尻の下の部分を触るとやや尖ったようなかたちをしている骨があると思います。
下部にある坐骨よりも中央よりについているものが恥骨です。
この、腸骨、坐骨、恥骨をまとめた総称が寛骨で、左右それぞれにあります。
中央の仙骨に左右の寛骨がつながっており、仙腸関節を構成しています。
骨盤は上半身と下半身とつなぐ部分です。
上半身は背骨がつながり胴体を支えています。
下半身は太ももの骨の大腿骨がつながっています。
寛骨には臼のようなくぼみがあり、そこに大腿骨の一端がはまり込んでいます。
股関節といわれる部分は骨盤の寛骨と大腿骨で構成されているものです。
赤ちゃんがハイハイから立位になると大腿骨の上に骨盤が乗り、その上に背骨や頭が乗って直立二足歩行になっていきます。
●前後左右に動ける骨盤
骨盤は歪んでいる、傾いているなど表現されることがあるように、動きを伴う部分です。
前後、左右といくつかの方向への可動域を持っています。
・骨盤の前傾
骨盤を横方向から見たときに、前側に向かって傾く動きです。
・骨盤の後傾
骨盤を横から見たときに、後ろ側に向かって傾く動きです。
・骨盤の側方傾斜
骨盤を正面から見たときに、片側が上下に傾く動きです。
・骨盤の回旋
水平の面で見たときに、回旋する動きです。
骨盤が歪んでいるという考えかたはさまざまあると思いますが、これらの動きは骨盤(腸骨、坐骨、恥骨、仙骨)から他の骨につながる筋肉の影響によって、これらの方向へと動かされます。
単純に、骨盤の前傾に動かすための筋肉の長さが短くなればその方向に動かされていきます。
これらの動きは均等に起こるわけではなく、左右の筋肉の動きによって変わってきます。
▼骨盤の前傾と後傾
骨盤の前傾は次のような筋肉の働きから生じます。
骨盤の前側に付着しているものは大腿直筋・腸腰筋・大腿筋膜張筋・縫工筋・大内転筋・恥骨筋といった筋肉があげられます。
また、骨盤の背面側にある筋肉では広背筋、腰方形筋、脊柱起立筋・多裂筋とった筋肉が骨盤の前傾に関与します。
前面の筋肉は骨盤の前側をさらに前側に傾けるように働き、背面側にある筋肉は骨盤の後ろ側を上に引き上げることで骨盤が前傾の方向に動きます。
この骨盤の前傾が過剰になることで上につながっている背骨の前方への弯曲が大きくもなっていきます。
骨盤の後傾は次の筋肉の影響があります。
骨盤の後ろ側に付着しているものは、ハムストリング、大殿筋、梨状筋といった筋肉があります。
これらの長さが短くなることで骨盤が身体の後ろ側に向かって傾くように動きます。
骨盤の前側には腹直筋があり後傾に関連します。
腹部の正面に縦長にある腹直筋は、肋骨から骨盤の恥骨まで付着しています。
恥骨が肋骨側に向かって近づく時に上側に引き上げられて骨盤が後傾します。
身体を丸める腹筋運動の方法として骨盤後傾の動きを意識して行うと腹直筋を使うことになります。
立位での理想的な姿勢は骨盤が30度程度前傾しているのがよいとされています。
▼骨盤の左右の高さの差になる側方傾斜
骨盤の側方傾斜は骨盤の上側の筋肉と股関節を動かす筋肉で行われます。
また、腰の高さが左右で違うというものは片側が上に持ち上がったものとも考えられます。
骨盤と肋骨の間にある筋肉が短くなるとその距離が狭くなり骨盤が上に引き上がったようになることがあり、腰方形筋、腹斜筋、脊柱起立筋などが関連します。
これらは背骨の両側にあるため、片側の長さが短くなることで上下の距離を近づけます。
傾斜を伴うよりも骨盤の挙上という上に持ち上がったかたちといえると思います。
骨盤が動く関節運動としては股関節の内側と外側の筋肉が働きます。
骨盤は大腿骨の上に乗っているのでその周囲の筋肉の動きで骨盤がついてきます。
立位で骨盤が右斜め上に上がる時、右足は身体の中心寄りに動くことになります。
左足は右足とは反対に、中心より外側に動いていることになります。
足が身体の中央に動くことを内転、外側に広がって動くことを外転といいます。
骨盤が右斜め上に上がっている時は、右の股関節の内転と左股関節の外転が生じています。
このようにみると、骨盤そのもののかたちが変わっているというより、足につながる筋肉の状態により上に乗っている骨盤の位置がついてきてバランスをとっていると考えられます。
股関節の内転には内転筋が、外転にはお尻の中殿筋、大腿筋膜張筋が働きます。
▼骨盤の回旋運動
骨盤の回旋についてです。
回旋なので捻る、捻じるといった動きで、スカートやズボンが回ってくるといったことで気がつくかたもいるかもしれません。
骨盤の側方傾斜と同様に、骨盤と肋骨の間の腹筋や背筋、そして股関節の筋肉が関わります。
寛骨のかたちが変わっているというよりも、捻りが入ることでサイズが変わって見えているといったことと考えてみましょう。
骨盤と肋骨の間にある腹斜筋、背骨を動かす脊柱起立筋、広背筋の左右差によっても回旋が引き起こると思います。
腹斜筋は脇腹の筋肉でウエストを捻る機能があるので、その左右のかたちによって骨盤の位置も変化してきます。
身体を右に捻る時には左の骨盤が右前に動き、左の骨盤が左後ろに向かって回旋します。
この時には右の外腹斜筋、左の内腹斜筋、左の広背筋が収縮してその距離を変えていきます。
広く見れば肩甲骨の動きやその人の姿勢なども関連しますが、骨盤上部と考えるとこれらの動きが主ではないかと思います。
そして股関節の関連です。
骨盤が右に向かって回る、右回旋では右の股関節は内向きに回旋する内旋という関節運動をしています。
左足は骨盤に身体の中心に対して外向きに回旋をしている状態となり、外旋という運動をしています。
股関節の内旋には中殿筋の前方部分、小殿筋、ハムストリングを構成する筋肉の半膜様筋、半腱様筋が働きます。
外旋には中殿筋の後方部分、大殿筋、ハムストリングを構成する大腿二頭筋が機能しています。
股関節の回旋によってその上に乗っている骨盤が回っているということです。
●骨盤のかたちは動きの組み合わせ
骨盤の上の腹筋や背筋、股関節を動かす筋肉によりその方向に引っ張られているといったことが組み合わさって、その方の骨盤の向きを決めています。
そしてそのかたちで自然に立つことも動くこともできるのはそのかたちで安定できるようにバランスがとれているからです。
前傾後傾、側方傾斜、回旋運動がそれぞれ混ざってかたちをつくっています。
また、仙骨を挟んで右側の寛骨が左に比べて前傾している、左側の寛骨が後傾しやすいなど左右の動きも変わります。
よく、足を組んで座わると骨盤が歪むといわれますが、自然に無理なく座わったことでそのかたちが定着したのか、スポーツや仕事の身体の使い方で筋肉の左右差が大きくなり、足を組んだかたちがよくなったのかは人それぞれかと思います。
身体は日常でよく動かす方向がやはり動きやすくなる、動きが大きくなります
利き腕や利き足、見やすい目、聴きやすい耳といったように左右の使いやすさがあるのですべてを均等にということにはなかなかいきません。
ストレッチや筋力トレーニングは左右均等にというのがわかりやすく一般的ですが、伸びにくい、筋力が弱いといった差を感じるのであればそちらを少し長めに、少し多めにといったようにしていくことがその差を埋めることになります。
骨盤であればその周囲の筋肉のストレッチの回数を増やしたり、左右少し違ったポジションでも伸びやすいようにしていくことができます。
また、ご自身で「均等」「よい姿勢」と思うように身体の姿勢をつくった時に、どの部分に力を入れないとその姿勢にできないかをチェックしてみるとそこの筋力をつけていくとよいことがわかります。
●まとめ
骨盤に限らずですが、歪みというと身体がガタガタで悪いイメージかもしれません。
もともとの骨格のかたちがあればそれは個性だと思います。
どの部分がカタい、弱い、強いといったことを整理して修正していくようにしましょう。
・骨盤は数個の骨が組み合わさって構成される。
・前後左右に動きがある。
・背骨や股関節を動かす筋肉の影響でかたちが変化する。
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ストレッチ専門店ストレチックス
https://stretchex.jp/
本部著書&公式ブログ 監修・執筆
本部研修トレーナー 渡辺 久進
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