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●休養


人類の進化で現代に過ごす我々は、今のところ一生、休むことなく動き続けることはできません。

眠らない生物も世の中にはいるのかもしれませんが、おそらくほとんどの生物が「休養」の時間をとる必要があるのではないでしょうか。

疲労回復のためのサプリメントやリカバリーウェアと呼ばれる就寝用の着衣、ヘッドスパや酸素カプセルがある施設など疲れを感じたときに行くお店があるように、「疲労」に対しての市場は広くあります。

疲れたから休むということは日常の生活で起こることです。

疲れを感じないような能力を持って生まれてきてはいませんので、疲労を感じるということは必要なことなのだと思います。

今回は、日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹さんの著書、「休養学」(東洋経済新報社)をもとに「休養」の取り方の提案をしていきます。


●休養を学ぶ機会は少ない


疲れたら休む、もしくは休みたくなるということは人が長く生き続けるために必要な能力なのかもしれません。

そして疲労を感じることに対して何かをするという供給源も数多くあります。

健康づくりのためには「栄養・運動・休養」の三大要素があります。

このうち、栄養と運動に関しては学問的な体系化が進んでいるとされ、栄養学や運動生理学といったものは家庭科の授業や保健体育で学ぶ機会があります。

何もしていなければ休んでいるという見解が強く、「わざわざ学ぶような話ではない」と思われているのではないかといわれます。

現代人は肉体労働が主流だった昔と比べ、今の労働はパソコンやスマートフォンなどにデジタルデバイスを用いる、神経を使う仕事が主流になっています。

そのため昔と同じ休み方をしていたのであれば疲労がうまくとれないおそれがあるとされます。

「疲れてボーッとしていたせいで大きなミスをしまった・・・」ということが起こればその後も休みを削ってやりくりする必要が生じるかもしれません。

交通事故など人命にかかわるものは運転手の疲労が原因ではないかという推測もあるものです。


●フィットネス疲労理論

休養について考えるときの理論として「フィットネス疲労理論」というものがあります。

スポーツの世界ではよく知られていることですが、自分の体力から疲労の分を引いたものが、自分が出せるパフォーマンスということです。

たとえば2~3日ゆっくりして、朝起きたときの体力が100とします。

そのあと会社に行って仕事をして20ぐらいの疲労感を覚えたとすると、「100-20=80」となります。


単純なことですが、疲れたらそのぶんパフォーマンスは落ちるということです。

アスリートは本番で最大のパフォーマンスを出すために、「今日は疲れたな」と思ったらそれ以上無理はしません。

人間は疲労感を一時的に忘れることができるため、朝の体力が100あれば1日中100のパフォーマンスが出せると勘違いをしてしまいがちです。

アスリートにはトレーナーがついていたりして、「そろそろ休みなさいと」客観的なアドバイスをしてくることがあります。

練習メニューを調整したり、場合によっては強制的に休みをとらせたりしてオーバートレーニングを防ぐようにしています。

頭や身体を使ってやらなければならない仕事や家事、育児、介護などがあります。

しっかりと休んで疲労回復してから臨んだ方がパフォーマンスはあがると理解し、自分でコントロールしなければオーバートレーニングのようになり、パフォーマンスが下がってしまいます。


●そもそも疲労とは・・・


日本疲労学会では疲労を次のように定義しています。

「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う活動能力の減退した状態である」

肉体的、あるいは精神的な活動をするとそれに伴い活動能力は低下します。

たとえば100mを走った直後にすぐに同じ距離を同じ速さで走ることは難しくなります。

これは活動することで能力が低下した状態です。


疲労には急性疲労、亜急性疲労、慢性疲労の3段階があります。

急性疲労は1日~数日寝れば回復する程度の疲労です。

亜急性疲労は寝ただけでは回復せず、疲労感が1週間~数か月続く状態のことをいいます。

疲労が半年以上続くと慢性疲労といわれる状態になり、慢性疲労症候群を発症することもあります。

慢性疲労は「運動を続けた」、「忙しい仕事が続いた」など疲労の原因が明確なときのことです。

慢性疲労時症候群は病気の一種です。

脳脊髄という中枢系の炎症で、頭痛や発熱があり疲労感が半年以上続きます。

最近、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」という名称に変わりました。



▼自律神経の変調


自律神経とは血流や臓器のはたらきを司る神経のことで、交感神経と副交感神経の2種類があります。

ご存じの方も多いと思いますが緊張、興奮すると優位になるのが交感神経、リラックスすると優位になるのが副交感神経です。

ストレスがかかると副腎の副腎髄質からアドレナリンというホルモンが出ます。

アドレナリンが出ると、交感神経が高まり、心拍数が増えたり血圧が上がったりします。

疲労を専門とする医師は自律神経の変調に注目し、交感神経により過緊張の状態が続くことが不調の要因となると指摘をしています。

肩こりや目の疲れもその一つで交感神経により筋肉が緊張し、血流が悪くなっていくと考えられます。

検査をしても数値の異常はときにないが、本人は不調を感じるという症状は、疲れのサインととらえられます。


▼自律神経の切り替えと反応


交感神経、副交感神経のどちらが優位になるかが時間帯や生活リズムが影響します。

朝は交感神経が優位になり、お昼ごろにはその働きがピークになるとされます。

夕方になると下降していき、副交感神経が優位に変わります。

筋肉は緩みやすい状態になり、血管も広がり血圧が下がります。

腸のぜん動運動も行われやすくなり翌朝の排便が促されます。

夜間には副交感神経が優位で朝が来れば交感神経が優位に切り替わるようになっているので、しっかり休むには夜に副交感神経が働かなければならないといえます。

とはいうものの、夜遅くまで仕事があるときや、心配事やイライラすることがあると過緊張が続き、自律神経の切り替えがうまくいかないことが起こります。

その結果、疲労が抜けにくい状態になります。


●「疲労」の反対は「活力」


毎日元気という方もいると思いますが、生活の中で体力を消耗するとすれば、私たちは「活動→疲労→休養」というサイクルで回っています。

仕事や学校や運動は活動、そこで体力を使って疲労、疲れたら休む休養というパターンです。

このサイクルを回っていても休養のあとに100%になっていないことがあるので、消耗が進むばかりで疲れがたまっていきます。

そこで提唱されているのがこのサイクルに「活力」という要素を加えることです。

「疲労」の反対の言葉は何か、それが「活力」、辞書にもそのように書いてあります。

休養のあとにすぐに活動が入るのではなく活力を加えてから活動をするという提案です。



その活力を与えるにはあえて負荷をかけことだと提案されており、それには次のような条件があります。


1つ目は自分で決めた負荷であること。

2つ目は仕事とは関係ない負荷であること。

3つ目はそれに挑戦することで自分が成長できるような負荷であること。

4つ目は楽しむ余裕があることです。


「疲れがとり切れていないのにもっと疲れることをするなんてとんでもない」と思うかもしれませんが、適切な負荷をかけた後にもう一度しっかりと休養の時間をとるとそれ以前よりも体力がつくという考え方です。

これは筋力トレーニングなどで、はじめはその負荷に適応できなくても繰り返すことで筋力や体力がつくという回復の仕組みを使ったものと一緒です。

10だった体力が負荷により一時的に7や8とパフォーマンスが落ちても回復時には11になっているといったイメージです。

もちろん、現時点で疲弊しきっている場合は疲労をゼロにすることが先決です。


●「休養」の分類とタイプによる休み方


どのように休むと疲れがとれて活力を得られるかです。

休養には大きくわけて、生理的休養、心理的休養、社会的休養の3つがあり、さらにそれを7つのタイプにわけていきます。


・生理的休養―休息タイプ

活動を一旦、停止してエネルギーの消費を抑制して回復するのを待つ受動的な休み方です。

いわば消極的休養で、睡眠、休憩をとって身体を動かさないことに焦点をあてます。

だらだらと過ごすということにならないよう自分で決めて休む、主体的な休みが当てはまります。


・生理的休養―運動タイプ

積極的休養とも呼べる、主体的に運動をするということです。

運動により血流がよくなり老廃物の除去が促進されたりするので疲労感の軽減につながります。

運動することで身体も疲れるので夜になると副交感神経が優位になり深い睡眠がとれるという効果も期待できます。

疲れるまで運動は逆効果なので、軽く身体を動かす程度が大事です。

入浴も水圧により血流がよくなるので運動タイプに含まれます。


・生理的休養―栄養タイプ

疲労回復のためには栄養バランスの取れた食事は大切です。

しっかり食べることも推奨されますが、休養学では食べ過ぎないことが身体を休めることになると提案されます。

現代は食べ物がない栄養不足の外よりもいつでも食べ物が手に入る食べ過ぎの害の方が大きくなっています。

食事の量や回数を抑えることで疲れた消化器系を休ませることも休養の1つです。


・心理的休養―親交タイプ

これは人と親しく交わることでストレスを解消し、活力を得る休み方です。

もちろん人づきあいが苦手、誰かと一緒にいる方が疲れるという方は無理に親交する必要はありません。

人同士でなくても犬や猫などのペット、動物と触れ合うことや、森林浴なども親交タイプに含まれます。


・心理的休養―娯楽タイプ

これは趣味嗜好を追及する休み方です。

クラシック音楽が好きならクラシック音楽を聴く、映画が好きなら映画を見るというように休みの日にしていることを主体的に行う休養です。

疲れをとるには穏やかな曲の方がよい気がしますが、あまりにも穏やかだとかえってイライラするという方もいます。

テンポの速い音楽やうるさいといわれるような音楽でもその方が聴いていて楽しいなら問題ありません。

将棋や囲碁、英会話を習う、推し活をいわれるものも娯楽タイプです。

運動することが趣味であれば運動タイプと娯楽タイプを同時にする休み方です。

ゲームをしたらやめられなくなるというような依存してしまわないように注意はしましょう。

娯楽とまではいかなくても、炭酸飲料を飲む、歯を磨くといった、なんとなく気分がよくなる、気分転換になるものでもよいとされます。


・心理的休養―造形・想像タイプ

これは絵を描く、作曲する、日曜大工で何かをつくるといった創作活動全般です。

かたちのある、目に見えるものを残さなくても構いません。

地図や時刻表を眺めて旅行気分になったり美術館で絵画を見ながらその画家の気持ちになったりと想像してみたりするのもこのタイプに含まれます。


・社会的休養―転換タイプ

社会的休養は転換タイプのみです。

転換とはまわりの環境を変えることです。

自分自身の身体のまわりはすべて外部環境です。

洋服を着替えることや家具の配置を変える、カーテンを変えるなどの部屋の模様替えは外部環境を変えることになります。

普段と全く違う環境に身を置くという点では旅行があります。

旅行というと大掛かりに感じるのであれば買い物や外食も転換の1つです。


これら3つの休養に7つのタイプが考えらえますが、それぞれの休養タイプを複合的に行うことで疲労回復効果が増加すると提案されます。

たとえば、料理では材料を用意してどのようなものをつくるかを考えるのは造形・想像タイプの過ごし方、消化の良いものをつくれば栄養タイプの複合です。

お弁当をつくってピクニックをすれば外に出かけ、自然の中で過ごせば運動、転換、自然との親交タイプの要素が加わります。

組み合わせ次第でさまざまな要素が重なり、いろいろな楽しみが感じられます。

ただし、造形・想像のために絵を描こうとか、休養の時間をつくるために苦手ものに無理をして取り組まないようにしましょう。


●まとめ


今回の「休養学」は人それぞれに適した休み方の提案がされていました。

時間がたてば疲れがとれるだろうというのも考え方の1つですが、休養の取り方も技術であるといっています。

その人の生活環境や年齢によって適した休み方が変わってくるものと思います。


・疲れは自律神経の切り替えがうまくいかにことが一因。

・休養をとり効果的に回復させるために活力をプラスする考えがある。

・休養の取り方は3つに分類され、さらに7つのタイプが考えられる。


※休養学(片野秀樹著 東洋経済新報社)より引用、抜粋をしています。

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ストレッチ専門店ストレチックス
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本部著書&公式ブログ 監修・執筆

本部研修トレーナー 渡辺 久進

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