空白を満たして
幸せになりたいなと思う。
じゃあ今が幸せじゃないのかと聞かれると、そういうわけじゃない。今のところ、18年ちょっとの人生はうまくいっている方で、特段大きな失敗にぶつかったことはない。
背伸びして入った大学もそれなりにやっていけている。ついこの間出た成績も悪くなかった。友達とも、一緒に短期留学に行った。高校の時より、深い付き合いができている気がする。
バイトでも人間関係はうまくいっている。ふたつ掛け持ちしているが、今のところそんなに苦しくはない。自分の趣味を満足させられる程度には稼げている。帰りは夜遅くになるけれど、充実した日になった気がしてぐっすり眠れる。
些細な不満はどうしても出てくるけれど、総じて楽しくやっているのだ。
それなのに、満たされていないと感じる。
まだ足りない。
何が足りないのかは、分からない。
最初は、「時間」なんじゃないかと思った。
でもどうやら違うみたいだった。
大学に入ると空きコマというのができた。この時間に課題やレポートを済ませることができた。夜は勉強しない、自由な時間をつくる、なんてこともできた。バイトがない休日も、することがない。でも、いくら暇な時間をつくっても、この空白は埋まらなかった。
足りないのは、時間じゃない。
物でもなかった。
確かに欲しいものは沢山あった。
読みたい本のリスト。あれも、これも。
この気持ちは物欲のせいなんだろうか。
そう思って、気になっていた本を図書カードがあるだけやまほど買った。
でも、手が届くと、虚しくなるだけだった。
結局、あんなに読みたかった本も、いまだに積んだままだ。
愛情でもないのは明白だった。
ひととおりやり終えた後でも、一緒に笑えて、それをとても素敵なことだと思えた。愛してもらっている気がした。それだけで充分だった。
足りないのは何か。
精神的な何か。
ぽっかり空いたこの隙間を埋めるもの。
この不足は本当に不足なのか。
単に求め過ぎなだけじゃないか。
僕は贅沢なんだろうか。
さして必要じゃないのに、必要に感じてしまっているだけじゃないか。
足りないのは、足りないのは、足りないのは、足りないのは、足りないのは、足りないのは、
ほんとは、呆れるくらい出てくる筈なんだよ。
言葉にできないのは、不足を認めたくないから、だったりして。