メンタルヘルスにSpeedy Recoveryはない
最近、大阪なおみさんのメンタルヘルスを理由にしたフランスオープンの辞退のニュースが話題になっていますね。体の故障ではなくこういったメンタル面を理由に辞退すると言うのは前代未聞らしいです。日本のメディアでも「うつ病」でと言う報道がされているのを耳にしました。
私はフリーランスになってからニューヨークの治験のオフィスでリサーチのスタッフとして3年ほど働いた経験があり、うつ病の新薬の開発に1年携わった経験があります。その間100人近くのうつ病を持つ人とお話しする機会がありました。メンタルヘルスに関して無知だった私ですが、うつ病にも色々な種類や度合いがあること、あらゆる種類の薬や治療方法があること、うつ病と他の#mental illness(精神病)の関係、そしてこんなに多くの人、普通に健康な人たちがうつ病を持っている、または経験があることを知りました。
そして私自身も彼女同様#depression(うつ)と#anxiety(不安症)で1年間セラピーを受けていました。セラピーに通いだした主な理由はパートナーのDVによるものです。アメリカでは簡単に薬も処方するのでうつ病の薬も半年ぐらい服用していました。以前の私だったら「うつ病の薬なんて!」と思っていましたが、治験リサーチの経験があってメンタルヘルスや薬にも理解が持てるようになっていたので試すことにしました。
自分の経験から今回のなおみさんの件、お話ししたいと思います。
まず、フランスオープンのトップの人が「彼女の#speedy recovery(素早い回復)をお祈りします」と言う#statement(発表)を出し、それに続いてニュースや他のメディアでも挨拶のように「素早いご回復を」なんて言っていますが、そもそもこの時点でメンタルヘルスについての理解がないと思います。この#speedy recoveryって病気や怪我をした人にかけるお約束の言葉なのですが、メンタルヘルスに素早い回復なんてありません。
うつは心の病ですが、体は至って健康なケースがほとんどです。だから外観からはわかりにくいし、本人でさえ分からない時もある。そしてうつや他の精神疾患は薬を飲んだから簡単に治るものではありません。現に私が飲んでいたcitalopram(ブランド名Celexa)も含め、多くのうつ病の薬の効果は毎日飲み続けて1ヶ月後ぐらいに現れます。それは脳に幸せを感じるセロトニンと言うホルモンを少しずつ増やして一定のレベルに保つためには時間がかかるからです。
もちろん薬を取らずに継続的なセラピーや他の治療法もあるし、なおみさんが処方箋薬を取っていたかはわかりませんが、どの方法にせよすぐに治る病気ではないのです。私も薬と並行してセラピーを続けていました。最終的には彼の元を離れることで少しずつトラウマやうつは解消されていきましたが、うつというものは一度自覚してしまうと厄介なものです。うつには色々な#trigger(引き金)があるので今は薬なしで#meditation(瞑想)ヨガ、#CBD オイルなどで対応しています。
大坂なおみさんは2018年にUSオープンで優勝して以来、メンタルヘルスに悩まされていると言っています。それもそうでしょう。無名だった彼女が瞬く間に世界のトップテニスプレーヤーになり、世界中から注目されてしまう存在となってしまったのです。そのプレッシャーを理解できる人はそうそういないでしょう。
それに彼女は自分にとても正直だと思います。#BLM (Black Lives Matter)の時もそうだったし、#She stands for what she believes in、自分の信じるものに立ち上がる、とても勇気のある女性だと思います。そして彼女みたいな人が世の中を変えていくのです。今までの古いこだわりや常識に疑問を問いかけ、世の中をもっと優しくて住みやすくしていってくれるのではないかと思います。この件がきっかけでメンタルヘルスに関しての知識と理解が広まり、日本でもセラピーやカウンセリングをもっと大々的に行っていってほしいと思います。