【経理】経営者が言う「簡単に集計できる数字」は、簡単に集計できない。
こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。
今日は、「経営者の方が『その数字は簡単にできる』と言っても、現場サイドでは簡単に集計できないことが多い」ということについて書きます。
経営者が「簡単に集計できる」と言う、その数字。
経営者の方に「~の数値の集計をお願いしたい」「今は区別していない~の数値を、~というルールで区分して会計記帳するよう変更をお願いしたい」と依頼をすると、「そんなの簡単だよ。むしろ、集計・区別していないのはおかしいよね」と快諾頂くことが多いです。
ところが、このような場合において、経営者の方がおっしゃるほど簡単に、その数値が集計・区分できることは、ほとんどありません。実際に集計・区分を進めるためには、経理部の方と打合せし、時に、営業部・製造部などの関連部署とも連携を進めながら、調整をすることが必要だからです。
また、「なぜこんな数字が簡単に集計できないんだ、経理部の怠慢じゃないか?」「営業部・製造部は忙しいから、経理部だけで数値を集計できるようにしてくれ」とおっしゃる経営者に、簡単に集計できない理由を説明し、ご理解頂くこともセットになってきます。
この状況は多くの企業で起きることですので、経理部のみの問題ではなく、企業のしくみの問題であるように感じています。
🍀🍀🍀
現場では簡単に集計できない理由。
それでは、経営者が ”簡単” と呼ぶ数字を、経理現場では簡単に集計できない理由について、自分が思うことをまとめてみたいと思います。
①作業分担・責任所在が明確でない。
シンプルに「作業分担が明確でない」ケースです。
例えば、経営者としては「取引先ごとの売上高はわかるようになっていて当然だよね」と思っていても、経理部で取引先ごとに売上高を区分して会計記帳しなければ、すぐには集計できません。一方、経理部は明確に依頼を受けていなければ集計しませんし、営業部では「数字のことは経理部で作業すること」と考えていたりします。
この場合、会計記帳で分けるのであっても、帳簿以外の管理帳票で把握するのでも、どちらでも全く問題はないのですが、「そもそも把握すべきことなのか」「誰が作業責任を負うのか」が明確でない場合には、このようなことはしばしば起きます。
深い検討をせずに「経理部で把握するのが一番簡単だよね」と、経理部に作業分担されそうになるケースを見ることが多いですが、実際に検討すると、意外に「営業部で集計するのが最も早くて正確」となることも多いです。
②「数値の集計」の精度目標が明確でない。
これもよくあることですが、特に経理部において「数値を集計」するときに求められる集計精度は、明確に提示すべきです。
特に、「何のために必要な集計なのか」という目的・理由を適切に説明し、数値の集計が万一誤っていた場合、何に影響してしまうのかまで知っておかなければ、作業の手順を決められません。
理由もわからず「~の数値を集計せよ」と言われた場合、経理部では1円単位で誤りなく集計をするよりほか、選択肢がなくなってしまいます。目的・理由を説明して理解頂いた方が、時間短縮になり、かつ、求められた精度に合致した成果物になります。
③営業部&製造部と、経理部の間に分断がある。
これはとても根が深い問題ですが、経営者からの依頼が明確にあり、経理部で集計すべき数値になっているにも関わらず、営業部や製造部などの関連部署との間に軋轢があり、うまく情報・資料を集められないケースです。
経理部は企業の情報・資料が最終的に集まる部署ですので、他の部署からの情報・資料提供がうまくいかない限りパフォーマンスを発揮できません。
特に経営者が「数字関連の仕事は全部経理がやることなんだから、他の部署に迷惑をかけるな」というタイプの方の場合、厳しい状況に陥ります。他部署に手数をかけないような回り道作業・無駄作業が経理部で永遠に続き、大規模な「忖度ロス」が起こるからです。
🍀🍀🍀
数字が集計できない、本当の理由。
数字がすぐに集計できないとき、そこには必ず理由があります。
それは経理部の問題ではなく、単にその企業のしくみの問題や、単純なコミュニケーションミスによることも多いかもしれません。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
この投稿に対するご意見・ご感想などありましたら、コメントを頂けますと幸いです。