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【強い経理】"曲芸師のような経理" になっていませんか?

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

今日は「曲芸師のような経理ではなく、安定した強い経理を目指そう」ということについて書きます。

↓↓↓ 本マガジンにおける「強い経理」の定義


その「柔軟対応」は、「やり過ぎ」かも。

中小企業のひとり経理さんのケースで非常に多いのですが、経理さん個人の柔軟な対応に依拠して、多くのトラブルが未然に防がれていることは、よくあることです。

例えば、そろそろ支払期日が迫っているのに、支払先から請求書が届かない状況であったとします。この場合、「先方の担当者に問い合わせをして請求書を受領し、通常の支払日に間に合わせるように調整して、問題なく支払いを済ませてしまう」ことがあります。

そして、この状況に慣れてしまうと、ご自身も、経営者も、支払先も、「当たり前」だと思ってしまいやすいです。ひどい状況になると、請求書が届かないから支払わなかっただけなのに、支払先から「そんなの言って欲しかった」と言われたり、経営者から「気が利かない、融通が利かない」と注意を受けたりします。

本来は、社内で締日を設定し、その締日に間に合わない支払は、翌月に回すべきです。ところが、中小企業では「経営者に "柔軟に対応できない経理だ" と注意されたから(→経営者の理解が足りない)」「支払先の担当者が、こちらからリマインドしないと請求書を送って来ないから(→支払先との関係性が構築できていない)」「無能な経理だと思われたくないから(→自己満足)」といった理由で、「柔軟に」対処する実務が横行してしまいます

その「良かれと思ってやった柔軟対応」は、実は「やり過ぎ」で、長期的には企業のためにならないものかもしれません。

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ルール化・システム化できているか?

一方、強い経理がある企業においては、社内で締日を設定し、締日までに請求書を送ってもらうよう、支払先にご説明します。支払先と適切な関係が構築できており、充分に説明を尽くしておけば、「支払が翌月に回ってしまっても、それは自社のせい」と諦めてくれます。決して「何で教えてくれなかったんだ」などと言われることはありません。

なお、強い経理がある企業においても、「締日までに請求書が届かなければ、先方の担当者に問い合わせをする」という実務はありますが、これは、自社の予実管理のために必須だからです。もちろん、問い合わせるために「請求書が届く予定の支払先リスト」が存在し、催促の方法・期日・返信がなかった場合にどうするか、等の決まったルールで運用しています。

つまり、強い経理の基本は、「個々の曲芸によって成り立つ実務」ではなく、「ルールによって決まったコースを走る実務」だと考えます。

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「強い経理」は物足りない?

自分が経理初心者のときに先輩によく言われたことですが「良かれと思ってルールを柔軟化させるのは、一度だけ」という鉄則があります。「二度めをやるなら、それはルール化してからやれ」ということです。

意外にこれが難しく、特に自分のような「やり遂げた感」を適度に欲する人間にとっては、なかなか苦しいものでした。ところが、先輩に「『こんな綱渡り業務を、うまいこと調整してスマートにやり遂げた』って思ってる?」と、ピタリと言い当てられてしまい、その後は、達成感は違う部分で求めるように変えました。

また、忙しい実務に追われてルール化提案が遅れてしまうことも多いと思いますが、一度やってしまった柔軟対応は、必ず二度めも求められてしまいます。自分でルール化提案の時間が取れないのであれば、他の人にお願いするなどの対応が必要でしょう。ひとり経理の場合は、少なくとも上長や経営者に報告し、「二度めが起きたときの対処法」「二度めが起きないための予防法」について相談するのが望ましいと思います。

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経理業務の平準化を。

通常業務においては、経理が柔軟に対応しなくてもうまくまわる仕組みづくりこそが、経理の仕事だと思います。

想定されなかった緊急事態における、時に曲芸のようなスゴ技対応は経理の技術ではありますが、実は、通常業務が平準化によって安定しているからこそ、緊急時に的確な動きができるのだとも思います。


最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

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