【経理の仕事】常に1円までこだわるわけではない。
こんにちは、きくちきよみと申します。
元・舞台照明家の税理士です。
最初に数字に関わる仕事を始めたときは、中小企業の経理でした。始める前は「毎日1円まで合わせる数字に関わる仕事なんて、自分には無理じゃないか」と思っていましたが、紆余曲折を経て、なんとか数字に関わる仕事を続けています。
今日は「経理では、常に『1円単位でこだわる』わけではない」ということについて書きます。
"記録" はもちろん、1円単位。
経理の仕事は数字とは切っても切り離せません。会社の情報・数値が集まる部署なので、数値を正確に記録することになります。
もちろん、会計記帳するときは1円単位です。会計記帳するのに "千円単位で記帳する" なんてことはあり得ませんし、根拠資料もないのに "このくらいの数字だと聞いた" というだけで会計記帳することはあり得ません。
・・・と、この書き方をすると、「当たり前ですよね」と理解して頂けるのですが、これが、経理部から「根拠資料が揃っていないので、○月○日の○○時までにストレージに保存してください。保存したらすぐに連絡してくださいね。」と言われると、途端に「経理って細かいよね」と思ってしまう方は少なくないでしょう。
これはその経理さんの性質が「細かいから」でもなんでもなく、経理として最低限の仕事をしようとすると、このようなことが起こります。
たまに「前職では、経理からこんなに細かく言われたことはない」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、経理の動き方は経営の在り方そのものですので、それぞれの企業によって異なります。また、前職では「経理部とのやりとりを他の人がフォローしていただけ」ということもあります。
"合致するはず" の数値を合わせることは、簡単。
今回「経理の仕事における『1円まで合わせる』こと」について書こうと思ったのは、これから経理の仕事を始める方から「経理の仕事って細かいですよね?自分にできるか不安です」というお話を伺ったからです。
このお話に対する自分の結論を書くと「『合致するはず』の数値を1円単位まで合わせることは、非常に簡単」です。
ここで『合致するはず』と記載したのは、数値と合わせるべき根拠資料がある場合です。根拠資料と不一致であれば、どこかに差異が生じた理由がありますので、それを探れば良いだけです。
冒頭でも書きましたが、「こんなに細かい仕事、自分には無理」と思っていましたが、「数値を合わせるべき根拠資料を大事にしようとする人であれば、数字を合わせることができる」と思います。
(ただ、これは不正が起きていないことが前提です。不正の結果、根拠資料の数値自体が間違っていれば数字は合いませんし、逆に数字が合ってしまっていれば不正に気づかないまま進んでしまうこともあります。不正を防ぐための対処法や不正に気づくための数字への向き合い方はありますが、これはまた別の機会に書いてみたいと思います。)
1円までの記憶は求められないが、数字感覚は必要。
経理では1円までの記憶は求められませんが、大きい単位での記憶は求められます。「先月の売上はいくらだっけ?」と経営者に聞かれて、即座に「2,100万円です」と答えられれば、それで充分です。その企業によって、それは百万円単位かもしれませんし、千万円単位かもしれませんが、それは経営規模に沿います。
これを「20,823,220円です」と正確に回答できた方が良いのでは?と考えるもしれませんが、かえって相手を不安にさせることもあります。経理の仕事を始めたばかりのころ、張り切ってあらゆる数字を暗記して、1円単位で回答していたことがありましたが、相手にあまり良い印象を与えていないことに気づきました。
「細かい数字まで覚えてるけど、記憶力がそこまで良いのかな?何か重要なことを覚えてなかったりするのでは?」
「書類に書く正確な数値ではないのに、、求められている数字感が伝わっていないかもしれない」
「何だか、必要以上に細かそう」
経営者のタイプにもよるかもしれませんが、回答の数値単位がわからなければ「万円単位で良いですか?」と聞けば良いだけです。口頭だけで聞くのですから、何か少し考えるために聞いているだけです。
逆に、キャッシュの残高を聞かれたときに、本当は990万円の場合に「1,000万円弱です」と答えると、「『弱』って何?本当はいくら?」となります。キャッシュは企業の生命線ですから、資金繰りについての質問でしょう。答え方は内容や会社によってそれぞれだと思いますし、1円単位まで答える必要はありませんが、経営者を不安にさせない答え方が必要です。
記録は1円単位、記憶は求められる数値感で。
税理士として会社の外側から会社に関わってくる中で、経理さんの「記録力」と「記憶力」には驚かされることが多いです。また、適切な感覚で数値を表現頂く経理さんは信頼されやすく、会社にとっても重要な存在です。
これから経理を目指す方は、是非「記録は1円単位、記録は求められる数値感で」ということも、一つの指標にされてみても良いのではないでしょうか。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
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