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【新人経理向け】毎年1月によく受けるご質問。
こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。
毎年1月末は、法定調書合計表と償却資産申告書の提出・申告期限です。各法人の決算期は全く関係なく、提出時期は毎年1月末に設定されています。
書類作成の手引きを読み込めば理解できる内容がほとんどなのですが、手引きの読み込みだけでは理解しにくい部分もあります。この時期、法定調書合計表や償却資産申告書の作成にあたって、特に新人経理さんからよく受ける質問がありますので、思うことをまとめて書いておきたいと思います。(正解を知らないご質問も多いです。)
注:法定調書合計表の種類は複数あり、企業によっては2種類以上提出すると思います。また、提出期限が異なる法定調書合計表もあります。今回は、多くの法人が提出するであろう「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」に限定しています。
①償却資産申告書と法定調書合計表は、なぜ年度表示が不一致なんですか?
A : 正確な理由は存じ上げませんが、おそらく、集計期間の違いによるものと思われます。
例えば2025年1月末提出期限の書類の年度表示は、法定調書合計表は「令和6年分」ですが、償却資産申告書は「令和7年度」です。
「どちらの書類も2024(令和6)年の取引を集計して、2025(令和7)年1月末までに提出するのに、なぜ年度表示が違うのですか?」という質問は、本当によく受ける質問です。
こちらですが、正確には「法定調書合計表は暦年(1月1日~12月31日)の取引を集計」する一方、「償却資産申告書は1月2日~翌年1月1日の取引を集計」して記載します。
つまり、法定調書合計表は明確に「2024(令和6)年分」ですが、償却資産申告書は「2025(令和7)年1月1日時点の償却資産の状況を申告」することになっています。この違いにより、年度表示が異なっているものと思われます。
差し当たりは、「同じ時期に提出する書類でも、年度表記が違う」という事実は理解しておく必要があると思います。慣れている経理さんはよくご存知のことなのですが、知らないと感覚的に受け入れにくい表示ですね。
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②1月15日に取得・事業供用した償却資産を、「1月1日取得」として台帳登録したら上司に注意されました。
A : 1月1日取得として登録すると償却資産申告の内容が変わってしまいますので、注意が必要です。
会計上は、固定資産台帳に「1月15日取得・事業供用」と登録しても、「1月1日取得・事業供用」と登録しても、減価償却費の計算は全く変わりません。減価償却費の計算は月割だからです。
ただし、1月15日取得・事業供用の固定資産の取得・事業供用日を正しく1月15日として登録するか、月末日の1月31日として登録することはあっても、1月1日取得・事業供用とすることはあまりないでしょう。なぜなら、1月1日取得・事業供用として台帳登録してしまうと、「前年に取得した固定資産」に含まれることとなり、試算表の数値と整合がつかなくなるからです。
上記①の通り、償却資産申告書は「1月2日~翌年1月1日の取引を集計」して申告します。つまり、誤って1月1日取得・事業供用として固定資産台帳登録すると、前期の償却資産申告とつながらなくなってしまうのです。(本当に1月1日取得・事業供用であればそのように登録すべきですが、なかなかそのようなことはないと思います。)
本当はこの歪な申告方法自体が混乱の元だとは思うのですが、現状はこのようなルールになっています。これはこれとして、覚えてしまった方が良いでしょう。
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③人事部に「法定調書合計表」の控えを依頼されました。なぜですか?
A : おそらく、従業員の就労ビザの更新に必要なものと思われます。(他の理由のこともあると思いますので、直接人事部に質問しましょう。)
そもそも法定調書合計表の作成にあたっては、従業員の給与情報を目にすることになるため、人事部が作成担当となっているケースもあります。ただ、税務署に提出する書類のため、多くの会社では経理部の担当業務になっていることと思います。
会社が提出する法定調書合計表ですが、その会社の従業員の就労ビザの更新がある場合、提出が必要とされています。その意味では、法定調書合計表の控えは非常に重要な書類です。
ところが、2025年1月1日から、紙で税務署に書類を提出する際には「提出書類のみを提出」するよう変更されました。従前は、紙で提出する際にも控えと返信用封筒を入れれば収受印を押された控えを返送してもらえていたのですが、その対応がなくなっています。つまり、紙で提出すると収受印なしの法定調書合計表しか残らなくなります。
この取扱いについて出入国在留管理庁のHPの記載を確認したところ、「受付印のないものであっても差支えありません」とのこと。今まで、かなり収受印の有無にこだわってきたのに、本当にこの対応で大丈夫なのでしょうか、、、
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④個人の外注さんから「支払調書が届いていない」というクレームがありました。支払調書を本人に交付する義務はありますか?
A : 法律上の義務はありません。しかし、慣例的に必ず送る企業が多いです。契約時に自社の支払調書の取扱いを説明しておいた方が良いと思います。
これも本当に多いご質問ですが、一定の支払調書を「税務署に」提出する義務はあっても、「ご本人(支払先)に」交付する義務はありません。
一方で、支払調書をサービスとしてご本人に送付する慣例は何十年も残ってしまっています。ご本人が確定申告するのに便利だからです。したがって、「他社では送ってくれるのに、何で送ってくれないの?」と思ってしまう方がいまだにいらっしゃることは事実です。
無用なトラブルを避けるため、支払調書をご本人に交付しない方針の会社さんは、契約時に「支払調書は交付していない」ということを明確にお伝えしておく必要があると思います。また、支払調書送付先が多い企業は、作業の簡素化のため、この発送作業をどこかでやめる決断も必要なのではないかと思います。
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⑤法定調書合計表の提出意義は何ですか?
A : 税金の徴収もれを防ぐためだと言われています。
個人事業主や12月決算法人以外の場合、この「暦年で数値を集計する」作業は、面倒で仕方ありません。報酬・賃料の支払などの帳簿から拾う数値を、年度決算の区切りとは関係のないタイミングで集計しなくてはならないからです。
この法定調書合計表作成上は、一定金額以上の個々の支払情報を申告することになります。そのため、この情報に基づいて、その支払を受けた側の納税もれを防ぐ仕組みになっています。実際に、この法定調書合計表の情報に基づいて調査を受け、納税もれの指摘を受ける方も多いようです。
一方で、作成側の会社さんからは「手間なので、年度単位での集計ではダメなのか」という声を伺うこともよくあります。課税庁側の都合として、個人の所得税申告との付け合わせのために暦年集計とされているのかと思われますが、どうなんでしょうか。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
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