【経理】経営者が求める「コミュニケーション能力」とは?
こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。
2023年11月から、noteで中小企業経理についてのマガジン「強い経理のつくりかた」を書いています。最初に「経理人材の資質として求められるのは、コミュニケーション能力」ということについて書きました。
先日、この投稿に関し、経営者の方から「実際にコミュニケーション能力が高いと思える経理人材に会ったことがないので、ピンと来ない」というご意見を頂きました。
今日は「経理におけるコミュニケーション能力」について、今、自分が考えることを書いてみたいと思います。
結論:周囲を不安にさせたら、そのコミュニケーションは失敗。
まず最初に自分が思う結論を書きますが、「周囲を不安にさせるような言動が続くのなら、その方にはコミュニケーション能力を認めにくい」ということです。
コミュニケーション能力が高い方は、その方の経理における職歴・肩書・ポジションに関わらず、ビジネスの基本「報告・連絡・相談」の方法やタイミングが絶妙です。最終報告が遅くなりそうな場合は、その理由や報告予定時期を、先んじて関係各所に連絡することができます。そのため、上長やチームメンバーはもちろん、取引先の担当者など、社外の人も不安にさせることが非常に少ないでしょう。
一方、「○○さん、~の件はどうなっていますか?」「今、その連絡されても対応できないですよ」など、上長やチームメンバーに言われることが多い方は、どれほど最終成果物の出来が良くても、評価はなかなか上がりません。
ただ、非常に難しいのは、「~の件はどうなっているかな」と感じるタイミングは、人によって違うということです。つまり、相手の性格・性質に応じて「報告・連絡・相談」ができないといけないので、同じ方でも「ある職場では評価されていても、別の職場では全く評価されない」ということが起きてしまいます。
とは言え、特にコミュニケーション能力が高い経理さんは、どの職場でも周囲を不安にさせることが少ないです。そして、周囲を不安にさせることが少ないということは、相手の意図を汲み取る能力が高いということです。結果として、業務上の成果物も的を外すことはなく、「優秀な経理さん」という評価になりやすいです。
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「察して欲しい」は、経理ではナシ。
誤解を避けるため、ここで触れておきたいのは「相手の意図を汲み取る」ということは「察する」ことではない、ということです。
どの仕事でも「相手が言語化しなくても察することができる人」がいることは理解しますし、実際に自分もそのような経理さんにお会いしたことがあります。ただし、それができるのは、ほんの一握りの方だと思います。
経理の現場でトラブルが生じたときに、その原因を探ると「言語化・文書化されていないために起こるトラブル」の割合は非常に高いです。たまに「こんなことは当たり前なので、察して欲しい」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、「自分も含め、人は他人のことを察することができないもの」と考えた方が良いと思います。
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「経営者を常に不安にさせない」ことができたら、超一流。
ところが、問題をややこしくしていることがあります。それは、中小企業の経理さんは「ひとり経理」のケースが非常に多いということです。
つまり、「企業のひとり経理さんにとっての『周囲』=『経営者』」ということになってしまうのです。そして、経営者の中には「こんなの当たり前だから、察して欲しい」と考える方は少なくありません。
正直なところ、企業の経営者を常に不安にさせずに、かつ、その考えを察することができる経理さんがいらっしゃるとしたら、それは超一流の経理さんだけだと思います。経営者の思考スピード・行動スピードは圧倒的に早く、その経営者を不安にさせないことができるとしたら、ある意味「経営者以上」の思考スピード・行動スピードがある方だけでしょう。そのスピードを持っているケースは、いちど会社経営を経験した方以外では見たことがありません。
そのため、経営者の方が「実際にコミュニケーション能力が高いと思える経理人材に会ったことがないので、ピンと来ない」と考えるのは、やむを得ないことだとも思っています。
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まずは、「社外からのマイナス評価がない」を見る。
それでは「ひとり経理では判断のしようがない、それでは、どう評価したら良いのか」と思いますが、お客様からご相談を受けたときには「まずは社外からのマイナス評価がないことが、最低限の判断基準」とお伝えしています。社内で評価できる物差しがない以上、社外からの評価に頼らざるをえないからです。
例えば経理Bさんについての評価として、社外の方から「Bさんって、メールの返信が遅いよね」「Bさんから毎回同じ質問を受けるけど、何とかならないかな」というようなマイナス評価があるとしたら、その経理Bさんには「経理としてのコミュニケーション能力」が認めにくいと考えられると思います。
一方、経理としてのコミュニケーション能力が優れているAさんの場合、社外からこのようなマイナス評価を受けることがありません。Bさんと同じタイミングでメールの返信をするとしても、そのメールの返信が遅くなることのお詫びや説明を事前にしてたり、毎回同じ質問をしなければならない理由を丁寧に説明して先方に理解頂いていたりするからです。
ただし、Aさんの場合、社外の方から「Aさんって、良い経理さんだよね」とわざわざプラス評価を伝えて頂けることは、非常に稀です。だからこそ「社外からのマイナス評価がない」というのは、最初の判断基準になることが多いです。
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経理に対する経営者の評価が上がらない、負のスパイラルを断ち切れるか?
今回、経営者の方からご意見を頂いて改めて考えたのは、「経営者の評価が上がらないこと」と「経理が間違った頑張り方をすること」は、企業における永遠の負のスパイラルだということです。
どちらが先なのかはわかりませんが、会社の成長を阻み、少しずつ会社を蝕んでいく負のスパイラルを断ち切り、強い経理の企業が少しでも増えたら良いなと考えています。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
この投稿に対するご意見・ご感想などありましたら、コメントを頂けますと幸いです。