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【強い経理】まずは「キャッシュど真ん中経営」を。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

「従業員が少ない中、最小限のリソースで会社を運営していく」という決断をされる会社さんは少なくないと思います。そのようなとき「経理の観点からは、何をやったら良いですか?」と聞かれることがあります。

今日は「"強い経理" を目指す企業経営で最優先に考えなければならないことは、キャッシュ中心に経営を進められるかどうか」ということについて書きます。

↓↓↓ 本マガジンにおける「強い経理」の定義


キャッシュを死守できれば、経営は続けられる。

最初に結論を書きますが、とりあえずキャッシュさえ死守できれば、経営は続けられます。そしてキャッシュに余裕ができれば、経営が安定し、さらなる挑戦をすることができます。

「何を当たり前のことを言っているんだ」と言われるかもしれませんが、実際には、会社のキャッシュを死守することよりも経営陣の報酬だけ上げたり、無理な先行投資をしたり、税金を減らすことを優先したり、会社のキャッシュを優先させない決断をする会社も多いです。

以前、顧問先だった会社の社長さんがおっしゃっていた言葉ですが、「キャッシュど真ん中経営」は、本当に大切です。稼いだキャッシュを丁寧に管理し、ぎりぎりでまわすのではなく、余裕を持って活用していくことです。

手元現金の管理。

まずは、手元現金の管理です。

①現金を出納する人と、記帳する人は分ける。

手元現金を実際に出金したり入金したりする人と、会計記帳する人(お金の動きを記録する人)は必ず分けます。これは、現金・預金管理の基本です。

「設立当初は社長ひとりだから、人は分けられない」からと言って分けずに始めてしまうと、従業員が増えても「社長本人が現金を出し入れし、会計記帳も社長がやっている」状況が継続してしまいます。

「今まで何も問題はなかったから、問題ない」と言われることもありますが、本当に何も起きていなかったとしても、その「ゆるすぎる空気」は、優秀な従業員が働きにくい環境です。設立間もない時期であっても、社長以外に1人でも従業員がいるのであれば、その従業員が経理担当でなくても、手元現金の管理のために協力してもらうようにすべきだと思います。

現金の取扱いのような基本は、他の全ての管理にも反映されます。「他の管理はしっかりしているけれど、現金管理だけ良くない」ということはありません。

②できる限り、手元現金は持たない。

上記①の方法は、従業員がゼロの会社では成立しません。そのため、できるだけ銀行振込や口座振替、法人クレジットカードなどで対応できるようにする工夫が必要になります。

ただし、どうしても現金払いのものが避けられないこともありますので、その際は、個人で立替するような方法になるでしょうか。

どのような状況であれ、できる限り手元現金は持たないような仕組みが望ましいと思います。手元現金があることにより、管理手数が増えてしまうからです。


③経費を立替払いをするときは、個人のお財布と区別する。

ひとり会社の経営者の方に非常に多いのですが、領収書の束はあるものの、ご自身の個人経費の領収書と、法人の経費の領収書が混じってしまう方がよくいらっしゃいます。

個人のお財布と法人のお財布は、分けなくてはなりません。例えば、個人でクレジットカードを複数持っているのであれば、Aカードは個人用、Bカードは法人用、と分けるのも分かりやすいです。クレジットカード明細ではっきり区別されるので、領収書が混じってしまっても、簡単に区別できるようになります。

また、単純に領収書を入れる箱自体を分けるのも良いと思います。


銀行預金の管理。

次に、銀行預金の管理です。最低限やるべきことを書いてみます。

①基本は、手元現金の管理と同じ。

基本は手元現金の管理と同じです。預金を出納する人(振込作業をする人など)と、会計記帳をする人は分けます。

②キャッシュカードは、持たない。

会社の運営をするにあたっては、できるだけ銀行口座のキャッシュカードを作らないで運営できるようにする方法を考えた方が良いと思います。

キャッシュカードがあると、その管理・運用のためのルールが必要になってしまうからです。

②銀行預金の動きは、日次・週次で押さえる。

重要なのは「銀行預金の動きを、日次・週次で押さえる」ことです。

「銀行預金の動きを、日次・週次で押さえること」「銀行預金の動きを元に、今後の対処を検討する」を継続できていれば、急に窮地に陥ることだけは避けられるでしょう。

従業員が増えても、この「銀行預金の動きは必ず押さえる」ことは継続している経営者の方も多いです。動きを見ていると、不審な出金に気づいたり、新しいビジネスの方法を思いついたりすることもあります。


資金繰りと税金に、振り回されない。

「中小企業の経営の肝はキャッシュフローだから、そのぎりぎりのキャッシュフローを切り抜けるのが、経営者の手腕」と信じていらっしゃる経営者の方は、少なくありません。

その考えを否定するつもりはありませんが、その「ジェットコースター・キャッシュフロー」から自由になれば、その時間を本業のために割くことができます

また、ぎりぎりのキャッシュフローである会社に非常に多いのですが、納税時期が近くなると、納税額を減らすために備品を大量購入したりします。当面の納税は減りますが、その分、お金は確実に減っていきます。

「ぎりぎりのキャッシュフロー」を切り抜けるための工夫ではなく、そもそも「ぎりぎりのキャッシュフロー」状態を作らない仕組みづくりのためのビジネスモデルの構築が必要だと思います。


まずは、キャッシュど真ん中経営を。

まずは「稼いだお金を、どのように管理し、どのように使うか」を不足なく追っていくことが重要です。

少しずつ余裕ができてきたら、慎重に従業員を採用し、月次決算を組むことも考えても良いのではないでしょうか。


最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

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