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【経理】それは「予算」というより、「夢」?

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

仕事でよく使われる用語であっても、人によって言葉の意味や定義が異なるものが多くあります。異なっていても特に問題が生じないものもありますが、トラブルにつながりやすいものもあります。

今日は、「予算」という用語について、中小企業でよく生じるトラブルと対応方法について書いてみたいと思います。


Budget(予算)というより、Dream(夢)ではないか?

多くの中小企業に関わってきた中で感じることですが、一言で「予算」と言っても様々です。

中には「それは "予算" ではなく、"夢" ではないか?」と思うことも、しばしばあります。実績と比較すると、「今年は予算の10分の1の利益だった」という結果も少なくありません。

顧問先の経営企画部マネージャーから「現実と乖離し過ぎていて、"本当の予算" ではないので、時間と労力の無駄ですよね?」とご相談を受けることもあります。予算策定は経理部は直接的に関係はないことも多いかもしれませんが、「無駄な予算策定のために、また今年も実績数値を集計しなくてはならないのか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

確実性の高い順:Forecast(予測)→Budget(予算)→Dream(夢)。

解説する方によってニュアンスが違うと思いますが、ざっくり言うと、確実性の高い方から、「Forecast」→「Budget」→「Dream」という順になると思います。(実際には、「Dream」を業務上で利用することはないと思いますが、比較のために並べました。)

Forecast(予測)は、過去の実績と現在の契約状況等に基づき、確実に達成しうるであろう、将来の数値を指します。したがって、この数値は各部署の実績数値の積み上げによって策定されることが一般的です。確実な数値だと見込まれる一方、保守的過ぎる低い数値になりやすいです。

一方、Budget(予算)は、不確定要素を含んでおり、「希望的観測」も含んだものになります。会社によってはルールが決まっており、例えば「見積書を提出し、顧客との打合せ回数が〇回を超えたものは『予算』に含む」としていたりします。

ところが、中小企業ではこの「希望的観測」が、あまりにも「希望的観測」過ぎてしまい、結果的に夢(Dream)に近づいてしまうことがあります


経営者は、夢を語るもの。

経営者と「予算」の在り方について話し合いをすると、よく聞く言葉があります。

「経営者が夢を語らずに誰が夢を語るの?夢を語らない経営者に誰がついてくるの?」

確かに、経営者のうちには「夢を語ることで社員を惹きつけるタイプ」の方もいらっしゃいます。ただ、その夢は予算で表現しなくても良いものだと思います。例えば、経営者が思う「夢」は「予算」で表現するのではなく「夢」として語って頂き、その一方、社長がその夢の達成を信じる根拠を定期的に語ってもらうようにすれば良いのではないでしょうか。


経理部として、自社の予算をどう受け止めるか?

経理部として、自社の「予算」をどう受け止めて対応するか、という問題があります。

その「予算」が、「夢」「ほぼ夢」であるならば、予実管理(予算・実績の管理)をする必要はないと感じてしまうでしょう。ただ、その「夢のような予算」が会社の士気を上げているのならば、その予実管理は意味があるものかもしれません。

一方、どう考えてもその「夢のような予算」が何の役にも立っていないのならば、その予実管理は意味がないことになります。かえって、その「夢のような予算」と「実績」の乖離は、士気が落ちる原因にもなります。経営企画部とも相談し、予算の策定方法を見直すよう、経営者に提案することも必要だと思います。

一言だけ付け加えるとすれば、経理スタッフには「夢のような予算」に見える数値であっても、実は「経営者にとっては根拠のある数値」であることも多いです。予算策定にあたっては、数値とともに、その数値の根拠(例:なぜ売上が急に倍以上になることが想定されるのか)を記録として残し、管理部には見えるようにしておいた方が良いと思います。

なお、会社によっては、「予算(Budget)」の他に「予測(Forecast)」を策定し、毎月の予実管理は、「予算」「予測」「当期実績」「前期実績」の4項目を比較をしている会社も多いです。管理上は若干手間ですが、この方法が最も単純明快かもしれません。


意味のある、予実管理を。

会社の内部の人間としては、「以前から継続している方法をそのまま続けるのが、波風を起こさず一番良い」と思ってしまう気持ちも理解します。ただ、「意味がないと思うことを継続する」ことほど、社員のやる気が削がれるものはありません

是非、各関係部署と連携し「意味のある予実管理」を試みてみてはいかがでしょうか。


最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

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