【BanG Dream! It's MyGO!!!!!感想文】”円環の外”からやってきた神出鬼没のギタリスト楽奈のお話
9/27追記
本日、「BanG Dream! It's MyGO!!!!!前編 春の陽だまり、迷い猫」公開です。
お近くの映画館で御覧ください。
近い内にこの記事のブラッシュアップ版を投稿したいと思います。
こんにちは!
新しく始まったバンドリのアニメ、めちゃくちゃ面白いですね!
リアルライブもめっちゃいいから期待してたけどこれは期待以上かも……!
出てくるキャラみんな可愛いし、でもどこかリアルさもある。
そんでもって、ある程度普遍的で突飛でないキャラデザも評価が高い……(腕を組むオタクの図)
!?
白髪のウルフカット!?
無口天才肌オッドアイ!?
オタクが好きな要素ドカ盛り丼(¥1980)!?!?
あー、そういう感じね。
ごめん、みんな。俺、この子のこと好きかも……
というわけで今回は違う星からやってきた野良猫こと、要楽奈ちゃんのお話です。
フラフラと現れたり現れなかったり、物理的な迷子の要素を担う女…の子。
そんな楽奈ちゃんの傷、願い、そして役割をちょっとまとめてみようかなって思います。
楽奈ちゃんの活躍
アニメを見終わった皆さんへ。
「楽奈ちゃん可愛かったけど、いまいちつかみきれなかったなー」
「楽奈ちゃん可愛かったし重要な気がするけど、何が重要かわからんなー」
「楽奈ちゃん可愛かったなー」
こんなことを思いませんでしたか?
私は思いました。
楽奈ちゃん、可愛いんですよね。
楽奈ちゃんってバンドに必要な人間であることはわかるんですが、どうして必要なのかいまいち分からないんですよ。
それもそのはずで、この物語を大きく動かすような役割を楽奈ちゃんは担うことがありませんでした。
燈に引きつけられるようにフラっと4人の前に現れ、波乱を起こすかと思えば直後にストーリーを動かしたのは燈と愛音。
楽曲制作の必須パーツではあったものの、あくまでそういう設定を示しただけ。
ストーリーに関わるような発展は起きませんでした。
一瞬近づいたかと思えば遠ざかっていく、まるで彗星のように掴みどころのない気まぐれな少女こそが要楽奈です。
強烈に光る個性がある。技術もあるし、バンドをやっていく上では失っちゃいけない人間。
でも他のバンドメンバーに比べるとどうしても物足りなさを感じてしまう。
そんな少女。
そんな楽奈ちゃんがバンドに必要だと私が感じるようになったのは、第10話「ずっと迷子」です。
消えてなくなりそうな風前の灯。
そんなバンドを繋ぎ止めるために必死に歌を紡ぎ始めた高松燈。
灯された火。
今にも消えそうな種火の側にそっと寄り添って風から守ってくれた人がいました。
そう、楽奈ちゃんです。
楽奈ちゃんは燈に寄り添ってあげました。
それだけでありません。
再びライブをするよう立希を焚きつけ、再びステージに戻ってくるよう愛音を待って、そよには音を鳴らす権利をあげた。
ここに来て楽奈ちゃんの本心がゆっくりではあるものの確実に見えてきました。
楽奈ちゃんはもうこのバンドのことが好きなんだ。
そんなカスみたいな、だけど確かな感覚が私の中に。
この物語は「BanG Dream!」である
愛音の家に集まってライブの準備をする5人。
全く順調にはいかない、予定通りには進めない、でも集まった5人。
気まぐれにギターを弾いた楽奈は、燈の言葉を受けて語り始めます。
衝撃の事実。
要楽奈は都築詩船の孫娘でした。
都築詩船はライブハウスSPACEを営んでいた伝説のバンドマン(バンドウーマン?)です。
バンドリシリーズにおけるSPACEは正しく原点というべき場所であり、今までの展開はここから続いてきました。
そんなライブハウスのことを楽奈は「一生あると思っていた。でも無くなった」と語りました。
SPACEを失ったこと。
居場所を失ったことこそが楽奈にとっての傷なのです。
要楽奈は他の4人と同じ、傷を抱えた迷子の少女でした。
そんな傷を塞いでくれる人が現れます。
それこそが高松燈です。
「一生、やろう」
燈が4人に対して放った言葉。
この言葉は燈が結びたかった約束。
壊れてしまうかもしれないほどに強い意志を包含する誓い。
一方でそれを輪の外から覗くのは「一生続く居場所」を求めていた楽奈。
奇しくもその言葉は、意図せず楽奈が負っていた傷を塞いでくれるものでした。
ここでライブハウスSPACEの話を少々。
先ほどバンドリシリーズの原点はSPACEであるという話をしました。
ライブハウスSPACEは数々の物語が生まれたライブハウスです。
キラキラドキドキを歌う星のようなバンド。
そんなバンドに憧れるギター狂いの田舎っこ。
SPACEの終焉に合わせて脈動を始めた新しいライブハウス。
そして、要楽奈という猫のように気まぐれな少女。
はてさて、ここでまた少々風向きを変えさせていただきます。
皆さんはこの物語が「BanG Dream!」であることに違和感を抱いたことはないでしょうか?
このストーリーは果たしてバンドリである必要があるのか?
今までと確かに世界観は一緒だし、学校とかライブハウスとかの設定も一緒だ。
だけど地続きの物語ではないのではないか。
どちらかというとこれは「It's MyGO!!!!! from BanG Dream!」なのではないか、と。
この違和感を吹き飛ばす話こそが #11 「それでも」です。
蚊帳の外にいたはずの少女が4人の場所に来るようになった。
要楽奈が確かにバンドのメンバーとしてそこにいる。
要楽奈の性質。
それは先に語った通り、SPACEから生まれたものであるという点です。
SPACEから生まれたものたち。
それらは全てバンドリという銀河の中にある星々となりました。
ならば。
要楽奈もバンドリ銀河の星の一つなのではないか。
その星が所属するバンドだってバンドリの一部なのではないか。
#11「それでも」にて要楽奈は、この迷子の物語を「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」へと変えた。
気まぐれな猫の力によって、この物語は「BanG Dream!」であることが確固たるものになりました。
死する円環、始まる循環、繋ぐはこの音。
最後に要楽奈の役割について、少しお話させていただきます。
要楽奈とは「輪を繋ぐ」存在です。
唐突な結論ですが、要楽奈さんとはそういう存在です。
一つずつ説明をしていきましょう。
二つの小さな輪と大きな円環の物語
バンドリとは輪の物語です。
円、和、循環……さまざまな要素を包含する輪。
MyGO!!!!!の物語とは、その循環の終わりで死した少女たちがもう一度息を吹き返す物語でした。
CRYCHICという輪の終わりと共に落ちた3人の少女。
音楽とは遠い場所で死んだ千早愛音はそんな棺の元に流れ着き、死にゆく3人を巻き込んで新しい輪を作りました。
そよ風だけでも崩れそうなほどに脆く柔い輪。
一生なんて、とてもじゃないけど保てない。
そんな輪を彼女たちは作りました。
ライブハウスSPACEの飼い猫、要楽奈もまた死んだ少女の一人でした。
SPACEの終焉と共に輪から落っこちてしまった少女。
楽奈は死んだまま、迷子のように彷徨っていました。
一生という願いに諦めを抱いていた頃、同じように傷だらけな少女と出会いました。
その少女は、楽奈の命にもう一度火を燈してくれました。
生き返った少女は、不出来な輪の中にフラッと入っていきました。
春日影を知った楽奈は見事なまでにCRYCHICと迷子のバンドを繋ぎました。
しかしそれは劇薬。
強い衝撃は脆い輪に軽々と大きなヒビを入れてしまった。
迷子のバンドは崩壊への一途をたどり始めました。
けれどそれでも戻りたいと必死で願う、必死に歌う、もう一度手を伸ばそうと手を伸ばす。
必死にやることしかできない燈のもとに現れ、伸ばされた手を最初に繋ぐのもまた楽奈でした。
叫ぶことしかできない少女の「うた」は、寄り添ってくれる音をもって「歌」になった。
楽奈は音を鳴らして、迷子の輪を繋ぎ止めました。
そして楽奈は、先に語った通り、バンドリという大きな円環にMyGO!!!!!という頼りない星屑を繋いだ。
あるバンドの終わりと始まりを繋ぎ、小さな輪の中で手を繋ぎ、大きな銀河に星を繋いだ。
要楽奈の役割とは、そんな輪を繋ぐこと。
まさに繋ぎ止めるために必要な”要”の役割なのです
まとめ
いかがだったでしょうか?
物語を通して無口で出番も少ない楽奈でしたが、肝心な場面にはいつもいた彼女。
「SPACEを無くした」という彼女の傷。
「一生の居場所」という願い。
「輪を繋ぐ」という役割。
楽曲「無路矢」で語られる通り、要楽奈は音の中でなら話せる人間です。
音でしか話せない少女が少ないライブの何を成したのか。
彼女がこの作品の中で音を鳴らし、その先で何を紡いだのか。
皆さんにそれを少しでも伝えられたのなら幸いです。
外側から迷い込んで「一生の居場所」を手に入れたエキセントリックギターガール。
静かに寄り添ってくれた気まぐれな野良猫のお話でした。
彼女がバンドリに接続した、MyGO!!!!!。
MyGO!!!!!とCRYCHICは地続きの物語で、じゃあCRYCHICで死んだ他の人たちの道はどこに……?
そんな仮初の命を与えられた人形のお話はまたいずれ……
追記
随分前の話になりますが、劇場版の公開が決定しましたね!
なんか楽奈の話を追加されるらしくてウキウキだったんですが、この記事の存在を思い出して冷や汗ダラダラです…
解釈が合ってると嬉しいなあ。