「フェイクドキュメンタリーQ」ミステリ脳で勝手に読み解く(旧: 「フェイクドキュメンタリーQ」好き勝手感想): Q2 - ボイメでよろしくどうぞ
感想そっちのけで推理ばっかりしてるからタイトル変えました \(◜◡ ◝ \)
さてこのQ2、情報量は極小といっていいのですが、できる範囲で検討してみようと思っていたら想像以上に話が大きくなってしまいました。その結果ここまで投稿が遅れてしまいました。気がついたらもう書籍版の発売もすぐですよ。そっちの扱いはどうしようと悩みは増える一方です。
※ 筆者の「フェイクドキュメンタリーQ」に対するスタンスについては下記まえがきをお読みください。
Q2: 深夜の不気味な留守番電話
※本文はネタバレを含みます。本編鑑賞後にお読みください。
概要
タイトル: 深夜の不気味な留守番電話
英語タイトル: Strange Messages
動画内タイトル: 深夜の留守番電話
扱う記録の概要
媒体: 音声
元映像の制作: 音声提供者
入手経緯: 音声提供者からの送付(募集の有無等は不明)
動画作成者による編集
音声の選別
字幕付加
ナレーションなし
かんたん感想
Q1は一見ふつうのフェイクドキュメンタリー、と思わせて外部の視点を導入することでメタ的な視点を披露する、というひねりを入れた作品でした。
個人的にはこの視点への意識というものが垣間見えたことで、「フェイクドキュメンタリーQ」は実はフェイクドキュメンタリーというよりもメタフィクションに近いのではないか、と思える部分もあり。
ともあれそのようなある種明快な構図を持っていたQ1からこのQ2になると、ポイッとあらぬ方向に目先をすっ飛ばしてきます。というわけで見る方はアホ面で取り残されてしまうという意味でシリーズの振り幅を見せてくれる1本です( ᐛ )
内容としては、昔使っていた留守番電話にヘンなメッセージがいくつか入ったとして、ほぼ音声が流されるだけという内容です。それ以上のなにかが見られることはありません。
また、Q1では後半に至って人死にという「いわく」がドンと披露された一方で、このQ2では冒頭部から音声の提供者が登場(おそらく電話によるインタビューで、姿は見えませんが)してきます。つまり音声提供者は死んだりせず普通に健在ということでさほどの「いわく」は無しで確定、はじめから大きな事件はなさそうだと想像できるわけです。
なのでこれはあくまでただのヘンなメッセージで終わり、になりそうではあります。確かにメッセージは不気味なものとはいえるでしょうが、それ以上に不可解さが勝り、どう解釈していいものかと途方に暮れてしまう感がありました。
メッセージを検討してみる
ともかく困惑していても仕方がないので、肝心の留守番電話メッセージについてちょっと考えてみましょう。
一応整理すると、計67件とされるテープに記録されたメッセージのうち、動画内では6件が紹介されます。
6/67件目(金曜日 2:10)
無言
9/67件目(土曜日 2:19)
雑音と音楽
21/67件目(日曜日 3:49)
「6・4・5・1」の数字を繰り返す声
25/67件目(月曜日 3:45)
男性のわめきらしい声。内容判別は困難
31/67件目(土曜日 2:49)
女性らしい声。内容判別は困難
67/67件目(金曜日 1:10)
音声提供者と同じ声と思われる女性の声
「わたくし あの ちょっとお話がしたいので よろしくどうぞ」
内容としてはこんなところで、後半のメッセージは不気味といえば不気味、のですが音声自体はヘンなメッセージの域を出ないと思います。
25件目は何度聞いても酔っ払いの間違い電話にしか聞こえないし。
で、どういうこと?
さて、音声についてはよくわからないままですが、一旦動画制作者のスタンスの不可解さについての話に移ります。
どこがおかしいのでしょうか。動画の締めの部分を考えてみます。
67件目のメッセージを紹介したところで「全ては謎である」と全てをぶった切って動画は終了してしまいます。
メッセージには何の意味があったのか!?その後投稿者の身になにかが起きたのか!?という調査が始まりそうな流れですがそんなものは一切なし。なんで?
とくに気になるのは、音声提供者のインタビュー音声が挿入されている点です。
67件目はインタビューを受けている音声提供者と同じと思われる声なので、最低限これについての質問くらいするのが自然ではないでしょうか。「このメッセージを入れた記憶はあるか」くらいは聞きそうですよね。これでは何のためにインタビュー音声を入れているのかさっぱりわかりません。
あとは聞き取り困難ながら人の声であることはわかる25件目/31件目を解析して内容を解明、というのもありでしょう。
そういえば「イシナガキクエを探しています」では音声解析をやっていましたね。向こうは映像の音声で、こっちはといえば音声以外になにもないというのに、解析する気はなさそうです。うーん。
さて、動画からわかることはもうなさそうになってしまいました。こんなモヤモヤ感以外に何の手掛かりも無いのでしょうか。
いえいえ、そんなことはありません。YouTubeの機能を活用すると変な点が更に浮上してくるのです。
字幕機能です。
【字幕つき】じゃない動画の字幕
Q1の方では特に触れなかったのですが、この「フェイクドキュメンタリーQ」では全エピソードに日本語・英語で字幕がつけられています。なので海外の視聴者も多くいるようです。大変いいことですね。
で、一部のエピソードには【字幕付き】と動画タイトルに入ってるのですがそれに限らず字幕はついていて、しかも【字幕付き】つきのエピソードに限って字幕が役に立たない(執筆時点でシーズン1-Ex「フィルムインフェルノ」、シーズン2-Ex「トロイの木馬」が該当)というのが楽しいところ。
「ゾゾゾ」でも同様に2言語での字幕が付いているため、字幕をつけること自体は皆口氏の方針じゃないかと思われるのですが、字幕の立ち位置はだいぶ違いそうです。
それはともかく、Q2は【字幕付き】つきの回ではないので字幕が役に立ちます。字幕を参照すると、一部のメッセージの内容を補完することができるのです。
メッセージの内容を、字幕による追加情報(太字で記載)とあわせて整理してみましょう。
6/67件目(金曜日 2:10)
無言
9/67件目(土曜日 2:19)
雑音と音楽
21/67件目(日曜日 3:49)
「6・4・5・1」の数字を繰り返す声。
25/67件目(月曜日 3:45)
男性のわめきらしい声
字幕に特に情報なし
31/67件目(土曜日 2:49)
女性らしい声
日本語字幕: 「????…トキ」/「ワタシト…???…ガ…???…ショ」
英語字幕: "When…" / "You saw me, didn't you?"
67/67件目(金曜日 1:10)
音声提供者と同じ声と思われる女性の声
「わたくし あの ちょっとお話がしたいので よろしくどうぞ」
英語字幕: "I want to talk with you - please call."
ご覧の通り、31件目と67件目については字幕をつければ意味のわかりやすさが格段に上がることがわかります。
まず、31件目の末尾は動画内のテロップ等には何もないのですが、日本語字幕には何故か一部の内容が明記されています。これで少しわかりやすくなりました。
さらに英語字幕をみると、なんと後半部分は欠落のないちゃんとした文章になっています。
これと日本語字幕を組み合わせてみれば一目瞭然。「〇〇してた時、私と目が合ったでしょ」と言っているのだとはっきりわかります。
さらにこれを手がかりにするとそれ以外の部分の推測もつきます。おそらく、「そこにいるのはわかってるんです」、「カメラで撮ってた時私と目が合ったでしょ」または「鏡をとってた時私と目が合ったでしょ」といったところでしょう。
また67件目の「よろしくどうぞ」の意味はこれだけではさっぱりわからないのですが、英語字幕を見ると"Please call" = 「電話をしてくれ」という意味だとすぐわかります。
さて、字幕を活用するとメッセージ内容の解像度はぐっと解像度が上がりました。よかったよかった。
……で終わりならいいのですが、結局これになにかの意味があるのでしょうか。どう考えればいいのでしょうか。
「よろしくどうぞ」の意味
さて、字幕からわかったことのうち、一番気になることは何でしょうか。
真っ先に引っかかるのは「よろしくどうぞ」という曖昧な言葉の意味が「電話しろ」と具体的になったことです。
英語は日本語ほど曖昧な表現ができる言語ではないので、翻訳するならより直接的・具体的な表現が使われるケースはあります。ですが一般的に考えるなら、実際の意図がわからない場合は英語であろうと具体的に表現しようがないため、当たり障りのない表現になる方が普通です。
その前の「話がしたいので」という言葉からは、電話で会話するのか会って会話するのかそれとも何か別の方法なのか、判別することは困難でしょう。
もちろん留守番電話メッセージであるという事実からの推測でこう翻訳しただけ、という考えは成り立ちます。しかし、そんな確証もない内容を具体的な言葉に訳す理由はわかりませんよね。
ためしにDeepLで「よろしくどうぞ」を英語に訳したところ"pleased to meet you", "please treat me well"といったものになりました。前後に文章をつけ加えても"Best regards"といったところ。まあこのへんが当たり障りのない翻訳、といったところでしょう。
やはり、どう考えても、"please call"という翻訳は不自然に具体的です。
字幕をつけることで意味不明だったはずの内容や曖昧な表現の意味が明確になっていること、もちろん字幕は動画制作者がつけているであろうこと、を考え合わせると……。
答えは一つしか考えられません。動画制作者は「よろしくどうぞ」の意味を知っていた。
動画のラストは「全ては謎である」とぶった切られていました。
ですが、実は「よろしくどうぞ」の意味は動画制作者にとって謎ではなかったのです。その答えは字幕という場所になぜかこっそり隠されていた。
怪奇音声だ何だというよりも、この事実のほうがよほど奇妙ではないでしょうか?
これにはどんな意味があるのでしょうか。
というところで、ここからは想像を交えての話になることをご了承ください。
私が考えつく推測は2つ。複雑で面倒な第一の推測と、ごく単純な第二の推測です。
複雑で面倒な第一の推測
「よろしくどうぞ」の向かう先
67件目のメッセージについてもう少し検討してみましょう。
音声提供者によれば、メッセージは30年ほど前に録音されたものだといいます。
音声提供者の声は相応に老いた印象がありますし、30年前から同じ声であった可能性は低い。なので実際に自ら吹き込んだとは考えにくい。ならばこれは超自然的な……。
いえいえ、そんな結論に飛びつく必要はありません。
これは音声提供者本人の、ごく最近の声であると考えればいいのです。
すなわち、67件目のメッセージが録音されたのはごく最近であると考えれば問題は何もなくなるのです。
動画を見れば明らかな通り、この留守番電話メッセージには「◯曜日、◯時◯分」という曜日と時間の情報しかなく、録音された年月日はわかりません。したがって、67件目が録音されたのが30年前と判断することはできません。
しかし、仮にそうであったとすれば、もちろん音声提供者は嘘をついている――少なくとも重要なことを話していないことになります。
そもそも、普通自分の電話に留守番メッセージを入れることなんてないでしょう。音声提供者はなぜ自分の電話にメッセージを入れたのでしょうか?だとすればやはり本人の声ではなく……。
ではなく、もちろん単純な考えでそれは解決可能です。
すなわち、この留守番電話は音声提供者のものではない。音声提供者は、他人の留守番電話にメッセージを録音したのです。ごく普通のことです。
つまり、音声提供者はこのメッセージを録音した後、電話機またはテープを何らかの手段で入手し、それを動画制作者に送ったと考えられます。
「よろしくどうぞ」の一つの終点
しかし、どうすればそんな経緯が成立するのでしょうか?
そこで、21件目の「6・4・5・1」、35件目の「私と目が合ったでしょ」のメッセージを併せて考えてみましょう。
まず、留守番電話を本来利用していたのは誰なのか考えてみます。
ちょっと飛躍した発想になりますが、例えばとある集団(秘密組織でもカルト教団でも良いでしょう)に潜入取材を試みた者がいたとします。
ここではこの集団を某集団と呼びます。
その潜入者が利用したのがこの留守番電話でした。
潜入者は某集団への潜入を行うにあたり、内通者に手引をしてもらう必要がありました。その内通者との暗号が「6・4・5・1」ではないかと思われます。この内容については長くなるため後述します。
さて、内通者との連絡のうえ、潜入は実行されました。潜入者は某集団から何らかの情報や物品、或いは映像等を持ち帰りました。
しかし、その行動は某集団内部の人物に目撃されていました。
内通者を特定した某集団は、潜入者への連絡先を突き止めます。その際に残されたメッセージが「そこにいるのはわかってるんです。カメラで撮っていた時、私と目が合ったでしょ」というものでした。
居場所を特定され、留まるのは危険と判断した潜入者は場所を移動します。このときカセットテープは移動先の電話機に移され、そのまま使用されることになりました。
居場所や電話番号を変えて以降、某集団から電話はしばらくありませんでした。しかし、新しい電話番号もやがて某集団に特定されることになります。このため、しばらく時間が経ってから「話がしたい、電話をしろ」というメッセージが入ったのです。
67件目以降にメッセージが1つも録音されていないことを考慮すると、テープはこの後間もなく某集団の手に渡ったことになります。おそらく、逃げ回ることはできないと判断した潜入者は某集団と接触・取引を行い保身を図ったのではないかと思われます。
その時に、「カメラで撮った」映像・写真と併せてこのテープも某集団へ渡されたのです。もっとも、それで保身になったかはわかりませんが。
さて、一つ補足ですが、なぜ30年前の留守番電話が使われたかは上記の考え方である程度の説明がつきます。メッセージの保存は、電話内部のメモリーではなくマイクロカセットテープに行う必要があったのです。
なぜなら、録音されたメッセージを持ち出す必要があるからです。
上記のように居場所を特定された際には、なるべく素早く移動する必要があります。そうした場合、大きな電話機を持って移動する理由はない。マイクロカセットテープであれば荷物にはならずに持ち運べますし、新しい電話機に入れればそのまま使用できます。万が一の場合には物理的に処分するのも簡単です。
なお携帯電話では、その他の用途にも使用する機会が多いことから、メッセージを処分するという観点では不利になります。
しかし、実際にはこの可搬性が仇となり、某集団の手に渡されることとなったのでした。
では、なぜこのテープは動画制作者へ送られたのでしょうか?
ここまで説明すれば明らかでしょう。
先述してきた「潜入」は、動画制作者の指図による取材だったのです。
そして某集団は、ことが露見していることを知らせるために、このテープを動画制作者に送付しました。そのうえで、集団内で「よろしくどうぞ」のメッセージを録音した者をインタビューに答えさせることで「怪奇音声」としての結構を整えたのです。
これにはテープを公然と送付する口実を作る目的の他にも、万が一動画制作者が実際には無関係であった場合には「怪奇音声」として成立させておくことが保険にもなる、という2つの意味があります。
また、表に立てることを意図していない「私と目が合ったでしょ」の録音者については、特定が困難になるようメッセージ音声を大きく歪ませることも必要でした。
以上が、留守番電話メッセージの裏で進行していた事態についての一応の推測になります。
そして残された疑問ーーなぜ動画制作者は「よろしくどうぞ」が「電話をしろ」という意味だと知っていたのか。
これも上記のことを考えれば明白です。潜入者の行動を把握していた動画制作者は、電話が行われたことを知っていたからです。
つまり、動画制作者は潜入者の電話その他のやり取りを、盗聴ないし録音していたと思われます。すなわち、動画制作者もまた何らかの証拠等を握っているということになります。動画制作者はそのことを字幕という場所に密かに表していたのです。
こうして裏にある真相を密かに伝え、動画制作者は某集団との対決姿勢を示していたということです。
とまあ、このように一応の推測と論理を展開してみた、のですが……しかし。しかしですよ。あまりにもあまりなホラ話になってしまいました。
いくらなんでも発想が飛躍しすぎですよねぇ。大した根拠もなく謎の集団をデッチ上げてしまったし、そのお話を補強する細部のロジックも強引すぎです。大昔のスパイものじゃないんだから。
「6・4・5・1」も暗号として検討してみましたが、あまりに面倒で強引な解読しかできなかったのでオマケ扱いするしかないわけですよ。
それよりなにより、動画制作者はそんなことをするのか?という巨大すぎる疑問があります。そんな毅然とした態度をとるもんかどうか、なんなら自ら取材者を送り込むなんて大胆なこともするのかどうか、ですし。
なぜマイクロカセットテープが使われたのか、という観点は悪くないんじゃないかと思ったのですけどねぇ。
では、仕切り直しましょう。こんなに複雑ではない何かの推論ができないでしょうか。
補足:「6・4・5・1」の暗号
というわけで、強引な「6・4・5・1」の暗号解読です。こんな感じ。
6451を数字→ひらがなの暗号として解く
64・51 → 「へ な」
ローマ字に変換
へ な
→ He Na : ヘリウム・ナトリウムの元素記号となる
元素記号を英語の名称に変換
He Na → Helium Sodium
「6451」が4桁であることから、それぞれ先頭4字を抜き出す
heli sodi
アナグラム化する。
hide oils
さて、意味の有りそうな言葉が表れました。
hideというと大体は「隠れる」の意味の動詞ですが、oilという語と組み合わせれば別の意味が表れます。「獣の皮」の意味の名詞です。
だからこの文脈で言うoilというのは、なめし油のことになります。
hide(皮)とoil(なめし油)が合わさることで示されるのは「革」。
これは合言葉を表しているのではないでしょうか。例えばhideを示す「隠せ」といったら「革」と答える、というような。
……って、これもやっぱり無理やりすぎますね。
とくに「6・4・5・1」は4桁だから頭の4桁をとるって、強引とすら言えないレベル。無理やり暗号にして無理やり解くのはやめよう!
というわけでこの話はここまで。次の推測に向かいましょう。
ごく単純な第二の推測
というわけでここからは複雑にせず、単純明快に行きたいところです。
しかしこれらの音声について、他に可能な考えなどあるのでしょうか?
私には一つあります。それも、ごく単純な推測です。
ごく単純な再検討
では、67件目のメッセージにあらためて注目します。
単純に考えるため、他のメッセージは一旦無視しましょう。
メッセージの声は、音声提供者の声に酷似しています。ではこのメッセージの声の主は誰でしょうか。
単純に考えましょう。音声提供者本人です。
音声提供者の声には加齢が見られ、メッセージもそれと同様な声に聞こえます。ではこのメッセージはいつ録音されたのでしょうか。
単純に考えましょう。最近です。
動画の字幕では「よろしくどうぞ」が"Please call."=「電話しろ」と記載されています。ではなぜ動画制作者はそんな具体的な意味を知っているのでしょうか。
単純に考えましょう。実際に電話が行われたことを知っているからです。
ここまでは第一の推測と同じです。でも今回は、そんなに風呂敷を広げずに考えなくちゃいけません。
動画制作者は電話が行われたことを知っていると推測できます。では動画制作者はどうやって電話が行われたことを知ったのでしょうか。
単純に考えましょう。
電話をかけたのは、動画制作者自身だからです。
ごく単純な動画の見直し
あれれ、またややこしいことになったでしょうか。今回も想像をブクブクふくらませる必要があるのでしょうか。
いえいえ、ここはあくまで単純に、動画の中にあるものだけを考えましょう。
ということで、この動画の内容を改めて見直してみましょう。冒頭からのおさらいです。
最初に見られるのは、動画制作者にカセットテープが届いたとする映像です。
そして、それに続くのは、音声提供者の声によるそれについての説明です。その音質と、音声提供者を写した映像がないことから、おそらくこれはーー
そう。電話によるインタビュー音声です。
このインタビューを行うために、動画制作者は電話をかけたのです。
ごく単純な一連の流れ
さて、私の思いついた内容は見えてきたかと思います。
もう少しわかりやすくするために、この時の一連の出来事を少しだけ推測を交えて整理してみましょう。
奇妙な音声が録音されたカセットテープを持っていた音声提供者は、それについて話をしたいと考えた。
音声提供者はこうした物品の取材を行っている動画制作者の存在を知り、連絡先に電話をかけた。
応答はなく、電話は留守番電話につながった。
音声提供者は留守番電話に「話がしたいから折り返し電話をしてほしい」とメッセージを残した。
4. で録音されたメッセージを確認した動画制作者は、音声提供者へ折り返し電話を行った。
音声提供者へのインタビューが行われた。
動画制作者から音声提供者に、テープの提供が依頼された。
動画制作者にテープが送付された。
動画が制作され、配信された。
はい、どうでしょうか。こう考えれば、"67件目のメッセージ"の謎は単純極まりない形ですっかり解消されます。
「よろしくどうぞ」は、上記の 4. で録音された、動画制作者へのメッセージなのです。
そしてそれに答えて動画制作者は電話をした。だからその意味を知っているのは当然のことです。
しかし。このメッセージは音声提供者の持っていたテープに録音されていたはずです。
それはなぜでしょうか……と、ここまで書けばいくらなんでも明らかですね。
先程の一連の出来事を、少しだけ追記して再掲しましょう。
奇妙な音声が録音されたカセットテープを持っていた音声提供者は、それについて話をしたいと考えた。
音声提供者はこうした物品の取材を行っている動画制作者の存在を知り、連絡先に電話をかけた。
応答はなく、電話は留守番電話につながった。
音声提供者は留守番電話に「話がしたいから折り返し電話をしてほしい」とメッセージを残した。
4. で録音されたメッセージを確認した動画制作者は、音声提供者へ折り返し電話を行った。
音声提供者へのインタビューが行われた。
動画制作者から音声提供者に、テープの提供が依頼された。
動画制作者にテープが送付された。
4. のメッセージの音声がテープの末尾に上書きされた。
動画が制作され、配信された。
矛盾する点はないはずです。
ごく単純なひとつの結論
カセットテープは、機器さえあれば編集可能なメディアです。したがって、元々無かったメッセージを付け足すことは問題なく可能です。
メッセージ以外の部分、曜日・時刻についても単純な機械音声なので、他のメッセージから音をサンプリングして合成すれば簡単に似せて作れるでしょう。
言い換えれば、テープ本体が手に入った時点で、動画制作者はいくつでも新たなメッセージを作ることが可能といえます。例えばビデオテープの映像に、いくつも遺影の映像を上書きできるのと同じように。
もちろん、音声提供者は上記のように作られた"67件目のメッセージ"の存在など知りません。だから当然、音声提供者からも動画制作者からも「自分に似た声が収録されている」ということについてインタビューで言及されることなどありえないのです。
さて、これで67件目のメッセージについてはほぼ説明がついてしまいました。しかし。では他のメッセージの正体は何なのでしょうか。
……なんでしょうね。それはわかりませんʅ(ー́ωー̀ )ʃ
というだけではあまりに適当すぎるので、蛇足です。
メッセージが何だったのかはわかりませんが、きっと動画制作者にはどうでもいいものだったのだと思います。
それが何であれ、「これだけで動画にするには対して怖くない、オチが弱い」という程度の意味しか持たないものだったのではないでしょうか。
ーー何しろ彼らは、明らかに人の声だとわかる音声を解析する気も見せないのですから。