カイ説 般若心経 8


梵:anutpannā aniruddhā amalāvimalā nonā na paripūrṇāḥ.
漢:不生不滅。不垢不浄。不増不減。
日:(《空》として現れた事物は)
  生じることもなく、滅びることもない。
  汚れることもなく、清まることもない。
  増えることもなく、減ることもない。


 ここでは「《空》として現れる事物は」の句を補足した。何が「不生不滅~」なのかが不明瞭だと感じたためである。

 さて、「生じる」「滅びる」等は、観察できる現象の中から何がしかの部分的現象を切り出して、その時間的な変化の差分を比較して、「生じた」「滅した」と表現しているだけに過ぎない。より広い視野でより広く現象を見渡せば、「生じた」「滅した」と意味づけたものが単に移動した、あるいは交換した、あるいは変化しただけであることがわかる。

 例えば雨が降り水溜りができたとして、その後雨が上がり水溜りが消えたとする。「水溜り」と言う部分的な現象は「生じて、滅した」ように見えるが、視野を広げて現象の全体を俯瞰すると、雨が降り、水が低い場所に集まり、雨が止み、蒸発して雲となり・・・と、水は世界を循環しているだけある。何か無から発生したものもなければ、消滅してしまったものもない。

 「増える」「減る」についても、現象の差分でしかない。

 「汚れる」「清まる」等は現象の差分に加えて、人間の主観的な好悪の価値判断が付加されているが、その価値判断はまさに実体のない概念でしかない。

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