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宇野常寛著『チーム・オルタナティブの冒険』を読んでみた。

評論家の宇野常寛さん(以下、知り合いではないので敬称略)が初めて書いた小説『チーム・オルタナティブの冒険』を読んだ。何を今頃という感じだ。Amazonで先行予約して、発売日当日に地方に住む我が家に届いたが仕事が忙しく、そのまま積読して一ヶ月。なんとか年を越せそうな見通しをつけて年末に一気に読んだという体たらく。ほんと仕事したくない。

最初に結論を伝えておくと、想定していたよりもかなり面白かった。読み終わった時には、思わず立ち上がり拍手をしたくなったくらい興奮した。

ということで、感想とか適当に書く。ネタバレなので読んでない方は、以降は読まないように。

装丁デザインも書籍としての造りも丁寧だ。

1 私は、宇野常寛の信者ではない

最初に断っておくと、私は宇野常寛のファンでもマニアでも信者でもない。これまで宇野常寛の書いた本で読んでいるものは次に挙げるものくらい。

  • 遅いインターネット

  • 水曜日は働かない

  • ひとりあそびの教科書

  • 2020年代の想像力

『遅いインターネット』は、すごく納得できて、うんうんと首が折れるくらい頷きながら読んだ。
『水曜日は働かない』は、ストレートにこのタイトルだけでいい。凄い発見で、私の周りの人間に布教して回った。自分でも結構実践している。水曜日は、なるべくお休みにしようと努力している。
『ひとりあそびの教科書』は、宇野常寛の心の叫びが迸る大人の遊びを正当化する内容で、私もこの本を読んで限りなく安心したもの。『チーム・オルタナティブの冒険』を読む前に読んでおくと良い。

ということで、多分、批評家であろう宇野常寛が書いた小説を批評するほどの知識も知恵も思い入れもないので、以下の感想は適当に読んでもらいたい。

2 でも、共通する部分はある

新年早々、You Tubeで宇野常寛の「人生を全面的に見直します」というタイトルの動画が公開されたので見てみたら、購入したプラモデルはしっかり作りましょうみたいなことを延々と話をしてたり、積みプラが崩れて喜んでいたりして、私はこういうだからどうしたんだよみたいなのが好き。

因みに、私は、ガンダムを一度も観たことないし、モデラーでもないのに、購入してから一度も開封もしてないガンプラがいくつかある。積みプラだね。

我が家の積みプラ

ユニコーンとかいうガンダム?のペーパークラフトも一年掛けて作ったりしている。
この辺、宇野常寛も言っているが、毎日、5分でも10分でも部品一つを組むことによって、自分の意識をそこに集中させ、世の中のつまらないことから意識を飛ばすことができる。塵積の精神で、僅かな積み上げを継続することによって、一つのことが成し遂げられるのだ。これ、『遅いインターネット』にも通ずるよね。

ペーパークラフトとは思えない精悍な顔つき
自立する
背後のデカいのも手を抜いてない。バランス悪くね?

このペーパークラフトのガンダム、燃えるゴミの日に出そうかなと思っているけど、ちょっと勿体なくて出せていない。誰か欲しい人、いるかしらん?

3 全体的な感想

さて、いよいよ『チーム・オルタナティブの冒険』である。期待を胸に読み始めたのだが、最初は、さすがの宇野常寛も評論家としての論理的な文章から小説としての文体への切り替え、苦労しているなーって感じた。
なぜなら、小説としての文章してこういう表現は使わないなっていう箇所が気になったのだよ。

とはいえ、ストーリを追う集中力を欠くというレベルということではなく、気になる程度。昨今のラノベ出身作家の「てにをは」異常とか、むやみに改行が多い小説とは異なり、文章の密度というか書き込み度はさすがだなと思う。

なによりも、展開だよね。主人公は誰だよと思いながら、登場人物のキャラを追いかけていくと、それぞれが個性ある魅力が溢れてくる。
更にこれは(特に「森本くん」)、まるで宇野常寛のこれまでの人生の投影じゃないか。夜中の都内の公園で虫の生態を観察している宇野常寛と登場するカバパンとの行動原理の共通性とか、あらぬ妄想でいっぱいになる。

陰鬱で自己中、周りと馴染みたくない語り手の森本理生、ちょっと大人のエロさを感じる板倉由紀子、憧れの葉山先生、物語が進むに連れてキャラが尖ってくる。なんだ、この面白さ。

でもさー、これって、宇野常寛を登場人物を通して俯瞰しているだけで、物語が進んでいく中でどう納まるのか、ヤバくねとも不安にさせる。このまま著者の投影を描いただけだと駄作になるよねと心配していたら、いやいや、読み進むうちに、えっ、そういう展開をするのって、次から次へと驚きが。

もう馬鹿馬鹿しいくらい意外な事が起こって、更にスピード感も増して、小説だから描けるアニメみたいなバトル・フィールド、怒涛の最終局面へ。多分、映画ではなかなかそのまま思いどおり描けないよね、著者の機微な想いが錯綜するシーン。むちゃ、エンタメじゃん。

もしかして、前出のとおり、私が宇野常寛の表面的な部分しか知らないので楽しめるのか、それとも更に奥深いエッセンスがあって、私だけが感じて取れていないのか不安になる。そもそも、こんなレベルでnoteに感想書いていいんかとか疑心暗鬼。

因みに、光瀬龍著『百億の昼と千億の夜』が出てきた時は、ちょっと興奮した。これ30年くらい前に萩尾望都の漫画版で読んだのだけれど、当時は難解過ぎて解らないなあと思ったけれども、今回改めて読み直したら面白い。小説の中でも何度もこの話題が出てきて、懐かしいやら、共通項見つけたみたいな嬉しさとかあって、これも自分的には良かった。

この漫画は、昭和59年刊の初版本。当時、この本を買った私を褒めたい。

それでもって衝撃のワードがアレなんだけれども、こういうのをバカバカしいで片付けちゃあダメだね。まさにアレが頂点なんで、マジ、宇野常寛のズレたハイセンスを体感した。主人公のアレを唱えた時の興奮は、自分が叫んだんじゃないかと思うくらい、物語と同化したよ。すげーな。

後半の展開であるが、NianticのIngressの世界観がどっぷり導入されているよね。宇野常寛は、Ingressエージェントだったと思うが、私も一時、ガチ勢だった。もう数年前に活動停止しちゃったけれども、Enlightenedの2周目(リカージョン1回目)のLevel 9。

何年もほったらかしにされている私のステータス。

ジョン・ハンケのIngressの世界観が好きだった。「Nianticの川島優志さんにも一緒に写真を撮ってもらった。

各地のアノマリーにも参加したですよ。

「あなたの周りの世界は、見たままのものとは限らない」がIngressの世界観。そこではエージェントがポータルを死守し壮絶なバトルをしていて、世界が緑や青に染まっていく。ゲームをやっていない人には、何も見えない世界。そして、神社や歴史的遺物からはエキゾチック・マター(XM)が放出されている。
まさにチーム・オルタナティブが戦っている舞台に共通する。結界を結ぶのは、Ingressでいうリンクを張り、フィールドを作る。言い換えれば、虫の目で見れば、見せる世界。

この本を理解するには、Ingressをやってみるといいのかもしれない。

こんな素晴らしい処女作(小説として)って、ここに至る思考の深みなんだよなと思う。宇野常寛がどう考えているのかわからないが、次作が書けるのかしらん。今回の小説が著者の想いを真正面から投げ込んだ内容からして、その先を突き抜けることができるのか、様子を見たい。

いやー、宇野常寛マニアじゃなくても、ガンダムもエヴァンゲリオンも一度も観たことがなくても、普通に激面白かったですよ。エンタメ万歳!

4 番外(どうでも良いこと)

浴室で『チーム・オルタナティブの冒険』を読んでいたら、ビシャビシャと水滴が掛かってしまい、傷んでしまった。面白かったので大切に保管しようと思っていたのに残念。もう一冊購入しようか考え中。

あー、傷んでいる。悲しい。
カバーは、読み終わるまで外しておく習慣があるので、とてもきれい。

読み終わってから2ヶ月位の時間が経ってしまったので、細部を忘れてしまっている。入院とか拘置所に入ったりしたら、もう一度、読み直してみようかな。もう一冊、購入して。

とにかく、こういう本を純粋に面白いと思えるような人でありたい。



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