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ドローン撮影とNDフィルターとシャッタースピード

昔からビデオ撮影をされてきた読者の方にとっては「いまさら」な内容ですが、最近、ドローン撮影からビデオ撮影を始めた方や、オートしか撮れないビデオを普段扱っている方にとっては分かりづらかった、シャッタースピードとNDフィルターの関係を解説します。

巷のドローン撮影のTipsで、記事を書いている人自体がNDの用途をよく知らず、「水流や滝をスローシャッターで撮影するために使う」などの記事をたまに目にします。
もちろん、ドローンでそういう用途がないわけではありませんが、基本的には、要求される絞りとシャッター速度の組み合わせにするために、光の量を調節するためのモノ。です。

露出とは

まず、フィルムでもビデオでも、「露出」という概念があります。ここを深く掘り下げると長文になってしまうのですが、レンズから入った光を調節する「絞り」と、シャッターとの相互関係でフィルムや撮像素子に届く光の量を適正にすることを「露出」といいます。

また、シャッタースピードは倍数で表記され、絞りはルート2の倍数で表記されます。その段階を「1段、2段…」と表現し、「一段開ける」や、「半段絞る」のような言葉の使い方もします。

  筆者はスチルフォトグラファー出身であるために、当初、ビデオ撮影のシャッタースピードの意味が、わかりませんでした。スチルの場合は、一コマ一コマにシャッタースピードと露出を割り当てて考えるのに対して、ビデオの場合は、連続して映っているもののシャッタースピードをどうやって変えるのか? その意味がわからないまましばらく撮影していたものです。一コマ一コマ、ワンフレームごとに撮像するという意識が、なかったのかもしれません。

 言うまでもなく、映像とは連続して途切れず流れている動画なのですが、その構成は高速に連写された一コマ一コマの集合体です。そしてそれらを一コマで鑑賞するのではなく、常に連続した状態で鑑賞するものなので、気をつけるポイントがスチルとは自ずと違ってきます。

連続した動画とはいえ、一コマずつ撮影する事は、スチルカメラと変わりありません。その一コマの中で、(例えば60FPSなら1秒に60コマの中で)シャッタースピードをいくつで切るかという事が動画のシャッタースピードです。 

スチルとは感覚の違う、「ブラす」事の良さ。

ドローン撮影の映像がテレビ放映に乗ることが珍しくない昨今ですが、映像を観てドローンでの撮影だと、ひと目でわかってしまうのがジャギーの多さとジェロ(画面全体がゼリーのようにブヨブヨ動く感じ)と、動きがカクカクしているようなカットです。これはすべてシャッタースピードが速すぎる事に起因しています。一般的に、シャッタースピードはフレーム数と同じくらいか、倍数程度とされています。(60Fpsであれば1/60〜1/125程度)前のフレームのシャッターが開いているタイミングと、次のフレームのシャッターが開いているタイミングの間には、厳密に言うと必ず映っていない時間があるわけですが、速いシャッタースピードを設定した場合に動きの速いものが映りこむと、その映っていない時間が増えることになります。この部分が多くなってくると、映像が飛んだように感じられるわけです。これを防ぐためにレンズに入る光量を落とし、適切なシャッタースピードの範囲内に収まるようにするのがNDフィルターです。要するに、連続したコマであるが故に、意図的にブラして撮影をします。
 また、一眼レフでの動画など、シャッタースピードを上げたくないが、絞りも絞りたくない。(なるべく開放に近い絞りを使いたい)場合にもNDフィルターを使用します。 

適正なシャッタースピードイメージ
シャッタースピードが速すぎるイメージ

ココまでが一般的なビデオ撮影でのシャッタースピードと絞りの関係ですが、ドローンに搭載されているカメラについてはどうでしょうか?

Phantom4ProやINSPIRE1/2、Mavic2/3Pro世代ではシャッタースピードと絞りを両方コントロールできますが、Phantom4やMAVIC以前のドローン(もしくはMavicAir2などの初級者向けドローン)は絞りがF2.8固定のため、NDフィルターの重要性は特に高くなります。F2.8固定だと、夏場の日中等では光量が多いため1/1000以上のシャッタースピードになってしまいます。シャッタースピードを60fpsの倍程度の1/125に落とすためには3〜5段程度のNDが必要になります。3〜5段のNDは番号的にはND8〜ND32になります。

NDの数字の意味は、何「倍」の減光かという意味で、1段=倍です。
2段であればND4、3段であればND8です。

 絞りをコントロールできる世代の機材でも、夏場の日中等に適正露出を得るためには「絞り」をほぼ絞り切ってしまうため、回折現象などを防ぐためにも3段〜4段のNDを装着する事をオススメします。NDフィルターで理想的なものは、被写体の色合いが変わらず、単純に入射する光量を落とし、その分だけシャッタースピードを遅くしたり、絞りを開けたりする事ができるものです。

 CM、映画撮影の現場などでは、最終的に24FPSになる事が多いです。
撮影時も24FPSかというと、さまざまな場合や、CGなどの絡み、ハイスピード(業界的にはHSという言い方をする)で回す事も多いのですが、24FPSだと、概ね1/50、速くても1/100だったりします。
テレビなどよりもシャッター速度が遅いことのほうが多いので、NDもテレビなどよりも一つ段数の大きいものを使うことが多いです。

 

 可変NDフィルター

カメラを三脚に据えてキチンと絞りを操作できるならいざしらず、空撮の場合、コロコロ変わる天気や雲行き、暮れゆく夕暮れに近い時間等は、適正露出もコロコロ変わります。しかしその度に着陸させて、NDフィルターを付け替えるのは手間がかかりすぎるので。その場合に活躍するのが現時点では可変NDフィルターです。
一度機体を降ろす必要はありますが、一度着けたNDフィルターを取り外すことなくフィルターのリングを回すだけで調整できます。テンポの早い現場などには重宝します。しかし、品質の低い可変NDフィルターは色合いが変わったり、輝度ムラが発生したりすることが有るので、必ず本番前にテストをすることが重要です。

当時、便利に使っていましたが、機構上、露出ムラが発生することが多く、プロの現場では無理という事で、全く使用しなくなりました。 

NDフィルターを装着して撮影をすると、基本的に滑らかな映像が再生できます。しかし一コマ一コマで言うと、実はブレのある映像になります。動いているモノが多少ブレて映ることによって滑らかさが増し、結果として自然な映像になるのです。また、テレビ放映時特有のジャギーも減ります。ジェロも速すぎるシャッタースピードが原因ですが、これも低減することができます。

 ちなみにNDフィルターの本来の用途は上記の露出を調整する為のもので、色を変えるものではありません。むしろ、色が変わらないモノのほうが優秀なNDフィルターだと考えています。
その点、国産は比較的安心して使えます。


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