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モノの価値ってなんだっけ?コストプラス、知覚価値から感性価値志向へ

化粧品の宣伝広告って素敵ですよね。上の写真のように、美しい女性モデルが無数のリップスティックと一緒に写っている宣伝用のポスター、つい見入ってしまいます。CHANELやDIORなどの海外コスメブランドを空港の免税店で見て、つい買ってしまったなんて経験もあるんじゃないでしょうか?高級な口紅をつけると自然と背筋が伸びる!とか、口紅には特別な力があります。でも、口紅ってクレヨンと材料はそんなに変わらないそうです。

物の価値(値段)って、決して原材料の価値(値段)だけで決まるわけじゃないんですよね。スティーブ・ジョブズがペプシコーラの社長をやってたジョン・スカリーを引き抜く際に、

「このまま一生砂糖水を売り続けたいのか?それとも私と一緒に世界を変えたいのか?」

といって口説いたという話は有名ですが、ジョブズだって砂糖水に価値をつけることが出来るからこそ、スカリーに白羽の矢を立てたのでしょう。

商品の価格を決める方法はいくつかあるのですが、今回は「コストプラス法」と「知覚価値法」について書いてみます。コストプラス法とは、製品を生産するのにかかるコスト(原材料費、間接材料費、開発費、人件費、宣伝拡売費などなど)に必要な利益を乗せて価格を決定するものです。例えば、トースターを作るのに10,000円かかり、3%の利益が欲しいので販売価格は10,300円にしよう、と簡単に言えばこういう感じです。

一方で知覚価値法とは、市場で実際に売れそうな価格を決定して、そこから利益が出るようにコストを決めていくアプローチです。例えば、トースターはこのデザインでこの機能なら9,800円で買ってもらえそうだな、というのを決めて、そこからかかるコストを決めていき、採算が合いそうなら開発生産するという感じです。需要志向のアプローチといってもいいと思います。

電機メーカーの場合は圧倒的に知覚価値法のケースが多いです。コストプラスで欲しい利益を得られればそれに越したことはないのですが、なかなかそうもいきません。やっぱりお客さんに買ってもらえる金額で売価が決まるので、中には利益が出ていない商品もあります。でも逆に、高い金額で買ってもらえるおかげで大きな利益を稼ぎ出している商品もあります。日本の電機メーカーの場合は利益の少ないものが多いので、全体で見ると低収益になってしまっているのが現状です。(海外のメーカーはそんなこともないのですけどね)

このような状況の中で、今日本の電機メーカーが一般消費者向けに力を入れているのが「感性価値」や「ストーリー」「UX(User Experience)デザイン」です。物質的な価値ではなく、所有することや身に付けることで得られる充足感を提供することで、お客様にも満足してもらい、メーカーも利益を得られる世界を目指しています。まさにコスメの世界です。

1本100円以下で買えるクレヨンとそんなに変わらない材料で出来てるなんて!もう有名ブランドの高価な口紅なんて買わないわ!

って人はいないですよね。それは化粧品メーカーさんたちが、女性を美しくして幸福感や充足感を得られるように、そういう世界観を作るためにものすごい努力をしているからだと思います。私たち電機メーカーにはその努力が足りていないのだと反省しています。私たち電機メーカーは、人々の暮らしを物質的にだけでなく精神的にも豊かにするお手伝いが出来るよう、もっともっと頑張らないといけません。これからは「感性価値志向」でわくわくするような電気製品がお店に並ぶ世界を目指します。

ちなみに子供用の無添加のクレヨンを使って口紅を自作できるそうなので、マイリップを作ってみたい人はググってみてくださいね!


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