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Episode 026 「ルーツを辿ると、物事の本質が見える・・・様な気がする」

アデレードハイスクール(Episode022参照)在学中のとある放課後(1998〜1999年頃)、アデレード(Episode003)のランドルモールの中古CDショップにて(Episode025参照)偶然に出会ったHi-STANDARDのセカンドアルバムである「Angry Fist」(1997年発売)に出会い、Fat Wreck Chordsの存在を知り、そしてNOFXを知り、正にパンクロックの魅力にハマっていった。

アデレードのショッピング街であるRundle Mall(ランドルモール)

これを機に、NOFX及びHi-STANDARD以外にも、Lagwagon(ラグワゴン)、 No Use For A Name(ノーユースフォーアネーム)、Strung Out(ストラングアウト)、Propagandhi(プロパガンディ)など、Fat Wreck Chordsに所属する他のバンドの曲やアルバムもたくさん聴いた。完全に虜になっていた。その後、Fat Wreck Chordsに所属しているバンド以外にもかっこいいパンクロックバンドが存在することを知った。

スウェーデンのパンクロックバンドのMillencolin(ミレンコリン)、No Fun At All(ノーファンアットオール)、 イスラエルのバンドUseless ID(ユーズレスアイディ)など、アメリカやイギリス以外のバンドもたくさん聴いた。

他にも、Blink 182(ブリンク182)、 Green Day(グリーンデイ)、 New Found Glory(ニューファウンドグローリー)、 MXPX(エムエックスピーエム)、Sum41(サム41)などのバンドのアルバムも毎日のように聴いた。

この様に、Hi-STANDARD(ハイスタンダード)からアメリカの西海岸のバンドの音楽を聴く様になり、その後ヨーロッパのバンドなどを聴くに至った。その流れから、自らが生活していたオーストラリアにはどんなバンドがいるのかと調べてみたところ、Bodyjar(ボディージャー)、 The Living End(ザ・リビング・エンド)、 Frenzal Rhomb(フレンザル・ロム)、One Dollar Short(ワンダラーショート)、Silverchair(シルバーチェアー)など、他の国のバンドに負けない、かっこいいバンドが多く存在する事を知る事となった。

昔から変わらず、現在(2024年時点)に至ってもそうなのだが、とある楽曲を好きになると、その曲を作ったアーティストまたはそのバンドについて色々と知りたくなるのである。どんなアーティストが、またはどんなバンドがその曲を作るに至ったのか、などが知りたくなる。そのアーティストまたはバンドメンバーはどうやって、音楽活動を始めるに至ったのか、どんな音楽を(彼ら彼女らの)ルーツとして持っているのか、曲はどの様にして書くのか、歌詞はどの様にして書くのか、など。これらをインターネットのインタビューの動画であったり、インタビューの記事であったりから調べるのである。

この様な作業を通じて改めて感じる事の一つとして、時代を超えた様々な音楽そしてバンドの「繋がり」というものには非常に深いものを感じる。つまり、そこには、「音楽の進化論」的な何かがあるのである。例えば、Hi-STANDARD(ハイスタンダード)というバンドに関しては、NOFX(ノーエフエックス)というバンドが創り出す音楽そのものはもちろんの事、彼らのDIY精神をそのまま見習い、日本ではメジャーなレコード会社には所属せず自らのレーベル(PIZZA OF DEATH RECORDS)を立ち上げ、ビジネス面まで自分達でコントロールする事で音楽のクオリティーもさることながら商業的にも大成功した。

ハイスタのギタリストのKen Yokoyamaのソロ名義の楽曲も非常にかっこいい

では、このNOFX(ノーエフエックス)のルーツを辿っていくと、アメリカのパンクロックレジェンドであるBad Religion(バッドレリジョン)であったり、Descendents(ディセンデンツ)といったバンドから影響を受けているとのことが理解できる。先ほど少々触れたが、NOFXのリーダーである、Fat Mike(ファットマイク)は、Bad Religionのメンバーの一人である、Brett Gurewitz(ブレット・グレヴィッツ)が設立したEpitaph Records(エピラフ・レコーズ)というインデペンデント(独立系)のレーベルを真似てFat Wreck Chordsを設立した。

この様にして様々なアーティストやバンドのルーツを遡って行く事で、今まで知らなかったアーティストやバンドの曲などを発見していくという作業は最高に楽しいと感じる。ちなみに、このBad Religion(バッドレリジョン)というバンドはリアルタイムでRamones(ラモーンズ)の様な、パンクロックの元祖と呼ばれるバンドの一つに繋がっていくのである。

そう、この様にして15、6歳の私は、ふと立ち寄った中古CDショップ(Episode025参照)にてHi-STANDARD(ハイスタンダード)のCDを手にし、そこから遡りNOFX(ノーエフエックス)、さらに遡りBad Religion(バッドレリジョン)やDescendents(ディセンデンツ)と辿っていったのである。

尚、このBad Religion(バッドレリジョン)のボーカルのGreg Graffin(グレッグ・グラフィン)氏は、プロのミュージシャン(もちろん自身で曲も書き、歌詞も担当している)でありながらアイビー・リーグを構成する米国の大学、全米屈指の超名門校であるコーネル大学にて科学のPh.D(博士号)を取得し、現在(2024年現在)もプロのミュージシャン業を行いつつ(パンクロックというジャンルを世界的に圧倒的なまでにリードしながら)同時並行でコーネル大学およびカルフォルニア大学にて教授として科学を教えているとの事である。

世界屈指のパンクロックバンドであるBad Religionのフロントマンでありながら、同時に大学の教授でもあるGreg Graffin氏。

また、Descendents(ディセンデンツ)のボーカルであるMilo(マイロ)氏も科学でPh.D(博士号)を取得するという頭脳の持ち主である。

博士号を取得した科学周りの研究の追求でMilo氏(写真)はDescendentsを一時期離れた。その際に、残りのメンバーが別のボーカルを迎え(Descendentsとは別のバンドとして)結成したのが、あのALLというパンクロックバンドである。

比較的最近(確か2018年頃)の話になるのだが、このGreg Graffin(グレッグ・グラフィン)氏のインタビュー動画を見ていた際に、興味深い事を言っていた。バンドが結成(1979年結成)され40年以上経った今も尚、パンクロックというジャンルを世界的にリードし、世界中のロックバンドに影響を与え続け、質の高いパンクロックな曲を生み出し続ける秘訣は何か、というインタビューワーの質問に対し、「恐らく、煮詰まる、という状態を作らないのがコツだ」と彼は言っていた。

「私は、ミュージシャンでありながら大学の教授でもあります。従って、どちらか片方だけに集中する事はできません。うまくバランスをとり、両立させる必要があります。面白い事に、例えば大学で教授としての役割を担っていると、心のどこかで、「早く音楽がやりたい」という気持ちになります。そんな中、音楽の仕事をし続けていくと、同じ様に、「大学で教鞭をとりたいな」という感情が生まれてきます。この繰り返しです。恐らく、この様な現象が音楽だったり大学での教授という仕事を長く続ける重要な要素になっているのかと私は考えます」という様な内容の発言をしていた。

これには感銘を受けた。このインタビューを聞いてさらに思い出した言葉があった。「One is too much(一つ、一人など、なんでも、“1”、では多すぎる)」という考え方である。言葉をそのまま受け取ると、あたかも矛盾しているように聞こえる。「最小単位である1のどこが多すぎるの?」と思いがちだが、ここでの意図は、「他に選択肢が無い(つまり、一つしか無い)状態とは、健全では無い。なぜなら、その一つ、が脳内の全てを支配してしまうから」という事だと思われる。非常に本質をついた言葉であると個人的には感じた。尚。いつ、どこで、誰が言っていたのかは全く憶えていないのだが。





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