目薬

風邪で寝込んでいた私は近くに住む母に頼んで薬を持ってきてもらうことにしました。
いつの間にか寝てしまったようで、携帯には母からの着信と「寝ているようなので置いておきます」とメッセージが残されていました。

マンションの扉を開けると、外側の取手に白いビニール袋がぶら下げてあり、中には風邪薬やスポーツドリンク、そして目薬が入っていました。次の日、体調はすっかり良くなり、母に感謝の気持ちを込めて一緒にご飯を食べに行こうと誘いました。
母の好きな韓国料理屋で食事をしていると、熱い湯気が目に入り、私はカバンの中から目薬を取り出し使いました。

しばらく話しをしていると母が驚いだ様子で「あんたその目、どうしたの?」と言います。鏡を見ると、目が真っ赤に充血していました。
慌てて病院へ行き状況を話すと目に細菌が入ったとのことでした。

数日後、マンションに警察がやってきました。近隣住民からの通報を受けて、同じマンションに住む男が捕まったのです。その人の部屋からは大量の目薬が見つかり、警察はその中身を調べて驚愕しました。目薬の中身はその人の唾液だったのです。

今考えると、あの日母が置いていった目薬は、どこか不穏なものが混じっていたのかもしれません。いまでも目の充血は治らないまま、まるで何かが私の中に巣食っているかのように感じています。

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