【2つめのPOV】シリーズ 第3回 「仕切り」Last Part(No.0167)
パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉
いいや お前は俺と一緒だよ
おんなじだよ おんなじ
俺には見えるんだよ
似た者同士だよ 似たような人生を繰り返して終わるんだ
俺はそれが嫌だった
でも結局そうなっちまった
でも 自業自得さ 甘かったんだ 失敗したよ
俺はお前みたいになんか成りたくなかった
でも なっちまった だからこうして同じところにいるわけだ
お前が腹を立てるのもわかるが でも実際おんなじじゃないか
酒やテレビや遊びやらで 人生の繰り返しを続けている
ああ たしかにお前にはバイクがあるし 俺には野球があるな
でも だから何なんだ
同じじゃないか
別にプロを目指してなんか居ないし 適当に時間つぶしでやっている程度のものじゃないか
バイクを走らせたって せいぜい国内をプラプラしているだけだし 期間も数日だけ
到着したって温泉やらご当地グルメやら地酒やら
そうだ 俺だってそうだよ
毎日走り込みなんてやらないし バットもろくに振らない
休日に仲間内で集まったり集まらなかったりする程度
大抵は人数も足らない 気合なんて無い
ピッチャーなんかくわえタバコだしな
そうやって適当に試合やったり練習で済ましたりして
残りは仲間内で食べ放題飲み放題の定番コースさ
お前より酷いくらいさ
何でこうなったかは さっきも言ったとおりだよ
甘かったんだ しくじったんだよ
本当に野球が好きならば もっと真剣にやるべきだったんだ
それを適当に流して 生活を言い訳にして
才能を理由にして 可能性を気にして
結局 本腰を入れてやらなかったんだ
今からやればいいだろって?
そうだな
たしかにそれも大事さ
でもな
遅いんだよ
何時までもチャンスがあると思うなよ
俺はその幾つものチャンスを全て軽んじたんだ
だからしくじったんだ
もう 遅いんだよ
お前だって そうなんだ
今更プロのレーサーなんて絶対に無理さ
それは俺が言わなくたって お前が一番良く解っているはずだ そうだろ
そして 俺たちは
これを一生続けることになったんだ
俺たちは この枠から もう出られないんだ
【2つめのPOV】シリーズ 第3回
「仕切り」
おわり
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