【2つめのPOV】シリーズ 第3回 「仕切り」 まとめ記事
パターンA〈ユスタシュの鏡〉
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私の通う中学校でイジメが起きた。
私のクラスで起きた。
被害者は私だった。
他にも多くが色々な被害にあった。
加害者は複数人で、根っからの不良たちであった。
中学にあがった時から問題行動で何度となく注意を受け続けていたが、改善無く今日まで来た。
3年になって中学も最後の時に、よりによって彼らと同じクラスになってしまったのは悲劇であったが、しかし安心感もあった。
それは担任がとても力強い男性の教師であったことだ。
国語の教師であったが身体付きも逞しく、声も大きかったし顔つきもおっかない人で、普段着ている服が背広で無かったら体育教師と間違えられそうな見た目だった。
しかし性格はとても優しくて思いやりがあり、生徒の意見などを聞き入れる授業をする人だった。
生徒の間違った意見でも投げやりにせず、幼稚な感想でも馬鹿にしない人だった。生徒にも父兄にも信頼があった。
学校側も不良生徒達への対策として、このクラスの担任を彼にしたのだろう。また教師の性格上、その提案を快く受けたに違いない。
だが、いざ始まってみると彼らの行動には変化はなかった。
正直この程度の対策で心を入れ替えるほど彼らは素直な性根の持ち主では無かった。
担任も他の雑事もあるし、担当の授業もあるから彼らにばかり構ってられないのだ。
不良連中も担任の間隙を縫って悪事や嫌がらせに精を出す事に慣れていた。
過去に何年もそんな事ばかりしていたのだから当然と言える。
度重なる小言や忠告にもその場しのぎで反省が無い状態が続き、流石に担任も対処を本格的にすべきと判断した。
まだ梅雨前の頃に、担任はその特定の不良グループのリーダーをクラスから追い出し、通学を禁止にしたのだ。
他のメンバーにも曜日で分けて通学する段階的な通学禁止処分を出した。
これは大変な処分であった。しかし当の生徒達からしたら嬉しい対処だった。目の敵のようにされていた私にとっては特に。
当然だが、校長や教頭、そしてその不良たちの親や教育委員会は揉めた。
しかし教育委員会はこの問題に深入りしようとはせず、この学校の問題として処理するよう命じた程度で、後は介入しなかったようだ。
想像通り1番煩く言ってきたのは彼らの親だった。
やれ差別だ横暴だイジメだとボロクソに担任を罵倒し、自分達は被害者であり、この教師が加害者であると批判をしてきた。
その批判には勿論反論が教師からもそれ以外の父母からも生徒達からも出たが、彼らの親だけあって全く聞く耳を持たず暴れまわった。
彼らの親達による暴力的な抗議を受け、登校禁止に賛成していた人達も徐々に減っていき、声をあげることが少なくなっていった。
また、不良の親達が下校途中の生徒達を捕まえ、誰が賛成しているのかを聞き出す悪質な行為までやっていた。
こんなことが繰り返されたのだから、及び腰になるのも無理はなかった。
先生の味方になる人達は、教師の間でもほぼ皆無となり、生徒たちの中には居ることはいたが、大きな声を上げるものはいなかった。
それでも、その生徒の父母達含め僅かだが先生の味方はいた。
そして何よりも、先生自身は全く屈していなかったのだ。
これはとても勇気になった。
だが、残念ながら登校禁止の処分は早々に打ち切られ、またしてもかつての状況になってしまった。
それどころかもう罰を受けないということをまるで勝利宣言のように受け取った連中は、今まで以上に悪質さを増して校内で、クラス内で好き勝手に暴れまわった。
当然未だに屈せず、教育委員会や校長や不良の親たちに対して直接的に抗議を続けている先生の前ではそれなりに静かにしているので先生自身が彼らの悪質行為を見ることは出来なかった。直接現場を押さえられれば説得力も増すのだが、小狡い彼らは尻尾を掴ませる事無く、校内でのイジメや嫌がらせに精を出していた。
私に対するイジメの類いも担任の目に入らないところでされた。元々陰口や物の紛失などの嫌がらせは現場を押さえようも無いものだったから、やっぱり被害状況は前と変わることは無かった。
だが、先生を支持する生徒や父母達の中に私が居ることがバレたときから、このイジメや嫌がらせは加速した。
校内では常に安心できず、睨みつけられ監視され、わざとぶつかってきたりすれ違いざまに肘で脇腹を強く突いてきたり、机をひっくり返され中の物を全部出されたり、かばんを廊下に持ち出され中身を全部出されたり、あらゆる事をされた。
そして、私と仲が良かったり近くにいる人達までがイジメや嫌がらせに遭うようにもなった。
結果、私は校内で完全に孤立してしまった。
しかし私は隠すこと無く、この事は親に伝えた。親は先生の明確な支持者だったので全部きちんと聞いてくれたし助けてくれた。
この内容もすぐに学校と先生に伝えてくれたのだ。
先生は私の親の倍の怒りを持って各所へ抗議をしてくれた。
そして不良達の家にも直接出向き抗議を行った。
それが原因で警察も呼ばれてしまった。
こうして益々先生や私、その他の僅かな支持者たちは学校で孤立をしていったのだ。
ある日、支持者の父母達が話し合いの場をつくった。
支持者の父母と生徒、先生で集まったのだ。
理由としては、支持者の父母達が日々自分の子供が学校でイジメや嫌がらせを受け続けている事にもう耐えられないということで、何か今後の指針や意見を統一して状況の変化を得たかったからだった。
集まった場所は、学校内の会議室だった。時刻は夜で生徒たちはとっくに下校しているので誰とも会うことは無かった。
両手に満たない程度の人数の父母が集まり、同じ人数の生徒たちも会議に参加した。
重苦しい室内で、訥々と誰かが愚痴のような意見をぼやく程度で活気は無かった。
静まった校内の静寂を、窓から入る西日がより強く演出した。
その中、女生徒の一人がつぶやいた。
「まるで私達が隔離されているみたい」
その言葉は室内に更なる沈黙を作ったが、同時に感銘を与えた。
本当にそうだったからだ。
悪人を追い出して善良な人達でまとめようとしたのに、今では悪人によって真っ当な人達が隔離されてしまったのだ。
この子の言葉は、彼らに現状をきちんと理解させるのに充分なものだった。
そしてこの後、別の生徒が、
「だったら、私達がこの教室に登校してくればいいじゃん」
と言った。
この言葉に他の生徒たちがワッと湧いた。
自分達だけの教室があって、安心して登校出来るならこれは嬉しかった。
この会議室は校舎の別棟になっており、生徒達はまず入ってこなかったし、現在のクラスからはとても離れていたのだ。
この勢いに父母達も乗り、意見はどんどんと膨れ上がり現実化していった。
かの教師もその案に賛成した。
後日、この意見を父母と先生が共同で校長と教育委員会に提出した。
教育委員会は相変わらず校長に責任を押し付けるように逃げていった。
そして校長はこの提案を受理したのだ。
ただしきちんとテストは受けることや必要なカリキュラムはこなすことなど、如何にもな事務的な条件だけは付けてきた。
こうして、私達は夏休み前からここの会議室に毎日通っている。
ここは会議室だけあって冷房も効いていてとても良い感じだ。
人数も少ないから静かだし、みんな仲が良くなった。
それに先生もとっても元気だ。
先生はこのクラスだけの担当となり、他の授業は副担任たちが持ち回りでやることになったようだ。
そのせいで色々とクラスの中も担当授業もトラブルが続き、それまで日和見で不良達に従っていた大多数の生徒達とその父母達も憤りを募らせ始めたらしく、不良達とその親達は肩身の狭い状態に陥っているようだった。
たしかに悪人が今までのクラスに普通に登校できて、私達が別に隔離されるのは何だか納得いかない話だと思う。
でも、そのお陰で今までに無いほど充実した学校生活を送れている。勉強が嫌いだった私も、今は好きになったほどだ。
校長が条件として出してきた事は、先生は全て無視した。
来年の受験に向けて、それぞれの生徒に対して個別で必要なことだけを教えたり、それを解っている生徒には内容も時間も完全に自由にして好きにやらせてあげていた。
私はというと、高校に行く気が無かったので受験に伴った勉強は一切しなかった。
それでも先生は全力で応援してくれた。嬉しかった。
こんなに良い学校があるだろうか?
だってドイツ語とスペイン語と英語を勉強して、更にコンピュータ・ネットワークとプログラムの勉強を自由にやってても怒られず、協力してくれる中学校なんて他に無いだろ?
私は夏休みも毎日ここに通うつもりだ。
パターンA〈ユスタシュの鏡〉
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おわり
パターンA〈ユスタシュの鏡〉
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今の暑い季節で無くたって、何時でもアイスクリームは人気です。
子供はもちろん、大人も大変好んで食べるお菓子です。居酒屋などの大人達が集う場所にもアイスクリームは人気メニューとして並んでいるほどです。
華やかな街にはアイスクリーム専門のお店があります。各地の観光名所にはその土地ならではのフレーバーを施したアイスクリームやソフトクリームが名物とし
て定番で、映画「ローマの休日」でもジェラートが登場します。
そしてこの郊外の街にも、みんなに人気のアイスクリーム屋さんがありました。これはそこでのお話です。
このお店は沢山のフレーバーがある事が売りのお店で、全種類試すのも大変なくらいでしたが、どれも美味しそうにショーケースを兼ねた冷凍庫から綺麗な色艶をお客さんに見せていました。
お店の外を歩く人達もガラス窓越しについつい覗き込んでしまうくらい無視できない人気スポットです。
沢山のフレーバーがありますが、そこでもやっぱりシンプルなフレーバーが人気でバニラ、チョコ、ストロベリー、チョコミントなどなど昔からの味を選ぶお客さんが多くいました。ですからこれらの人気フレーバーはショーケースの中の区切りを2つも3つも使って常に売り切れる事が無いように店員さんたちによって用意がされていました。
店員さんも店長さんも毎日各種のフレーバーアイスたちを大切に管理していたのですが、フレーバーアイスの中には店員さん達の気持ちを理解せず勝手な振る舞いをするものたちも現れたのです。
ある日、一番人気のバニラの横に不人気のフレーバーが並べられました。
これは人気フレーバーの横に並べればお客さんもきっとこのフレーバーアイスも気にしてくれるだろうという優しい気持ちからでしたが、この不人気のアイスクリームは来るお客さんがみんなして自分ではなく隣のバニラを選んでいく事が我慢ならなくなっていたのでした。
夜になりお店が閉まった頃、この不人気のアイスクリームは隣のバニラに言いました。
「なあ、あんたはいつもお客さんに選ばれて羨ましいな。」
「え、そうかな。他のフレーバーだって沢山減っているよ。向こうの端っこにいるチョコなんて大分減ってるよ。僕なんか全然さ。」
「いいや、あんたのほうが減ったよ。大したもんだな。本当に人気なんだな。全く羨ましい。」
「あはは、有難う。君だって味のわかるお客さんは買っていってるじゃないか。そんなに僕を羨む事はないと思うよ。」
「俺なんか変な客しか買っていかないよ。子供はみんな君やチョコたちばかりさ! なあ、ところで相談なんだが・・・」
「ん?なんだい?」
「ここのお店はフレーバーの種類の豊富さが売りじゃあないか?」
「うん、そうだね。」
「でも、ちょっとマンネリじゃあないかな?」
「え? そう?・・・」
「そうさ。何しろ君やチョコみたいな単純なものばかりが売れていくってことは、他のフレーバーが飽きられているって証拠じゃないか。」
「うーん、それは違うんじゃないかなぁ・・・わかり易さとか好みとか・・・」
「いいやそうだね。ここいらのお客はみんなこの店のフレーバーに飽きちまったのさ、間違いないね。 でさ、そこで相談なんだが、一緒に混ざらないか?」
「え?!」
「だから混ざるんだよ。僕のフレーバーと君のフレーバーが混ざれば、君は更に人気になるはずさ。もうチョコ味なんか敵じゃないよ。」
そういうとこの不人気フレーバーは、区切りを跨いでバニラのエリアに入ってこようとしてきました。
バニラはビックリして必死になって止めました。
「おいおい!それは辞めてくれ! 冗談じゃないぞ、何を考えているんだ?! そんな勝手なことが許されるわけ無いだろ? 仮に混ざるとしてもそれは君の判断じゃ駄目だ。店員さん、いやこれはもう店長さんじゃないと出来ないことだよ。それをただのフレーバーアイスが決めることは認められないよ!」
「何を言ってるんだ?怖いのか?なあに心配要らないって。大ヒットして売れちまえば店長だって大喜びさ。在庫が捌けて一石二鳥さ。」
「いやいやそんな事は無い!僕はバニラであって君じゃないんだ。間違えるなよ。君は君の役割があるじゃないか。それと同じで僕には僕の役割があるんだ。それだから君と僕の間にはこの区切りがあるんだろう? それを勝手な事を言って区切りを無視して跨いでくるなんて絶対に許されない。いいから自分のところに戻るんだ!二度とここを跨いでくるな!」
普段温厚なバニラの大変な怒りっぷりに、傲慢な不人気フレーバーも流石に諦めて戻っていって、それきりバニラに話しかけては来ませんでした。
バニラは安心していたのですが、何やらゴソゴソとささやき声のような話し声がバニラの耳に入って来ました。しかし何を話しているのか聞き取れませんでした。
しかし、バニラに袖にされた不人気フレーバーは諦めずにバニラとは反対の、左隣に位置するこれまた人気のないフレーバーに対して、先程バニラに言ったことを話しました。
すると、このフレーバーはまんまと口車に乗ってしまったのです。
彼自身が不人気を気にしていた為に、混ざり合うことで人気になれるという甘い罠に引っ掛かってしまったのです。
彼らは店長さんの許可も得ずに、すぐに混ざり合ってしまいました。
話に乗ったフレーバーも人気がないとはいえ、ファンもいたし美味しい味でした。しかし店長さんの判断もなく勝手に混ざりあったことで、どんな味になったのか誰にも解らなくなりました。
そしてその味を試そうと思う人が現れそうに無い、変な色合いになってしまいました。
混ざった彼は自分の不気味な姿を見てすぐに後悔しました。
そしてやっぱり辞めたいから戻して欲しいとお願いしましたが、元には戻れないよと冷たく言い捨てられてしまいました。
激しい後悔が襲い頭を抱えていると、それならば更に隣と混ざればいいと、またしても唆す言葉を掛けられました。
混ざってしまった彼は藁をも掴む思いで、自分の隣にいる、それなりに人気のあるバナナフレーバーに声を掛けました。
バナナフレーバーは、声を掛けてきたフレーバーの不気味な姿に驚き、叫び声を上げました。
彼らは必死に説得しようと話しかけましたが、バナナフレーバーは聞く耳を持ちません。
それどころか必死に抵抗し暴れまわったので彼らともみ合いになりました。
そして段々と彼らは混ざり合ってしまったのです。
バナナフレーバーの抵抗は不人気フレーバーの塊を自分の中に混ぜることになってしまったのです。
こうしてバナナフレーバーまで混ざった不人気フレーバーたちは、いよいよどんな味か解らないものになり、見た目も更に悪くなりました。
メソメソと泣くバナナフレーバーの泣き声から感じる罪悪感を振り払うように、彼らはヤケを起こして寝静まったフレーバーたちを次々と襲いました。
美しく整頓されたショーケースの中は大混乱となりました。
強く抵抗し戦うものもいれば、逃げ惑うもの、泣き叫ぶだけのもの、自分から受け入れるもの、どんどんと不気味に膨れ上がる不人気フレーバーの醜悪さにかえって心奪われてしまうもの、吐き気を催すもの、店長さんたちではなくこのグロテスクなフレーバーに従うものなど、このショーケース型の冷凍庫は一瞬にして地獄絵図と化しました。
この地獄の中でも、バニラやチョコミントなど正しく清いフレーバー達はしっかりと自分を保ち必死に戦い、時に仲間を救いました。
そして、この地獄の一夜に朝がやってきました。
あの素敵なショーケースの中は一部を除きグチャグチャになってしまいました。
やがて、いつもどおり誰よりも早く店長さんがやって来て、このショーケースを見ました。
ショーケースの中で混ざりあった醜悪なフレーバー達の多くは、店長さんが自分達を新しいフレーバーとして採用してくれると信じていました。
きっと味見してくれて、喜んで一番いい場所を陣取ってくれるに違いない、バニラを超える最高のフレーバーになれるに違いないと、未だに信じていたのです。
しかし、店長さんはそのグロテスクな姿をひと目見て、
「なんだこれは!ただのゴミじゃないか!」
と叫び、清さを保ったフレーバーだけを残し、混ざったものは全てすぐに捨ててしまいました。
最高のフレーバーになれるという嘘に騙されたアイスクリーム達は、店長さんに味見さえされること無く処分されたのでした。
その日はお店は臨時休業となり、店長さん達はショーケースの掃除やら、新しいフレーバーの対策などで大忙しとなりました。
そして、沢山のフレーバーを用意することも考えものだと思い、それからは種類をあまり増やさず季節限定にしたりして、本当に大事なものだけを大切にするようになりました。
パターンA〈ユスタシュの鏡〉
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おわり
パターンB〈ラウディのサングラス〉
[Remove sunglasses]
もう8月になろうとしている時期にも関わらず、未だに関東では梅雨真っ盛りで、部屋でも屋外でも連日異常な湿度に見舞われ、当然熱中症も発生している状況にも関わらず、テレビやマスコミは相変わらずコロナを煽りに煽り、厚生労働省はすでにマスクは不要であると指針を変更している事を一切報道しない。
そもそも人々がしているマスクにウイルスへの効果は全く無いことなんて少し調べたらすぐに分かることなのに、いい年をした連中までもが疑いも考えもせず、ただマスコミの言いなりになって着用を続け、事実を知った真っ当な人が着用せずに生活をすれば目くじらを立て陰に陽に非難をするのだ。
どのお店に行っても必ずビニールやプラスチックでのれんや仕切りがなされているが、あれが本当にウイルス対策として効果があると一体誰が思っているのか?
免疫学や微生物学を学ぶまでもなく、空気感染すると警告がある病があんな程度で防げるわけがないのは子供でも解ることだ。いや、世の大人たちが皆あまりにも頭が悪く気が狂っている事がわかった以上、子供のほうが遥かに賢いのだからこういう例えは間違っているだろう。
不織布の切れっ端を付けたり、ビニールをぶら下げれば問題なく、それが無いだけで人非人として扱われ、商店などは非難をされ経営出来なくなる今の状況は、金を払えば罪が許されるといって人々が購入したというかつての免罪符のように、人々の生活や判断の基準はもはや科学でも知性でもなくハッキリとオカルトの領域に突入していると考えられる。
テレビ、酒、遊び、狂った教育と暴力、そして身分差別を幼少から徹底的に叩き込まれた今の大人の世代は、やはりこの現状からも分かる通り考える力を持ち合わせていないのだ。確かに気の毒だとは思うが、人間であり大人である以上はそんな明らかな間違いにただ流されて呑まれてしまいましたという言い訳は納得し難いものがある。
大人は自己責任で苦しめば良いと言えるが、しかし大人がその体たらくならば、その大人に付いて行かなければならない子供達はどうすればよいのか?
子供は自分で自分を守れないのだから、大人が愚か故に苦しむ状況を罪のない子供までが受ける羽目になるのだ。
そしてそれが今現実に起こっている。
知恵やモラルの象徴のような学校組織が、マスクや仕切りなどを生徒達に強制している。
世の学校の関係者は誰もインターネットを知らないのだろうか?
一応化学や理科に詳しいものも居るはずなのに、マスクの目がウイルスよりも遥かに大きいから全く効果は無くて、呼吸がしづらいために呼吸器に負担を与え、更にはマスクに付いたカビによって健康を害するリスクがあり、マスクによって顔にカビが繁殖する「顔水虫(みずむし)」までが叫ばれているのに、誰一人として止めない。
そのくせ毎日気が狂うだけなのに、かかさず見ているテレビに映るタレントたちは誰一人としてマスクは付けていないのだ。政治家も。
本来はドラマの登場人物たちだって常にしていなければならないし、映画でもそうなのに、そこは誰も不思議に思わない。
もし世間で噂されているような危険性が事実だとすれば、撮影自体が絶対にありえないのだ。
かつてマスクは奴隷の証だったいう。
今、まさに奴隷階級の人間だけがマスクを強制され、更に奴隷同士がマスクを強制させている状況にある。
そして上級国民である、テレビに映るものたちは誰一人としてマスクはしないし、それを見ても奴隷たちは差別も疑問も感じないのだ。
恐ろしいことだ。やっぱりナチを連想してしまうし、80年前の第二次大戦中の時代を連想してしまう。
かの時代を経験した人は、米兵よりも隣近所のオバサンが怖かったと言ったそうだ。
何か気に触ったら、噂を流されて憲兵が家に突入するという恐怖があったらしい。
今の時代そのものだ。ナチと何が違うのだろう?
ナチのような世界は、やっぱりこのような考えることを放棄した愚かな大人たちが成立させていたのだと考えるしか無い。
[Put on sunglasses]
獣と人間では知性が大きく違う。
獣はエサを与え毛並みに沿って撫でてやれば言いなりになるが、人間はこうはいかない。
獣は肉体の感覚が鋭いように、人間は知性の感覚が鋭いからこの程度では従わない。
だから対策として、まず知性を下げさせるのだ。
獣として扱うことを徹底することで、知能は確実に下がる。
知性で感じ取ることを出来なくさせる。
そして肉体でのみ感じ取ることが出来るようにするのだ。
アメとムチはとても良く効く。
特に子供の頃から獣として扱えば、その子は大人になっても獣のままなのだ。
快楽と暴力だけが生きる指針になるからとても扱いやすい。
しかし中には知性が高く、獣にならない奴らもいる。
注意が必要だ。
奴らのせいで、折角獣として手なづけた連中までもが「人間」に戻ってしまう危険がある。
これには本当に注意が必要である。
人間であるべきなのは「我々」だけで良いのだ。
他の連中との違いを明確にするためにも、どんどんと彼らを愚かにさせて奴隷の印を常に付けさせるのだ。
パターンB〈ラウディのサングラス〉
おわり
パターンC〈セルゲイのMix Up〉
真っ白な空間に、まっすぐに続く階段
何処まで続くのかわからないほど長い
その階段を赤ん坊が懸命にハイハイで登ろうとする
よじ登るように赤ん坊が階段を登る
やがて立ち上がり、階段の端にある壁に手をつきながら登る
ドロドロとした地面に立つ泥だらけの男
太い棒で力いっぱい地面に線を引く
一瞬だけ地面に線が引かれるが、すぐに回りの泥が入り込んで線が消える
男は、疲労でフラフラになり肩で息をしながら同じように地面に線を引く
大きなショッピングモール
子供のランドセルがたくさん並んでいる
カラフルな色のランドセルが並んでいる
別の棚にはリュックサックが並んでいる
大きさや色がそれぞれ違ったものが並んでいる
また別の棚にはビジネスバッグが並んでいる
同じ様な黒っぽい色で四角くてどれも似たようなものが並んでいる
見渡す限りの田園風景
人家はポツポツとある程度で他は山や田んぼで緑に囲まれた田舎
そのまっすぐな田舎の道を歩く男
その反対方向の遥か先から荷を背負った農家の老婆がゆっくりと歩く
歩く男
ゆっくりと歩く老婆
白い部屋でひっくり返されるランドセル
中から一気に教科書などが床にドサドサと落ちる
同じくひっくり返されるリュックサック
ボトボトと中身が落ちる
表にあるポケットのジッパーを開けると、また小物が落ちる
振るとさらに何やらボールペンなどが落ちる
今度はビジネスバッグがひっくり返される
ファイルやノートパソコンが落ちる
ひっくり返したまま、様々なジッパーが開けられる
その都度、財布やタバコ、バッテリー、スマホなどがボロボロと落ちていく
振るとまだ何か音がする
さらに探るとまだジッパーがあり、開けるとミントやサプリのパックが落ちていく
階段を登る幼児
ややおぼつかない足取りで、1段1段慎重に登っている
あるワンルームの部屋
空っぽでカーテンも無い部屋に朝日が輝く
部屋に置かれる複数のダンボール
いそいそとダンボールを開けて中身を出す大学生らしき女
ささやかな家具が並べられ、カーテンも取り付けられる部屋
ダンボールが無くなり、ベッドも置かれた部屋
真っ暗な部屋でアラーム音がなる
カーテンが開けられ朝日が入り込む部屋
簡単な食事をする女
テーブルからお皿が消え、着替えたり鏡の前で身支度をする女
リュックサックとスマホを持って、部屋から出ていく女
セミの鳴き声と強烈な日差しが窓を開けた部屋に入り込む
部屋は以前よりも雑然としている
服が床に丸めて置かれている
窓の外が白い雪に覆われている
部屋の中はパンパンのゴミ袋が部屋の隅にいくつもまとめて置かれている
髪も乱れ身なりの汚い女が呆然とテレビを見ている
テーブルにはカップ麺の空容器が倒れて置いてある
田舎道を歩く男
反対からゆっくりと歩く老婆
やがてお互いが視認できる距離にまで近づく
発射されるロケット
勢いよく空に向かって突き進む
燃料が終了したブースターが切り離されていく
なおも突き進むロケット
どこまでもまっすぐに伸びる階段を登る子供
ゴミだらけのワンルームの部屋の締め切られたカーテンを開ける年を重ねた女性
青々とした葉を茂らせた木々が窓越しに見える
窓も開けると明るい日差しと風が入り込みレースのカーテンを元気に揺らす
窓を開けたり部屋の片付けをしている姿を毛布を被った女が部屋の隅で眺めている
田舎道を歩く男
すぐ前まで荷を背負った老婆が迫っている
すれ違う時、男は「おはようございます」と挨拶する
老婆が顔を上げる
その老婆の顔は、さっきと違い挨拶をした男と同じ顔になっている
ヘッドフォンをしてスマホを使いながら歩いている黄色いシャツを着た若い男
ヘッドフォンをしてスマホを見ながらコンビニで買い物をする
店員の顔も見ず、ロクに話を聞くこと無くカウンターに千円を放り投げる
店員の手が引きずるように千円を取ると、カウンターにはドロドロとした黄色い液体が残っている
その液体を見つけ、不快そうにカウンターや千円、そして黄色いシャツの若い男を見る店員
その店員の視線にも気づかずスマホをいじる若い男
お釣りの小銭をそのカウンターの黄色い液体の上に置く店員
若い男はその液体を気にすること無く小銭をさらうように受け取り無造作にポケットに入れながら去っていく
カウンターには液体でへばりついたレシートが残っている
若い男は駅の改札でスマホを叩きつけ入っていく
そこには黄色い液体が残されている
電車に乗ると、車内には同じ様な黄色いシャツを着て同じようにスマホをいじる若い男が何人も居る
その男たちの手や足元から黄色い液体が垂れ、周りにボタボタと垂れたり、近くの人に付いたりしている
それを不快げな表情で睨む背広の男
別の黄色いシャツの男にも液体が付くが、その男はまるで気にしない
車内は黄色い液体で座席も手すりも床も汚れている
ゴミだらけの部屋が掃除され片付いていく
毛布を被った女は、自分の母親と思しき年取った女性が掃除をする姿を眺めている
フローリングや窓などを雑巾で拭いたり、バスルームなどを掃除をする母親
拭いたあとの雑巾や使い捨てのシートを見る母親
明らかに黄色く汚れている
空を突き進むロケットは、更に燃料を使い終わったエンジンを切り離す
大学の構内に黄色いシャツの若者たちが大勢いる
僅かにいる他の色のシャツを着た若者が、黄色いシャツの若者達の間を逃げるように歩いていく
構内は黄色い水たまりが沢山ある
「おはようございます」
田舎道ですれ違いざまに挨拶を返す老婆
顔を上げて相手を見ると、相手の顔が老婆の顔になっている
片付いたワンルームの部屋で母親が娘の身体をお湯で濡らしたタオルで綺麗に拭いてあげている
タオルは黄色く汚れる
大学の構内にいる学生の殆どが黄色いシャツを着ている
講義を受けている黄色いシャツの学生は、ノートを取ったりスマホをいじったりしている
黄色いシャツの学生の机も椅子も黄色い液体でドンドンと汚れていく
いじってるスマホも黄色い液体で水没する
教室内の階段に黄色い液体が流れ落ちていく
黄色いシャツ以外の学生が逃げるように席を立ち、教室から出ていく
教室は黄色いシャツの学生だけになる
綺麗な身なりになった娘が、母親と二人で小さいテーブルを囲んで夕飯を食べている
娘は以前と違いとても元気そうに食事をする
は母親も嬉しそうに食事を共にする
ベッド横の小さな机の上には、整頓された教科書とノートPCが置かれている
アパートの横にあるゴミ捨て場には、黄色いゴミが沢山入ったゴミ袋がいくつもまとめられている
真っ直ぐに伸びる階段をひたすら登り続ける成人の男
ふと立ち止まり、右手を開いて握っている物を確認する
手の中には赤ちゃん用の黄色いおしゃぶりが握られている
男はそれを振り返って後ろに捨て、前を向き直し、また階段を登り進める
コロコロと階段を転げ落ちるおしゃぶり
何かにぶつかって転がるのを止める
そこには黄色い液体に塗れた赤ん坊の衣服やランドセルやゲーム画面を表示するスマホや指輪や化粧品が打ち捨てられるように山を作っている
パターンC〈セルゲイのMix Up〉
おわり
パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉
いいや お前は俺と一緒だよ
おんなじだよ おんなじ
俺には見えるんだよ
似た者同士だよ 似たような人生を繰り返して終わるんだ
俺はそれが嫌だった
でも結局そうなっちまった
でも 自業自得さ 甘かったんだ 失敗したよ
俺はお前みたいになんか成りたくなかった
でも なっちまった だからこうして同じところにいるわけだ
お前が腹を立てるのもわかるが でも実際おんなじじゃないか
酒やテレビや遊びやらで 人生の繰り返しを続けている
ああ たしかにお前にはバイクがあるし 俺には野球があるな
でも だから何なんだ
同じじゃないか
別にプロを目指してなんか居ないし 適当に時間つぶしでやっている程度のものじゃないか
バイクを走らせたって せいぜい国内をプラプラしているだけだし 期間も数日だけ
到着したって温泉やらご当地グルメやら地酒やら
そうだ 俺だってそうだよ
毎日走り込みなんてやらないし バットもろくに振らない
休日に仲間内で集まったり集まらなかったりする程度
大抵は人数も足らない 気合なんて無い
ピッチャーなんかくわえタバコだしな
そうやって適当に試合やったり練習で済ましたりして
残りは仲間内で食べ放題飲み放題の定番コースさ
お前より酷いくらいさ
何でこうなったかは さっきも言ったとおりだよ
甘かったんだ しくじったんだよ
本当に野球が好きならば もっと真剣にやるべきだったんだ
それを適当に流して 生活を言い訳にして
才能を理由にして 可能性を気にして
結局 本腰を入れてやらなかったんだ
今からやればいいだろって?
そうだな
たしかにそれも大事さ
でもな
遅いんだよ
何時までもチャンスがあると思うなよ
俺はその幾つものチャンスを全て軽んじたんだ
だからしくじったんだ
もう 遅いんだよ
お前だって そうなんだ
今更プロのレーサーなんて絶対に無理さ
それは俺が言わなくたって お前が一番良く解っているはずだ そうだろ
そして 俺たちは
これを一生続けることになったんだ
俺たちは この枠から もう出られないんだ
【2つめのPOV】シリーズ 第3回
「仕切り」
おわり
【ほかにはこちらも】