「GREENMACHiNE」/ GREENMACHiNE
これは。
これは、「Paranoid」の後の「Master Of Reality」だ。「Screaming For Vengeance」の後の「Defender Of The Faith」だ。「Ride The Lightning」の後の「Master Of Puppets」だ。
GREENMACHiNEが渾身の前作「Mountains Of Madness」から1年というまさかの短いスパンでリリースしたニューアルバム、「GREENMACHiNE」を聴いた時の僕の感想がこれだ。
名盤の後に続く名盤。それはきっと、歴史の必然。
1曲目の「Poisonshed」、GREENMACHiNEが標榜する ”Hard Core Rock” が何かは、この曲を聴けば分かる。未だに1曲目のイントロのリフでこんなに心を奪われるアルバムがあるのかと、心が騒ぐ。別メディアのインタビューで既出だが、コーラスが “殺せ” と連呼している様に聴こえて、気味が良い。
Hard Core然と刻んでいき、Metal然としたギターソロが冴える「Nothing」。爽快だ。
次はスローに、暗闇から這いずって来る様な不穏なリフから始まる「Rattlesnake」。この様にして、アルバム冒頭から陰陽が入り乱れる。
キャリアの代名詞でもある “Red Eye” シリーズ、今回は「Red Eye Pt. 7」。これは言うなれば、GREENMACHiNEのマニフェストだ。
「Howl From The Ocean」の伝統的なMetalの様式に則った荘厳なアンサンブルはGREENMACHiNEの拠点である金沢の冬の情景を頭の中に描いた。事実、この曲は12月に訪れた金沢の景色とシンクロしていた。
スローな曲かと思いきやNWOBHM的なリフが始まる「It's Ruined!」は、何処と無くDIAMOND HEADの「It’s Electric」へのオマージュを感じる。こういうメロディックなMetalのリフをHard Coreの土台に乗せて昇華させることがGREENMACHiNEの十八番だ。
「We Must Die」は逆説的な生への渇望。そう、このアルバムは、表裏一体の生と死を謳っている。
ライブでオーディエンスがレスポンスをしている光景が迫り来る「Ghost Of Narcissistic」、ライブで聴いてこその曲。
00年代の雰囲気が感じられる「Nation Under Fire」。懐の深さは全時代的、全方位的。
そして変わってプリミティヴなサウンドの「Torture Yourself」。曲の前後関係、構成が素敵だ。
「Dragon’s Sorrow」、本作の中では殊に異色の曲。同時に、GREENMACHiNEのルーツ、深淵も垣間見える曲。この多様性こそが、現在進行形のGREENMACHiNEが持つ武器だと思う。
ラストは前作に続き日本語の曲、「孤絶」。耳に残るコードに導かれて、完膚無きまでにたたみ掛ける直情的な日本語、一気に広がる生々しい現実の描写、このクライマックス。ここまでの境地へ己を至らしめるのは生き様なのか、果たして。
曲間でも止まらずに惹き込まれていく、一気に聴き込めるアルバム。アルバム1枚で1曲の様な印象も受ける。とは言え、1曲ずつの個性が立っていて、決して一辺倒という意味では無い。
GREENMACHiNEのこれまでのアルバムを回顧してみると、作を追う毎にオーセンティックなHeavy Metalに向かっている印象を受ける。しかし、それは原点回帰という様な生易しいものではなく、進化の上での結論だと思う。GREENMACHiNEは今やStoner、Sludgeに端を発し、Hard Rock、Heavy Metalの王道を往くサウンドを聴かせるに至ったバンドなのだと。そして更には、聴いていくうちに所謂MetalやHard Coreの音像だけでなく、ふとした隙に例えばTOM WAITSだったり、MOGWAIだったり、XINLISUPREMEだったりと、多様な音楽の要素が頭の中に去来するのは気の所為だろうか。
結成して25年、2度の解散、再結成、様々なドラマをしたためたバンド。初めてGREENMACHiNEに、初めてこの様なジャンルの音楽に触れた人にとっては、怒りの音楽に聴こえるかも知れない。でも、聴いているうちに、とても慈愛を湛えた音楽であると、気付く瞬間が訪れる筈。
10代の頃に心酔し、もう20年近く経った今尚、心に突き刺さったまま抜けない、GREENMACHiNE。
この時代にこのバンドに出会えたことを誇りに思う。
You’ve wanted the best, and you’ve got the best. Here’s one from the north edge of Japan, GREENMACHiNE.
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