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【Storyvilleアーカイブ③】『川越宗一さんに聞く「創作と史実のあいだ」』ゲスト:川越宗一(2021年11月3日開催)

今回は21年11月3日に開催された「Storyville」主催のトークイベント、「川越宗一さんに聞く『創作と史実のあいだ』」をご紹介します。川越宗一さんはみなさんもよくご存じの歴史冒険小説『熱源』(文藝春秋)で、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞と、第162回直木賞をダブル受賞されました。

『川越宗一さんに聞く「創作と史実のあいだ」』 イベントバナー

このトークイベントでは『熱源』の創作秘話を軸に、史実を内包する歴史小説を書くことと完全なフィクションを書くことの違いについて、また、川越さんご自身がいかにして小説家を志されたかといったお話を、文芸表現学科教員の江南亜美子先生による進行のもと、在学生とともに、お聞かせいただきました。

川越さんは、かねてから小説家を目指していたわけではないそうです。衣料品や家庭用品などを通信販売する大手企業の広報・SNS広報を担当され、仕事柄文章が身近に感じられたことをひとつのきっかけに、お仕事の傍らで執筆を開始。松本清張賞という公募文学賞に応募したのが、30歳を超えてからとおっしゃいます。この作品は落選しますが、「もっと面白くかけるのではないか」とオンラインでの小説添削講座を受講し、仕事の合間を縫い、本格的に執筆活動をはじめられたそうです。

川越さんは元々「こんな物語があったら面白いだろうな」といったことを空想する趣味のようなものがあり、旅先で訪れたアイヌ民族博物館で偶然見たブロニスワフ・ピウスツキの胸像に興味を持ち、彼らのリサーチをしていくうちに、史実として残る話や文化を『熱源』へと繋げていったそうです。

イベントでは、『熱源』のリサーチの中で史実として残る話や文化を小説に盛り込むこと、実際の人物や話にフィクションで形づけていくことなど、川越さん流の物事の見方、書き方を作家の生の声と共に知ることができました。日頃から物事に興味関心を持ち、何かを知ったり感じたりする積み重ねを大事にされているんだなと感じました。

このイベントについての過去の記事はこちら

近年も精力的に作品を発表されている川越さん。文庫化された『熱源』とあわせて、新作もぜひお読みください。

『熱源』
川越宗一・著
出版社:文藝春秋
価格:902円(税込)
発売日:2022年7月6日
判型: 文庫

【作品紹介】
樺太アイヌの戦いと冒険を描く前代未聞の傑作巨篇!

樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を『あいぬ物語』としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。

文藝春秋BOOKS『熱源』特設サイトより

<文藝春秋BOOKS『熱源』特設サイト>


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