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【Storyvilleアーカイブ⑤】『創作とAI ~AI開発者と考える芸術の未来~』ゲスト: Sta(クリエイター) 2023年7月29日開催

今回は2023年7月29日に「Storyville」が開催しましたトークイベント、「創作とAI ~AI開発者と考える芸術の未来~」をご紹介します。登壇者のSta(妹尾泰隆)さんは、多彩な才能を持つクリエイターで、2021年には日本語の文章・小説を生成できるAI「AIのべりすと」やおえかきAI「とりんさまAI」を発表されています。

『創作とAI ~AI開発者と考える芸術の未来~』ポスター

 本トークイベントは二部制。第一部では、「AIセーフティの研究と活用可能性について」というテーマの元、まだまだ浅いAIの歴史についてや、世間が危惧し各研究機関や企業に求められる、AIの安全性を高める方法、各所の現状の取り組みなどについて、Staさんによるオンラインの講演会方式でお話頂きました。

 例えば、AIによる画像判別では、その画像が本物なのか、ハッカーによる悪意あるフェイクなのか判定する際、ある特定の部分だけをフィルターにかけてはじくような、単純な方法をとってしまうと、AIの認知が歪んでいくようなこともあるそうです。そのため、2023年時点のAIには、ユーザー側が大量のフィードバックを行ったり、詳細な指示データを用いたりして、優しくやり方を教えてあげる必要がある、ということをお話頂きました。

 また講演の中では、個人レベルの問題として、本人の意図しないところで作家の人格がコピーされることによる被害や、メタバースなどで使われるアバターが勝手にコピーされて望まぬ方向に改ざんされたり、悪印象を植え付けられたりする被害の可能性についても触れられました。多くコピーされるデータは価値の高いものであるものの、あまりにもコピーされすぎてしまうと、データが持つ価値は突然下落してしまうそうです。

 画像だけにとどまらず、ハリウッドでは脚本家の仕事が奪われることを懸念する声も存在するそうです。とはいえ、AIの生成するプロットや文章作品には、人が望ましいと考える傾向のシナリオを学習した結果、最後は必ずハッピーエンドの形におさまりがちだったり、凡庸な文書にまとまりがちだったりという傾向があり、やはり人間が持つ作為や個性を持った作品、創造性はまだまだ必要であると考えられているようです。

 第二部では、学生からの質問に対して、Staさんが考えるAIとの付き合い方についてお答えいただきました。講演を通した中で、人間の脳内で行われていることをAIが再現しようと学習する様子や、AIも思い込みによってデータをゆがめてしまうという話などが伺え、そのことがなんだか人間らしいと錯覚してしまうような場面もあったことが、新鮮に感じられました。
このイベントについての過去の記事はこちら

 Staさんは現在も、株式会社Bit192.Inc.CEO代表取締役として、活動を続けておられます。AIサービスの運営と共に、ゲーム開発も手掛けているStaさんの、今後のクリエイター活動に、ぜひご注目ください。

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