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母親と対面。
葬儀場の安置所に、母親は、寝ていた。
今のドライアイスは煙も出ないし、匂いもしない。祖父の時の葬式から25年。進化している。
お坊さん(住職)の都合で1週間、通夜と葬式が出来ない。しかし檀家だから待つしかないということ、らしい。
福島駅から車の中で、妹と弟に対してキレる。『長女なのに看取れなかったし、私が死ねばよかった……ふたりとも私が頼りないって思っているんでしょ!』とブチ切れてしまった。私自身も意味不明。どうしたんだわたし。
妹が『馬鹿なの?!お姉ちゃん馬鹿なの?40なんねんもさ、私たちと付き合ってきてもう今更じゃん!これがお姉ちゃんじゃん?!私たち何年お姉ちゃんと付き合ってると思ってる?お母さんもさ、お姉ちゃん馬鹿なことしてもさ、抜けててもさ全部許してるじゃん。しょーがないねお姉ちゃんだからねって。今更何言ってんの?死ねばいいって誰も思ってないし誰か言ったの?!なんでそんなネガティブなの馬鹿なの?!』
わあわあ泣いた。
『ごめんなさいっお母さん……ごめんなさい。最後までどうしようもないところしかなかった私ごめんなさい』
妹も弟も涙ぐみ、3人で車の中で泣く。
葬儀場について、おじさんとおばさん(父親の姉とその旦那)が私を見て言う。
『ことねぇちゃん?どうしたの?声がガラガラ、風邪ひいたの?』
1年半前に喧嘩してそれ以来おばさんとLINEをしてそれ以来一回も連絡してないのに
普通に話しかけてくるおば。
『おばちゃん、お姉ちゃんひと泣きして来たのよ』
『ことねちゃん?いいのよ泣いても。泣くよだってお母さんだからね』
なんでみんな……私、1年半音信不通だったのに、なにもなかったように、振る舞うの。
それで、また泣き出してしまう。子どもか。小学生か。涙が止まらない。
『ことねちゃん、お母さんはことねちゃんのことばかり言っていたよ。春休みくるのも楽しみにしていて』
ああ、お母さんが、お母さんが……話をしてくれていたのか。1年半、私のことを庇ってくれていたんだ。
久しぶりに妹も弟もいとこも、おじおばもみんなみんな揃うのだ。
お母さん、ありがとう。
近所の婦人会のひとたちも泣き腫らした目をして訪ねてきてくれている。
お母さん、地域の人とも交流してきたんだね。
お母さん、よかったね。
白い顔にかけた布をそっとよけると。
頭蓋骨に穴を開けて手術をしたから髪の毛を切られており、髄膜炎が原因のようだけど
すごい、疲れきった顔をして、安らかに眠っていて。
お母さん……お疲れ様、と。
葬儀場ついても泣いてしまい、ひたすら泣いていた私が。
お母さんの顔をみたらピタッと泣くのが止まった。
ああ、苦しみが終わって良かったと、思ってしまった。お母さん、顔が、疲労が……苦しんだんだなって。でもそれがおわってホッとした顔してて。これは……終わってよかったのかもしれないと。苦しみ抜いて安堵しているように見えるから、寂しいけど、安らかに、寝ているから。
お母さん……おやすみなさい。なぜ、かわからないけど。お母さん良かったね、って。帰りたかった、とおもうけどこういう帰り方じゃないだろうけど。
お母さん……お疲れ様。お疲れ様だよ
ありがとう。お母さん。顔みたら私ね頑張ろうと思えたよ。
私負けないから。お母さん。ありがとう
お疲れ様、とだけ、おもった。涙は止まった。
私、お母さんの想いを受け継ぐわ。