季節外れ
春が舞台でスポットライトを浴びる
漣のように空気が震える
観客達の目が、舞台に引き寄せられる。
何もない舞台
真っ黒な舞台
白いスポットライトの中、ただ立っている
どこも見ていない目
言葉を発したことのない唇
マネキンのような細い腕
土を踏みしめたことのない足
全てが幻のような、私たちの春が立っている。
静寂
恐怖に似た静寂が幕を上げる。
もう手遅れなことを知る。
始まりだと思っていたスポットライトの中、誰も立っていないことに気づく。
春は、君たちの知らないうちに始まる
春は、君たちが見つけた頃には、朽ち果てる
観客達の目に映る、最期の姿
それは、来年の春が、産声を飲み込んだ瞬間。
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