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2024年StoreHRトレンドまとめ

どうも、StoreHR総合研究所 所長の萩野です。

2024年も終わりに近づき、様々な変化が目まぐるしかった一年を振り返る時期となりましたね。本記事では、特に店舗系ビジネスにおけるHR領域のトレンドを、データに基づいて分析してみたいと思います。


  • 2024年、店舗系ビジネスは人手不足賃金上昇という深刻な課題に直面

    • 特に宿泊・飲食業で欠員率が6.1%と平均を大きく上回り、採用競争が激化

    • フード系職種における平均時給が30ヶ月で約12.5%上昇

  • 2024年の店舗系HRの主要トレンド3つ

    • エッセンシャルワーカー不足の深刻化

    • エッセンシャルワーカーに関わる給与上昇の動き

    • ワークフォースの抱え込み戦略の加速

  • 2025年は2024年の傾向がさらに加速する見込み

    • テクノロジー人的戦略の融合が競争力の鍵

はじめに:2024年店舗系HRのトレンドを振り返る

2024年の店舗業界は、依然として人手不足が深刻な課題であり続けました。厚生労働省の調べによると、2024年5月に実施された調査の結果から、未充足求人(*1)がある事業所は店舗業界に密接に関連する「サービス業」で74%と最も高く、「宿泊業, 飲食サービス業」は67%と高く、「医療, 福祉」に次いで3番目に高い割合でした。

さらに、常用労働者に対する未充足求人の欠員率(*2)では平均3.6%程度のところ、「宿泊業, 飲食サービス業」で6.1%と最も高く、「サービス業(他に分類されないもの)」で5.5%などを平均を大きく上回りました。

引用:「労働経済動向調査(令和6年5月)」(厚生労働省)

*1:未充足求人とは「事業所において、仕事があるにもかかわらず、その仕事に従事する人がいない(欠員)状態を補充するために行っている求人をいい、求人の方法は問わない。」もの。
*2:常用労働者に対する未充足求人の割合。未充足求人がない事業所も含めて集計されている。

欠員率は2022年以降上昇傾向が続いており、2024年2月には3.8%と令和元年以降一番高い数値を記録しました。コロナ禍を経て労働市場、店舗業界を中心に慢性的な人手不足があることを反映しており、特に小売業や飲食業といった対面サービス産業では、需要の回復とともに採用競争が激化し、従業員確保がますます難しくなっていることがうかがえます。

引用:「労働経済動向調査(令和6年5月)結果概要」(厚生労働省)

特に、コロナ禍を経て「エッセンシャルワーカー(*3)」の重要性が再認識される中、彼ら/彼女らの確保と定着は多くの企業にとって喫緊の課題となりました。
*3:「生活必須職従事者」とも呼ばれる。 医療や福祉、第一次産業や行政、物流や小売業など、いかなる状況下でも必要とされる社会生活を支える職種のことを示す。

同時に、物価上昇の影響もあり賃金上昇圧力が高まるため、企業は待遇改善を迫られる状況でした。
主要産業における過去5年間の賃金上昇率では、「サービス業」が6.9%と最も高く、「宿泊業, 飲食サービス業」が5.4%、次いで「生活関連サービス業,娯楽業」が5.3%となっています。このように、店舗業界を取り巻く環境では、特に雇用コストの上昇が避けられない状況になっていることが明らかです。

引用:「令和6年版 労働経済の分析-人手不足への対応-」(厚生労働省)

上記をふまえ、2024年の店舗系HRトレンドをまとめると下記3点が主な論点になります。

  1. エッセンシャルワーカー不足の深刻化

  2. エッセンシャルワーカーに関わる給与上昇の動き

  3. ワークフォースの抱え込み戦略の加速

一つずつみていきましょう。

1. エッセンシャルワーカー不足の深刻化

日本商工会議所が2024年9月に行った人手不足の状況と深刻度の調査では、人手が「不足している」との回答が6割を超える。業種別では、運輸業(83.3%)、建設業(79.2%)で約8割に達しとりわけ厳しい状況であり、「2024年問題」(*4)の影響がうかがえます。宿泊・飲食業、介護看護業、その他サービス業がこれに続くなど、エッセンシャルワーカー不足の深刻さがみてとれますね。

引用:「「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」調査結果」(2024/9/5, 日本商工会議所・東京商工会議所)

*4:2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が短くなることで輸送能力が不足し、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されており、このことを「物流の2024年問題」と言われています。

2. 給与上昇の動き

アルバイト採用における、職種別の平均時給を見てみましょう。

2022年4月を起点として指数化し推移を比較すると、フード系、製造・物流・清掃系、販売・サービス系の3職種の時給上昇が顕著であり、一方で事務系、専門職系の時給は大きく変化していません。
エリア別で見ると、特に首都圏のフード系の職種では過去30ヶ月でアルバイトの時給が約12.5%も上昇していることになります。デスクワーカーに比べ、店舗の現場で働くノンデスクワーカーと呼ばれる職種で強い賃金上昇の動きが続いています。

引用:「アルバイト・パート募集時平均時給調査」(ジョブズリサーチセンター)のデータをもとに弊社にて作成
引用:「アルバイト・パート募集時平均時給調査」(ジョブズリサーチセンター)のデータをもとに弊社にて作成

3. ワークフォースの抱え込み戦略の加速

エッセンシャルワーカーの確保が困難になるにつれ、企業は既存の従業員の定着率向上に力を入れる「ワークフォースの抱え込み」戦略を強化しています。

例えば、就業労働人口が減少する一方、ライフスタイルの多様化に伴い、スポットワークのように柔軟な働き方を求める人が増加しています。この需給バランスのギャップから、企業は安定的なワークフォースの確保に苦戦しており、スポットワーカーも貴重な人材として認識されるようになりました。

結果として、企業は従来の正社員中心の雇用形態から脱却し、多様な雇用形態を組み合わせ、個々のニーズに合わせた働き方を提供することで、優秀な人材の囲い込みを図る動きが加速しています。福利厚生や研修制度の拡充、キャリアパス設計支援など、正社員と同様の待遇を非正規雇用にも適用する事例も増えており、企業はあらゆる手段を講じて貴重な労働力を確保・維持しようと試みています。

まとめ

2024年は、店舗系ビジネスにおいて、人材確保の重要性が改めて認識された一年となりました。2025年はこの動きがさらに加速しそうですね。この変化の時代に、私たちはどのようにして人材確保の壁を乗り越え、働く人々にとって魅力的な環境を提供できるでしょうか?
店舗業界を取り巻く課題は複雑ですが、柔軟な働き方の導入やAIを活用した効率化といった解決策が、未来を切り開く鍵になるはずです。

今後も店舗業界がサステナブルに成長できるよう、次回、2025年のStoreHR事情も予測していきたいと思います。乞うご期待ください!

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