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海外の文化を取り入れるのはそもそも時間がかかる

現代日本人である我々は西洋由来の文物に囲まれて暮らしている。そして西洋思想を日本的に取り入れることにある程度成功している。ビジネスもアニメもその例のひとつ。

しかし西洋の国に比べ日本人の西洋文化に理解は浅い。私自身大学で思想を専攻し西洋思想を学んだ。しかし私は西洋思想を自分の血肉とすることができなかった。

もちろん西洋文化を深く理解する日本人はいる。しかしそれは例外であって、ほとんどの日本人は西洋文化を血肉化できない。

そもそも海外の文化を血肉化するのは容易ではない。

日本に仏教が入ってきたのは6世紀である。しかしそれが一般人に浸透するのは非常に長い時間がかかった。もちろん聖徳太子のように仏教の本質をすぐに理解した人はいた。しかしそれは例外であってほとんどの人はそうではない。

空海、最澄が出たのが800年ころ。仏教の伝来から250年が経過している。しかしその時代もまだ仏教は一部のエリートのものであって、民衆に浸透したのは鎌倉時代からである。

鎌倉時代に浄土真宗が民衆に、禅仏教が武士に浸透することで、ようやく日本に仏教は浸透した。すでに700年がたっている。海外の文化を取り入れるのは、そもそもそれくらい時間がかかる。

キリスト教はヨーロッパの宗教なのでヨーロッパ人は最初からキリスト教を深く信じていたと思われがちだがそうではない。375年にゲルマン民族がローマ帝国に侵入し始め、ゲルマン民族は本格的にローマ文化やキリスト教文化に触れることになる。しかしキリスト教はなかなか浸透しなかった。

河出文庫『ヨーロッパ中世』から引用する。

民族移動からメロヴィング朝フランク王国にいたる時期には、のちのヨーロッパ文化の構成要素たるゲルマン文化、古典古代文化、キリスト教文化の三つが出そろっただけである。三つの要素はお互いにバラバラの存在で、なかなかひとつにまとまりそうにない。それどころか、おたがいに反発しあうことさえある。ゲルマン文化はともかくとして、古典古代文化やキリスト教文化は、なかなかヨーロッパのものとはならない。フランク王国を含めてのゲルマン部族国家の苦悩は、すべてここからくる。

キリスト教のヨーロッパへの浸透は本書によると300年以上かかっている。

日本に西洋文化が入ってきたのは黒船の1853年からである。現在170年が経過している。しかし外来文化が根付くまで300年かかるとすれば、西洋文化が浸透するのは2150年という計算になる。とても待ってはいられない。

私が試みたいのは現代日本と中国思想と西洋思想の合成である。儒教は日本の先祖たちの長年にわたる努力の結果、かなりの程度定着していた。現代日本と中国思想と西洋思想を合成することで中国思想を介して西洋思想を取り入れることができる。すると西洋思想を深く学べる可能性がある。先祖たちの2000年にわたる血と汗と涙を活用できる。それができれば西洋思想を取り入れる日本人の努力も100年分くらい短縮できる気がしている。ただそれを実現するのはかなり難しい。

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