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感情のからくり

燕の人が楚に住んでいて、年老いたので祖国へ帰ることになった。その道中、同行者が彼に「これが燕の城だ」と言うと、彼は態度を正した。「これが燕の神殿だ」と言うと、彼はため息をついた。「これが君の先祖の家だ」と言うと、彼はすすり泣いた。「これが君の先祖の墓だ」と言うと、彼は思わず泣き叫んだ。

同行者は大笑いして「さっきのは嘘だ。ここはまだ晋だよ」と言った。燕の人は、恥ずかしくてたまらなくなった。その後、彼は燕に到着して本物の故郷を見たが、悲しい感情は薄れてしまっていた。


これは『列子』周穆王篇にある説話だ。道家は心理の洞察に長けており、こうした発見が多く残されている。

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