詩【新作「新作」】

いつも新しく何かを書く時
メモの題名に「新作」と添えてから書き始める

後から振り返る時にこの「新作」の記載を消し忘れているケースも多く
俺のメモの中には「新作」が溢れていく

常に今現在を表す文字が更新されていくことで「新作」は「新作」のていをなしていくのだろうが

ただ過去となった「新作」が自身を表すものとして明らかに過去なのかといったらそんなこともないと思う

更新されない自分自身というのも俺の中にきっとあるはずで
それが新陳代謝や絶え間ない前進を善きこととする世情に相反し
無意識ではなく自分ごととして捉えることができるのはまさに喜ばしき退廃だと寝転んだ心が寝言する

8の字を描き続ける袋小路は見当違いの場所に打ち間違えられたまち針のよう

何も導きやしない 何もとどめたりもしない
ただそこに在るだけで無頼
その複雑さのかけらもなく意味づけをし続ける様子にすこし嫉妬しそうでまた俺は丁寧に8の字を描き続ける

雁字搦めでも停滞でもなくそこに在ること
それだけでも本当は充分すぎることじゃないか

そんな場所で生まれる「新作」がどれほどまでに揺らぎをもたらすことができるのか 否か

8の字を描き続ける袋小路
そして打ち間違えられたまち針

粛々とイメージが浮かび上がる最中で
闇のように感じる煌びやかな側面と対峙する

キリキリ…とキリキリ…と
俺の思考の溝や心の余白が押し潰されていくのがわかる

そうして終いには無数のスーベニアメダルが延々と生み出されていくのだよ

自慢の退廃と激情は流転する世の渦に飲み込まれ

それからどのくらいの時間が経ったのかわからない

潰されていった思考の溝や心の余白

その匂いと空気

捉えられぬ虚空

「からん」と響く乾いた音

また生み出されるスーベニアメダル

音が成す心の振動

揺れ動く今

その揺れをどう測るかなんて野暮なことは言わないでおくれよ

伝わるだろうか
伝わらないだろうか

どうだろう?
俺の袋小路とまち針は

これが新作「新作」
寝転んだ心の退廃と激情の寝言


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