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古田敦也の好きな所〜心に残るZETTのミットの色合い〜
僕が子供の頃、ヤクルトスワローズといえば古田敦也のチームだった。
小学校4年生くらいの時、大好きな野球のことをとにかく誰彼構わず話したい時期に、年齢・性別問わず他のチームのファンの人や、野球をあまり知らない人に対しても、古田の話をすると誰もが彼のことは知っていて、古田はすごいと言ってくれて、嬉しかった記憶がある。
ヤクルトファンの自分にとって、古田敦也は黄門様の印籠のような存在でもあった。
2000年くらいに、スワローズが少し弱い時期が続いて、同級生のジャイアンツファンや他のチームのファンの子からも「ヤクルトなんて」と揶揄されても、うちのチームには1番すごいキャッチャーがいるんだと、自信を持って言うことができたのは、子供ながらに救いや安心だったと思う。
ファンクラブのファンブックに載っている、アイメトリクスの広告を見て、メガネをかけていることがあまりカッコ良くはないと思っていた自分は、とても勇気づけられた。(球場で当時配られたアイメトリクスのうちわは、今でも家に置いてある)
新聞で唯一好きだったスポーツ欄の打率十傑に名前が入っていたり、前日の試合結果の打順表でヒットを打っていることが分かると、誇らしかったのを覚えている。
野村ID野球の申し子であり、全てのチームは古田と戦っていた時代、キャッチャーと言えば古田敦也だったし、メガネをかけているからのび太くんと言われつつも、珍プレー好プレーでよく見る武闘派な一面もチャーミングだった。
大事な時に打っては守り、現役の頃から誰もが認める名選手だったが、揺れに揺れたプロ野球界再編の折にも毎日試合があるのに選手会の先頭に立ち、並み居る大御所オーナー陣に物申す。
この姿勢、思考を20年近く前から持ち合わせ、先の見えない混沌とした状況を打破したリーダーシップは驚くべきものだったと、大人になってからより深く感嘆させられ、これは誰も敵わないやと改めて思わせられた。
選手兼監督時代も「代打オレ」は鮮烈だったし(キーホルダー買いました)、リグスを2番に置くオーダーや青木を上位に置く采配も面白かったけど、チームも過渡期で改革追いつかず、結果がでなかったのは非常に残念だった。
今の高津監督に対してもそうだが、うまくいかない時に何処からともなく批判が渦巻いてくることに対して、好きだからこそ辛く感じてしまう。
他球団だとしても、現役時代の華々しい活躍を目にしていた者からすると、たとえば立浪和義や高橋由伸や松井稼頭央が非難される様子をみるのも、辛いものがあった。
古田敦也監督時代の最後や、引退・退任して何年も経った今も「監督としては勝ってはいない」と言われることが凄く嫌だった。今でも凄くそういう言われ方は嫌だと思っている。
いつかまた監督として、もしくは期間限定ではなく正式にコーチとして、フロント側として、何かしらの立場で古田敦也がスワローズに戻ってくるとしたら、ファンからするとそんな最高なことがあっていいのか!?!?と思ってしまうほどの、大袈裟ではなく優勝したくらいの喜びよう、アガりようになると思うのは自分だけだろうか。
それが叶うかは分からないけど、いつかそんな日が来ればいいな、、と切に思っている。
ライト側バックスクリーンそばの見切れ席で、高校終わり幸運なことに引退試合を観ることができたあの日からずっと。
しかし、普段から彼のYouTubeを見ていたり、テレビに出ている時の活躍を見ると、今も野球・スワローズの「外側」ではなく「内側」で第一線の活躍をしていることがわかる。
古田敦也はずっと古田敦也だし、とてもたくさんの人たちにとって、より野球やスポーツが身近なものになるように、楽しさを感じてもらえるように一生懸命動いていることがわかる。
彼がもとよりスワローズだけにとどまる器ではないということも分かってはいるが、やっぱり戻ってきて欲しいな、、と思ってしまうのは、ワガママなんだろうか。
古田の色々な活動を見ていると、野球をやっている子供達や独立リーグの選手、現役・引退後の選手など、様々な人たちとも絡みがあるのがわかる。
野球の多様なあり方をふまえ普及に尽力しているなかで、個人的な印象だが、いつも古田はキャッチボールをしながら会話をはじめることが多い気がする。
古田はキャッチボールをすると、相手が投げたボールをキャッチする時の音が凄く響いて、投げている人の良い所を会話のなかで褒めながら距離を近づけていく。
この動きや会話すべてがとにかく自然で、見ているこちらも委ねたくなるような信頼感、安心感があって、彼に引っ張られていくような気持ちになってくる。
これが超一流のキャッチャーということなのか、そもそもの古田敦也の人間臭さ、人たらしで正直な人柄なのかはわからないけど、とにかく古田ファン・野球ファンとしては見ていて楽しい。
そして何よりも心に響くのは、ブルーのZETTのミットで美しくボールを掬う、キャッチする所作だった。
柔らかくしなやかな左手の動きや、しゃがんで構えた時の機敏な足の動きがたまらない、時が経とうが何一つ変わっていない。
あの頃憧れた古田敦也のまま、今も野球界にたくさんの種を蒔き、水と栄養をやっていることが、何よりまた古田敦也を好きでよかった、ヤクルトスワローズのファンで良かったと思わせてくれる。
また戻ってきてくれないかな。
秋のキャンプや春のキャンプで、ピッチャーたちが嬉しそうに古田にボールを放っているのを見るのも楽しいけど、さらにその先を見せて欲しいな。
いつもそんなことを思っている。