詩【記憶の収斂】

道端に汚れ落ちている
ミラレボーダーの手拭い

目に入るやいなや
膝から下の私の足が
思いのほかはやく動き
ほぼ反射的に
踏むことを避けた

夜の帷
枯れた水面の底が轟き
幾度となく振り返るべき日常が
記憶の泉から噴出してくる

それは
ミラレボーダーの小さな服
満面の笑み

差し込んだ朝の陽射しは
無秩序なケリーのような傾斜で
町の灯りよりもはやく君を照らす

その光の手触りを頼りに
記憶のダビングが繰り返される

しかし
日常のなす言葉を借りるならば
記憶や実態の有無に関わらず
延々と何かに振り回されている
今はそんなような気がしてならない

そんな心持ちの時には
振り返るべき日常と
目の前の事実に
身も心も委ねていく

身も心も委ねていくからこそ
放り出されなかった思いが
心にとめたまま収斂される

そこに恥じらいはなく
新たになった思いは
絢爛な装いを振り払い
天つの風に吹き飛ばされ
流転する

思いの丈を綴るほど
明日の朝を願うほど
羽ばたく羽音は遠くなる

いずれか羽音が和音を成し
分散しては交差する
美麗な音色もかたや黄昏
朽ちていくのが世の習い

いつかのことを思うなら
他の介在は求めずに
かの精神と気概は麗し

計り知れない海を探して
未だ見ぬ空の先を見据えて

そんな瞳とふと目が合えば
私のすべてを眩耀する

忘れる間もなく巡る季節と
同じくすべては帰結する
幸いなことにすべてのことは
始まった以上終わりがある

始まりに湧き
何を終わりとするかを思案し
探し刻んだ年輪と円
いくつもの願いの周回

ミラレボーダーの小さな服
満面の笑み
その残像と光を頼りに

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