怖い話①

一時期営業で籍を置いていた会社での怪談を一席。

昔、在籍していた会社が本当に嫌な会社で完全に横領の被害者だった俺に責任の一端をおっかぶせようとしてきやがったからその会社すぐ辞めた過去がある。
今は吸収合併繰り返して原型がないからもう書いても良い熟成具合だと思う。

結論から言うと酷い話で総務担当者が俺の交通費と出張旅費をパクってやがったんだ。
申請から2ヶ月経っても3ヶ月経っても交通費も出張費も帰ってきやしない。

まずは上司にそれとなく愚痴ってみたんだけど、まあ処理が遅いから待っててくれという話だった。だから待った。

やがてグループ会社の全国的案件を受注できたので営業も作業の一端を請け負う為
日本全国津々浦々の営業所に出張する必要ができてきた。
で、じゃんじゃか領収書回してるのに旅費出張費が一向に振り込まれない。
松山に飛行機で向かったあたりで財布が厳しくなってきた。

疲れて帰社しても事態は変わらない。
で、ある日キレて部長、課長をcc、係長格の直属の上司宛でメール送信した。
申請済費用処理が滞っている為、未収金が重なり困ってきている。
処理されるまで出張を差し控えたいというような内容だった。

酷いのはそこからだ。裏で総務担当者のクソヤローが処理済みと記録して現金を引き出して着服していやがったんだ。
最初は上司もその記録だけを見て全部処理済みになってる。口座とか間違えてないか確認するようにほぼ叱責という形で嗜められた。

寝耳に水の俺は口座のコピーをとって、記録と照合してもらった。
それで、やっと悪事が露見したのであった。

競馬に突っ込んでしまった。
それが本人から聞き出した横領の表の理由らしい。
だが、俺はもっと深い事情を察していた。

その気の弱い犯罪者は全社的に侮られており、技術者の一派から近くの大井競馬の馬券買いなどをやらされていたようだ。
総務だから銀行へとか言って会社を出ることは簡単だからな。

まだ裏がある。
その犯罪者のパシらされていた総務担当はある時気付いたわけだ。バカのくせに。

-こんな馬券買っても絶対に当たらない。買ったことにして預かったお金ノんでしまおうと-

同じ会社に勤める者同士変な信用があり、買った馬券は現物渡しではなく、
換金までして、勝ち金だけ集金していたようだった。
もしくは最初から全ての筋書きが確信的であったかだ。

要はアホの集団である。
資金もタニマチもなく僕ちゃんノミ屋を開帳していたわけだ。

マーフィーの法則。

そう、ある日その内の誰かが結構な穴を開けたらしい。
僕ちゃんは当然その馬券を買っていない。

本物のノミ屋は穴は幾らで打ち切りという酷いルールが適用される。
天井に守られている。
方や僕ちゃんは後ろ盾を持たないただのサラリーマン。やばいよね。

当選者から会うたびに集金を迫られていた。
だから、会社の金に手をつけた。また、バレにくい現金出納の個別科目を狙ったと。
そこで中途で営業ばっか行ってる俺を狙ったんだと。

お前は新聞の三面記事か!と言わんばかりのやり口だった。
でもそれはおかしい話ではなかった。

社内に情報が広まりザワザワし始めた頃、
俺は上司とともに部長に会議室に呼びだされた。

謝罪と経緯説明かな?


バカ言え!!

『なんでもっと早く直属の上司に相談してくれなかったんだ?』
『なぜこんな大事にしてしまったんだ?』
へ?流石に俺も頭の回転が止まった。

俺が悪いの?
あのバカなストーリーの中で俺がトチッたのは何処だ?
どこのセリフ間違えたんだ?台本寄越せ。
間違い探しをしても何も浮かび上がらない。

直属の上司も追い打ちをかけてくる。
『もっと上手いやり方があっただろう?
   これで彼を解雇する羽目になってしまった。』

????????
俺の8bit CPUは唸りをあげていた。事態がまるで飲み込めない。
その後言い訳なのか叱責なのか謝罪なのか全くわからん一方的な事情をツラツラと伝えてきたが、耳に入るもなく。

夢見ごごちで自席に戻った。どんな夢って勿論悪夢。
隣の出来るパートのバックオフィスの女性に訊かれる。

女)謝罪とかあったんですか?
俺)ううん、俺が怒られた。
女)???
俺)???

政治である、組織の問題であった。
ややこしいけど当時の会社は親会社からの出向組の政治力が強い技術者組と
プロパーと中途の3種類がいた。

今回馬券を買いに走らせ、金を回収しようとした一派は出向組の人間だった。
アホの総務は悲しいことに子会社プロパーだった。
詳しく聞くと買いに走らせてた側も毎回現金を渡していなくて、あとであとでのある時払いだったようだ。
なのに当たると締め日を切られて集金という強制呑みに連れ出されていたそうだ。
そこで僕ちゃんも毎回自腹で馬券を買うのがアホらしくなってしまったらしい。

水は高きより低きに流れる。
自然、プロパーより立場が低い中途で派手に動いている俺をターゲットに
金を抜いて、俺の知らんうちに仮払いまでされていた。
財布くんという経験をさせてもらった訳。

会社としてはうちうちで済ませて隠し通したかったわけだ。
特に親会社の耳には入れたくない。
いくら平成の世でもこりゃ通用しないわ。

中途が一人消えようがなんでもなかったんだろう。
俺はしばらく会社に出社しなくなった。

頭の先から尻尾までアホらしくなって転職先を先に決めてから
その猿山からおさらばした。
もう猿のパワーゲームに付き合わされるのが心底嫌だったので
組織のしっかりした営業の力が強いメーカー系企業にしがみついた。

一刻も早く縁を切りたかった。
今だったら悪知恵働かせて少し踏んだ食っていたと思う。

当時の俺は心が綺麗だった。
会社は反吐が出るほど汚かった。

京急青物横丁。
俺は絶対に近寄らないね。

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