いいことあるよ

今日、ルーチンで体重計に乗った後、病室を後にする時、看護助手さんに見られちゃったんだ。

今、俺の両腕共に二の腕のあたりから真っ青な内出血で埋められている。

朝は寒くなってきたからフリースを着てくるが、
病院にいる間は半袖でいなくてはならない。

入室後退室時まではTシャツ姿なんで腕は丸見えになってしまう。

『どうしたの?その腕!!』
看護助手さんの目に留まり俺に向かって結構な声量で叫んだ。

俺は足を止めTシャツの両袖を捲った。まあ、歩けなくて車椅子なんだけどね。

両腕に真っ青になってしまった点というには広すぎる大層な面積の青アザに溢れていた。
片腕がこうなることは結構日常茶飯事でどうしようもないことなんだけど、
両腕隈なくということが珍しく感じられたんだろう。

助手さんが小さく呻く。
なんで?
経緯をかいつまんで伝える。
先週救急で運ばれた時ルートが取れなくて6回ぐらい差し直しされたんだ。

俺の左手はある理由で表面の血管を使い潰しており、点滴、ルートを取れる静脈がほぼ見つからない。
救急看護師さんは下手ではなくて輸液の流せるような血管をどうしても探さざるを得なかった。
針を刺しても液が流れない場合少し針先を動かしてどうにか確保しようとするのだ。
結果、俺の細い血管を突き抜いて刺した側の逆を針が突き抜いてしまい、中を流れる血がゆっくりと溢れ出ることになる。

6回刺した。6個の出血点ができたことになる。
時間経過とともにそれは俺の腕を青く染めてゆく。
そしてそれは重力の影響を多大に受け、放っておいても引っ張られるままに下に下に侵食してゆく。

それを見た助手さんが驚いてしまったという訳だ。
今回は自分でもどうかと思うまだら模様になってしまっているから。

『これからいいことあるよ!』
助手さんが別れ際に俺に明るく声をかける。
だといいよね!明るく振る舞ってそう応えた。

でも、その優しさに触れても俺の心は動かなかった。
これからいい事なんて起きやしない。頑固な心が押し返す。




だって、いいことはもう起こっているじゃん。
  まだ、生きてるもん。俺。

いいなと思ったら応援しよう!