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アトリエで語ろう4

「へー、うちの商店街にアトリエがあるんだ」
馬場は相沢の話を、居酒屋の席で聞いて驚いた。
 この地域一帯には、頼母子講(たのもしこう)という風習が残されている。10人程度の人が集まり、月に一度、一定の金額を持ち寄り、その総額を一人一回、総取りする。その人以外の人には、配当金を支払うが、すでに総取りした人には、その権利はない。全員が総取りを一巡した時点で仕切り直しとなる。最初に総取りした人にとっては、資金の前借りであり、最後の人にとっては、貯金であり、庶民の小口金融とも言える。その形態は様々で、総取りする人をくじで決めたり、入札と称して配当金の額の大きさで決めることも。また、配当金が定額であったり、ないものもある。旅行のための積立金を別途集め、数年に一度旅行をする場合もある。頼母子講(たのもしこう)を行う飲食店にとっても安定的に収入が見込め、経営の大きな柱ともなっている。さらに地域コミュニティにとっては、貴重な情報交換の場でもあった。
 相沢と馬場は同じ頼母子講のメンバーであった。アトリエの保存を訴える相沢の話を聞きながら、馬場は商店街の活性化につながるだろうかと、漠然と考えていた。

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