Melody

 北海道の冬は厳しい。除雪された雪をよけながら、陽平は久しぶりになじみの居酒屋を訪れていた。
 ‘あれ、陽ちゃん?陽ちゃんだよね?久しぶり!」
店の大将が、笑顔で迎えてくれた。あの頃と同じように。

 「えー、本日をもって僕たちのバンドは解散します。みんな、今までありがとう。」
学生バンドの僕たちは、学年最終年を迎えて岐路に立たされていた。ある者は就職、ある者は家業を継ぎ、ある者は幸せな永久就職と、それぞれの道を歩む。そして、自分はといえば、一人プロを目指して上京する。
 「さあ、みんな、この寄せ書きに一言書いて。」
居酒屋の大将に感謝の意を込めて、寄せ書きを書く。貧乏学生達に、出世払いだと言って、思いっきり飲み、食べさせてもらった。曲作りのため、ここで大喧嘩したこともある。出来あがった唄を、ギター一本でみんなで歌った。四年間の思い出の詰まったこの店とも、今日を限りに、サヨナラだ。

「あれから七年か、早いね。」
みんな元気だろうか。あの頃の唄を心の中で歌いながら、密かに再会を願った。七月七日の織姫と彦星のように。

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