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「ガラスの蜂」とテキーラ・サンライズ

12月12日発売の翻訳『ガラスの蜂』の見本刷が届いた。
 
ご覧のように帯(腰巻)は黄色から深紅へのグラデーションになっている。この色をデザイナーに説明するのに、カクテルの「テキーラ・サンライズのように」とお願いした。で、完成を祝して銀座のバーでテキーラ・サンライズを注文、ふたつを並べてシャメしたわけだ。

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なぜテキーラ・サンライズにこだわったか。ガラスの蜂の胴が紅茶色、目が黄色なのでそのトーンを合わせただけでなく、文中にガラスの蜂が花の蜜を吸って集めた蜂蜜が、しだいに濃くなって蜂蜜色になっていくシーンがあるからだ。さらにもう一つ理由がある。
 
満目青山はわが心にあり、の「弱法師」が西方を仰ぐとき、見えぬ目で見る壮大な日没の光景を連想してほしかったからだ。「近代能楽集」で弱法師を現代劇にした三島由紀夫も、大空襲で焼け落ちる帝都を幻視させている。ユンガーの小説の主人公も、ドイツ国防軍の軽騎兵部隊に所属し、夜空を焦がす戦火を見たにちがいない。
 
それはヒエロニュムス・ボスの祭壇画「快楽の園」の三連右の地獄の地平に見える炎だろう。「ガラスの蜂」もこのボスの祭壇画にヒントを得た箇所が多数ある。
 
店頭に並ぶのはもうすぐ。ドイツ語からの翻訳は、小生の宿願の一つでした。手に取ってご覧いただけたら幸いです。

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