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eスポーツの運ゲーについて①

 最近は東京オリンピック開催の善し悪しが度々話題に上がっている。未曾有のパンデミック下で大規模な大会を催すことは感染対策の観点では非を唱えたくなるのは人間である以上当然である。

 そういったリスクを承知でも開催する動きが強いのは「競技」そのものが持つ人々を賑わせる魅力を持っていることに他ならない。「競技」というのは一概に運動を伴う勝負にとどまらず、ギャンブル要素の強い麻雀やボードゲーム、eスポーツ等、多岐にわたる。「スポーツ」のエッセンスに「運動」が含まれなければならない、なんてことを言うのは時代錯誤。というよりスポーツが運動「も」含んでいるだけでスポーツ「が」運動と必ずしも合致しないだけのことである。

 しかし、競技の持つ興行性を大きく損なう要素が存在する場合がある。接触競技における過度のラフプレーや八百長、そして、運だけで勝敗が決まる場合もそれに含まれるかもしれない。

 よりそれが顕著なのは運動スポーツではなく、ボードスポーツやeスポーツの方だろう。特に観戦層が若いeスポーツの競技シーンでは運で勝敗が決まった場合、盛り上がる人と冷え切る人でわかりやすく分かれる。どっちかと言えば私も冷え切る口だ。運だけと。

 とは言え、前例のラフプレー、八百長と比較すると運を絶対的に「悪」と位置づけるのはどうも難しいようである。そこで運が左右してくれる恩恵がどこにあるのか、eスポーツを主な例として話していきたい。(麻雀、カジノなどに詳しくないので…。)

 eスポーツの中でも運要素が多いジャンルとそうではない物がある。ゲームにそこまで興味の無くても知っている人の多い格ゲーや、日本で一番人気なシューティングゲーム(FPS ,TPS)、日本ではあまり人気は無いが世界的には最もメジャーなeスポーツであるMOBA(マルチプレイオンラインバトルアリーナ)などは実力主義が色濃く、運が介入する余地は殆どない。

 それに対して、TCG(トレーディングカードゲーム)Aute Chess(オートチェス)は与えられるものが選べないためかなり運要素が強い。たった今山札からめくった物が勝敗を決めることはざらである。観戦者視点でそれを歓声のスパイスと評するか興行的異物とみるかはその人次第だ。

 では、運のもたらす恩恵は一体何なのか。それは実力主義を部分的に否定することで参入障壁を緩和していることである。

 ”部分的には”とはどういうことか。それは、ある程度実力が劣っていても勝敗に介入する余地が生まれやすいことである。

 例えば、実力主義色の濃いラグビーやMOBAの場合、コンディションや相性、作戦の組み立て方次第で多少結果が変動することはあれど、よほどのことが無い限り、格上のチームが勝つことが多い。これは実力スポーツ特有の強い者が勝つ理論である。

 これに対して、運要素の強い競技では上記に加えて、相手が上振れすぎる、こちらの運がいくら何でも弱すぎる、あるいはそれらの逆のように実力の伴わない勝敗の帰結が存在している。

 換言すると、実力で決まるべき勝負の世界で部分的に運が大きく介入しているとでも言うのだろう。では、これがなぜ参入障壁を低くする鍵になるのだろう。厳密には参入障壁を緩和しているというより、リタイアの機会を遠ざけるという方が正しいかもしれない。

 eスポーツは実力ゲームであれ運ゲームであれ、”始めるのは簡単”という共通事項がある。運動系とことなり、毎日どこか遠出したり、遅くまで残ったり、けがのリスクがあるわけではないからだ。道具をそろえる以外にすることが少ない。加えて実力系は運系より数倍の長期的な練習をしなければ、中々実績に繋がらない。すると、だんだん苛立ってきて辞めてしまう人も出てくる。確率で勝てる隙間のない世界だからだ。

 しかし、運ゲーは実力だけではなく、運も必要な競技。言い換えれば、運が良ければ実力が周りより劣っていても結果が出るかもしれない競技。時間的には早いかもしれないし遅いかもしれない。それも運。
 それと比較して絶対的な才能と努力量しか必要とされない競技。ゲームとはいえ、eスポーツをこれから始める人が、より夢を持って高みを目指して始めやすいのは前者であると思う。
 後者はどちらかというとやるにつれて明らかに自分が人より優れていることに気づいて、より高みを目指すような競技だと私は考えてしまう。サッカーや野球がそうであるように。

 簡単に言い直すと運ゲーはそのゲームのeスポーツのプロプレイヤーを志す人を増やしやすい。当たる確率は低くとも、抽選会のガラガラは回したくなるようにたくさんの「いけるかも」が列をなしている。

 このように「運」はeスポーツドリーマーに夢を持たせやすくしているのでは無いだろうか。というのが今回の趣旨である。もちろん、これは主観であることは間違いないし、支離滅裂なところもある。

 ただ、私は運要素とやらを初めてきたバイキング形式の店で、しっかりルールを説明してくれる店員さんのようにでも見えたのかもしれない。


続く。



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