「おろかなり60億のシラミどもよ」昭和のまんが。
「60億のシラミ」飯森広一
昭和の作品です。
飯森先生は動物漫画を多く描かれており、「レース鳩0777(アラシ)」が一番有名かと思います。
その同時期の連載作品として描かれ、動物漫画ではない「60億のシラミ」。
友達の家で週刊チャンピオンは読める環境でしたが雑誌で見た記憶はないので、友達の家に月チャンはなかったものと思われます。
書店で見かけたので父のふところ財産で単行本を購入。おとうちゃんありがとう。
ずっと読み直したいと思ってたんですがようやくぼちぼち読んでます。
実家から2巻を持ってきました。
ビンテージ感。
安い・・・
レース鳩0777がまだ7巻。
今3巻の頭ぐらいまで読んでいます
「アラシ」は熱い展開を終え完結、しかし「シラミ」の方は完結せずに終わってしまったようです。
この漫画は「氷河期がやってくる」という危機とそれに立ち向かおうとする人々、そして良くも悪くも人類を動かしていこうとする神と悪魔の戦いが描かれます。なんとも壮大。政治とか組織とか、子供にはちょっと小難しいのですが、スケール感なども魅力がありました
週刊連載をしながらのところ、飯森先生はどうしてもこのテーマを描きたかったんじゃないかな・・と思います。
どうしてこの連載企画が通ったのか考えてみると、
当時実際に起こっていた異常気象などから「タイムリーでキャッチーなテーマ性である」と編集部に受け取られた可能性があると思います。
1巻目では、当時実際にあった日本や世界各地の低温現象や、
来るべき氷河期の予兆と思わせる生物達の変化などを取り上げています。
確かにこんなニュースあったと思うので、飯森先生が何もないところから想像したわけではないのです。
思い出すと氷河期が来たら怖いなあとか大変だなあとかいう気分が存在していました。
まさか将来、温暖化がやばい・・・・となるとは。
特筆すべきは70年代後期の時点で、想像とはいえ飯森先生が「全球凍結」の設定を作っていたことです。
全球凍結(スノーボール・アース)についての記事
最近では全球凍結が「あった」とされることが多いですが
この学説が出てくるまでは、ほとんどそんなこと誰も考えてなかったと思います。
飯森広一先生と「60億のシラミ」読者をのぞいては。きらーん。
飯森先生も作中で「今まではこんなこと無かったが・・」というように描いているのであくまでも「起こったらサイアクだよね」という設定で、そのことを知ってしまった学者、政治家などがその運命に翻弄されていきます。
しかしその影には神(天空坊=イエス)と悪魔(赤ちゃんの大地くん)の長年にわたるバトルの存在が・・・
ここが、ただのパニックSF漫画ではないところ。
神側には12使徒にあたる人物、悪魔側には100人を超える天と地の星の名を持つ人々がそれぞれの使命に乗っ取って働くことに。しかし味方にできる人数の差が大きすぎでは・・。神単体のパワーが強いのかも。神だし。きっとそう。
全球凍結を知った首相は、戒厳令を敷いたり食糧備蓄するため配給制を施行、国民は本当の理由を知らされず、その不満やパニックを抑えるために血も涙もない特殊警察が組織される。
氷河期来襲が極秘事項とはいえ、こんな大変なことを総理と秘書官だけでどんどん決めちゃうんで、おいおい国会は?とか思ったりしますが、漫画なので・・・ええ、漫画ですから・・・。見えないところで採決とかしているはず。きっとそう。
さておき、この特殊警察の人々は新選組の人物を当て込んだものなのですが、芹沢我妄(せりざわがもう・字が違ってたら後で修正)という人が出てきて、元ネタが「芹沢鴨」だったことを後から知ったときに拍子抜けしました。
かも・・・ 濁点がない・・
「近藤勇」が「近藤勇気(ゆうき)」、
「土方歳三」が「土方歳年(としとし)」
。。。
これもかなり印象に残りました。
「沖田」という人も出てきますが下の名前出てなかった気がします。
バイクでそこらを暴走族の如く走り回っており、ちょっとワイルドセブンぽいかも。
石油がもったいないので電気バイクということになっています。とはいえ当時の電力はほとんど石油で発電しているはずですが、エネルギ-については後のストーリーで触れていたと思います。地熱発電などはこの漫画で知りました。
当時は素直に人間の味方である悪魔の大地くんを応援していたけど
今見ると天空坊もちょっとかっこいいかも。
また実家へ行ったとき続きを読みたいと思います。
電子書籍でも出てますので、気になる方はぜひ。
(追記;2021/10/05 天空坊が悪魔と呼ぶので素直にそう思っていたのですが、どうやら大地くんは「仏」の設定です。
そういえばよく座禅組んでるし、天空坊の12人の弟子に対し彼には108人の弟子?がいます。言わずと知れた煩悩の数なので恐らく仏教由来の数字。
天空坊の支持する唯一神からすれば他教の神は全部悪魔なので、そう呼んでいたのですね。うーん、深い。一応全部読み直したけどだいぶ前なので忘れちゃいました。続きが読みたかった。)
「日本沈没」なども取り上げられてる昨今なので、氷河期を温暖化で沈む日本に置き換えたら結構成り立つんじゃないかしらとも思うし、
せっかくなので全球凍結設定を生かしつつ温暖化といわれてるのにまさか!みたいなのもいいし、
改めて飯森作品が注目されるとイイナーなんて思ったり。
私たち人類の運命は・・・
未来へ続く。