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雨とボクの話

スクランブル交差点の青信号が点滅する。
キミを呼び止めるけど、雨が傘を叩く音でボクの声は届かない。


ボクたちのはじまりも雨だったね。


ボクたちは終わったのさ。ただキミとボクの話が。
エンドロールはないよ。あるのはただ痛みだけ。


突然の雨に振られて軒先で偶然雨宿りしたみたいに出会ったボクたち。傘を差し出すのはいつもボクだったよね。


確かにボクは男らしくなかったのかもしれない。
キミに呆れられるまで直らないほどボクはバカなのに、キミに嫌われた後でボクはボクを好きでいられるほどアホじゃなかった。


今振り返ると、ありきたりな話だね。
キミはボクの傘を必要としなくなっただけ。


繊細なガラス細工のように今にも壊れそうなキミを、ボクは掌の中で大切にしてたんだけど、キミは指の隙間からアスファルトに滑り落ちていった。

慌てて拾い上げるボクの指先に、キミの破片が鋭く突き刺さる。

ボクの涙はキミには見えない。


「弱さ」を振りかざすのは、最も「凶暴」な行為だと思う。
「やさしさ」を強要するのは、最も「卑怯」だ。

そうやってボクたちの距離は大きくなっていった。


雨が上がるとキミは去っていった。


ボクたちは終わったのさ。ただキミとボクの話が。
エンドロールはないよ。あるのはただ痛みだけ。


終わったのさ。あるのはただ指先の痛みだけ。

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