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盗んだもの

リカちゃん人形が欲しかった。

自転車も欲しかった。

当時流行っていた「ゴム飛び」の白いゴムも
欲しかった。

同じ年頃の子達が持っている物は
何一つ持っていなかった私。

ある日、私を含め友達3人で学校の
グランドでゴム飛び遊びをしていた。
(きっと学校が休みの日だったと思う)

友達2人が「トイレに行きたい」と言って
私1人、友達が戻って来るのを待っていた。

その時、友達のゴム飛びのゴムがどうしても
欲しくて…

ズボンのポケット…

ではなく下着(パンツ)の中に隠した。

そして友達2人がトイレから戻ってきた時、
どこかになくしてしまったと嘘をついた。

しばらく辺りを探したけど見つからなくて
友達は諦めた。

その時、私は友達の物を盗んだ罪悪感よりも
白いゴムを手に入れた喜びの方が大きくて
「もう見つからないから家に帰ろう」みたいな
事を言ってそのまま家に帰ったと思う。

近所の子の自転車を盗んだ事もあった。

近所だったからすぐに私が盗んだ事がバレて
私はその子のお母さんに注意された記憶がある。

近所の人同士で「自転車を買ってもらえない子」
「可哀想」と私の目の前で話していた。

何か欲しいものがあっても「買って欲しい」と
母に頼んだ事は一度もない。

母が怖くて、母に何かを頼む事もできず
他愛ない話(学校での出来事とか)も一切できず
私はいつも母の前では緊張して固まっていた。

学校で使うえんぴつや消しゴムすら
無くなっても母に頼めなかった。

母に頼み事ができなかったのではなく
母に話しかける事ができなかった私。

欲しかったもの、聞いて欲しかった事、
甘えたかった気持ち、求めていた母の愛情、

その全ての心が置き去りにされたまま

後に母は、私達を置いてどこかへ消えてしまった。

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