New Vision for Furniture 新しい視点で世界を見つめる人に聞いた、日々の暮らしと家具
インナーウェアを通して向き合う、自分の体と性。
クリエイティブディレクター haru.
Z世代から絶大な支持を得てきたインディペンデントマガジン『HIGH(er)magazine』の編集長を務めるクリエイティブディレクターのharu.さん。同世代のアーティストたちとともに、当時のメディアではタブー視されがちだった政治やジェンダーにまつわるテーマに踏み込み、従来の規範や社会通念に風穴を開けてきた。そんなharu.さんが今、新たに取り組み始めたのがインナーウェアブランド〈HEAP〉のプロデュースだ。
「HEAPには『積み重ねる』という意味があるのですが、下着と服を自由にレイヤードして楽しんでほしい、年齢を重ねることをネガティブに捉えずに、好奇心を持って新しい自分を探求し続けてほしい。そんな願いが込められています。ファーストコレクションでは2種のブラジャーをメインにショーツなど計5型を発表しましたが、シグネチャーアイテムである『2 colors strip bra』は肩紐を見せても着られるデザインで、2本あるストラップのうち1本をあえて肩から落とすなど、様々なスタイルを楽しめます」
雑誌編集やアーティストのアートワークなど様々な分野でクリエイティブワークを行ってきたharu.さんだが、下着のプロデュースは初めてのこと。なぜ今、新たな挑戦に乗り出そうと思ったのだろうか。
「私、これまで欲しいと思う下着がずっとなくて困っていたんです。ランジェリー売り場に行くと、西洋人のモデルのセクシーな写真があって、それが自分の想像している人物像とマッチしなさすぎて、自分がこれを着てもいいのかなって、すごく違和感があったんです。ワイヤーがバッチリ入っていて盛れて、レースがたっぷり付いていてって、もちろんそこに憧れを持つ人もいるだろうし、いいとは思うんですけど、そうじゃない選択肢があってもいい。それで自分で作ってみることにしたんです」
ブランドのローンチとともに、休刊していた『HIGH(er)magazine』を復刊。〈HEAP〉コンセプトブックとして、力強いメッセージを発信している。
「大学時代に『HIGH(er)magazine』を立ち上げた時、同世代の子たちがその時気になっているトピックをみんなで考えられるような雑誌にしたいと思っていました。本を通して同じ悩みや、それまで言葉にできなかったことを共有して繋がることができたらという気持ちは今も変わっていません。下着は毎日身体の一番近くにあるものだからこそ、自分の体について考えることや、性についてのトピックスとも深く関わってきます。特に性に関することは日本での教育はすごく遅れていて、学校ではまだまだきちんと教えてもらえない。全人類に共通することで、大人たちがみんな経験してきていることなのに、なぜ?って疑問をずっと持ってきました」
『HIGH(er)magazine』no.6では、アーティストで精神科看護師として当事者研究を行う津野青嵐と「私たちの身体」をテーマに対談し、自分の身体がいつの間にか他者や社会の評価対象になってしまったこと、「自分の身体」を取り戻すことについて考えた。
「私自身、社会に出た後も身体や性のことについて無知であるゆえに傷つくことが多々ありました。どうしたら自分の身体と向き合って、ポジティブに捉えていけるのか。それをみんなで考えていきたいなと思っているんです。〈HEAP〉を立ち上げた背景にも、下着を通して自分たちの身体や性について考えたり、知識をつけたりするきっかけを作れたらという思いがあります」
そんな思いを乗せてローチンした〈HEAP〉は、4月に販売会を実施。ディスプレイに選んだのが〈stiiilll〉の什器だった。選んだのは空間に合わせて多様なカスタマイズができるスチールシェルフ。〈HEAP〉のブランドカラーであるレッドを別注した。
「私たちが“HEAP RED”と呼んでいる、少し深みのある赤を忠実に再現してくださって、什器も含めてブランドの世界観を確立することができました。普段事務所として使っているアパートの一室が会場だったのですが、壁付きのシェルフということで圧迫感がなく、突っ張り棒で天井に固定するシステムのおかげで設置もスムーズでした。内装に傷がつかないのも、すごくいいですね」
試着して全身を見られるよう中央にミラーを設置。右サイドには商品をしっかり見せられるフェイスアウトのハンガーバー、左サイドにはブランドを作り上げる際にアイデアソースにした写真などをスクラップ的に展示できる有孔ボードをチョイスした。
「棚板を追加したり、ハンガーバーの種類を変えたえり、パーツ単位で変更ができるので、来シーズンにアイテムが増えても柔軟に対応できるのがありがたいです。今後、ブランドとともにこのシェルフがどう変化していくのか、それを見るのも今から楽しみです」
haru.
1995年生まれ。幼少期と高校時代をドイツで過ごす。東京藝術大学在学中に『HIGH(er)magazine』を創刊。“同世代の人と一緒に考える場を作る”をコンセプトに企画・編集・制作に携わる。卒業後の2016年にクリエイティブスタジオ〈HUG〉を設立。コンテンツプロデュースやブランディング、アーティストマネジメントなどを通して、習慣や常識、社会通念を新しい視点で見つめ直すミッションに取り組む。
https://www.instagram.com/hahaharu777/
https://h-u-g.co.jp/
shelf & options
shelf pole × 4
shelf plate 250 × 3
shelf plate 400 × 2
shelf faceout hanger bar × 2
shelf hanger bar × 1
shelf mirror L × 1
shelf peg board × 1
shelf case S × 2
shelf case M × 2
shelf basic bar × 4
leg & options
leg L wood × 2
table top / all melamine dark gray × 1
stiiilll(スティール)
「仮設」をコンセプトにした状況の変化にフレキシブルに対応するファニチャーブランド。stiiilllのプロダクトは、「環境が変化しても捨てなくていい家具」という持続可能な価値を提供します。
https://stiiilll.com/
credit
Photo : Hidetoshi Fukuoka
Text : Yuriko Kobayashi