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一週間の歌うたい

世界が赤と青に溶け込む瞬間。
灰色の雲でさえその一部に染まり、アタシもその雲になる。
橋の上で人々は足を止め、今日の終わり、または始まりを一身に吸い込む。

曲がりくねった薄暗い階段の道を降れば、静けさの中にこの街の安堵が吹き抜ける。
鳥居を潜った先にはいつも大樹が見守り、カラスが寝床へ帰っていく。
立ち止まったり、まだ歩き続けたり。
明日はまだ遠いすぐそこにある気がする。

すっかり蝉が夏の夕暮れを独り占めして、見上げるところには小さな一週間の姿があった。
窓を開けてピアノでFコードを奏でると、膨らんだカーテンの隙間からオレンジ色の世界が差し込んだ。

丘の上から流れていく3ヶ月目の景色に相も変わらず目を奪われる。魔法みたいだ。

たった30分のその人に、遠くて近くにいるあなたに、そんなグラデーションに染まった明日が訪れますように。
叶うなら、あなたの声になりたい。あなたの意味になりたい。あなたの音楽になりたい。

アタシはそんな瞬間を、
マジックアワーと呼ぼう。

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