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イヤホンをなくした日

大半の人が外に出るときにはイヤホンをつけている。
私もその大半のうちの一人だ。
いや、むしろその中でもコアメンバーに属するくらいイヤホンを手放せない。
ちょっとそこまでの買い物でもイヤホン
しかも必ず大音量で音楽を聴いている。
そんな私が片道1時間もある通勤なのに
ありえないことにイヤホンをなくした。ありえない。
昨日の記憶を辿ると、イヤホンをしながら帰ってきたので絶対に家にある。カバンの中、ポケットの中、出かける寸前に気づいて大捜索したけど見つからず。

そうして、年に一度あるかないか(いや、ない)のBGMなし通勤。駅までの10分間は本当に憂鬱だった。家を出る時間に大捜索したので電車を一本遅らせたのも憂鬱。「あー、今日いいことない日だー」なんて思いながら歩いていた。不幸中の幸いといえば、頭の中でヘビロテしてる音楽がなかったことくらいだ。

ところがイヤホンをしないと当たり前に周りがよく聴こえる。見える。感じる。
今日は一年ぶりくらいにnoteを更新しようと思えるほどおもしろくて優しい大阪の人たちに出会えた。
今日が平日のど真ん中だったら、明日も仕事を頑張れる。金曜日なのが残念なくらいだ。

さて、ホームで電車を待っていると、いつもお隣の扉から乗り降りしている車椅子の女性がいた。
会うはずのない人に出会った。
「さては、この人も今日は遅刻か?」と思うとふふっとなった。大きなお世話かもしれない。
いつも会うので降りる駅も知っている。
なんとなくぼーっと降りる様子を見ていた。
すると女性は、周りの乗客やスロープをかけてくれた駅員さんに「ありがとう」と声をかけていた。
きっと今日だけではないだろう。
優しい世界が私の知らない目の前で繰り返されていたことに今日はじめて気がついた。

そして私の隣に乗ってきた女子高生3人組。
うちの1人が言った言葉に耳を疑った。
「聞いて〜。お父さんの不倫相手変わってた〜。」

!?!?ん!?

「ともこはー?」
「ともことは別れたらしい!いまはようこ!」
…どうやら、娘に不倫していることを公開している父親は、時たまに愛人のいる場に娘を呼び出しては、新しい彼女を紹介したり、ご飯に行くようにしているのだそう。なお、母親はそのことを知らないらしい。
「開き直ってるのがきしょいわー」という女の子。
…え!そこなの!?不倫してることとか、それを娘なのに知っていることとか、お母さんには内緒にしなきゃいけないこととか、そっちの方が私は気になるんだけど!?

どうやら今の女子高生は色々と耐性がかなりあるようだ。当事者の女の子も、話を聞いている2人も。
朝からなかなかディープな会話に出くわした。
※必要ないかもしれないけど、出てきた名前は一応変えてます。一応ね。

さて、最後は帰り道の商店街で。
「こんな所で倒れても誰も助けてくれへんでー」
どうやら、おばあちゃんがおばあちゃんに対して
寒くなってきたからはよ家に入れ、と言っている。
「そしたら死んでまうな!」
2人で大笑いしながら家に入っていった。
大阪の下町は、こんな会話が日常茶飯事で割と目立つ声で降りかかってくる。

そんな感じで誰とも話していないのに
優しく、楽しい気持ちになって家に帰ってきた。
雑多で思い返すと大したことのないエピソードの集まり。それでも私は今日のことを忘れたくないと思った。放置していたけど、noteをやっていて良かった。
イヤホンを外して、街を歩いて、たくさんのおもしろくて優しい人たちに出会って、大阪の街の好きなところを久しぶりに感じた。

車いすの女性とはまた来週きっと出会う。
今度はイヤホンをしていても彼女の声が聞こえるはず。
女子高生3人組にもまた会いたいな。
たまには一本電車遅らせてもいいかもしれない。
商店街は毎日通るから、また賑やかなおもしろトークが降ってくるかも。
イヤホンの音量ちょっとだけ下げておこうかな。

そんなことを感じた一日。
今日の締めくくりは部屋のどこかにきっとあるイヤホンを探すこと。私にとってイヤホンはやっぱり必要な存在、でもたまには置いていっても良いかもしれない。そんなふうに感じさせてくれた一日。探し物、見つかりますように…!

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