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バズだらけのTwitterに一石投じる

精神科を色々と探し回っていた時、とある病院のカウンセリングで「最近はツイッターを見ているのも苦痛でして」と伝えたら「ツイッターを見ることすら苦痛ですか…それは鬱ですね!」なんて言われたことがある。さすがに安直すぎやしないか。ツイッターが苦しいのは、ユーザーにとってシステム面が改悪されたことや治安の崩壊が原因なのであって、だからまあ、精神科医に「ツイッターを見るのが苦痛」と伝えること自体お門違いなのですけども。

現在のツイッターは良くも悪くも洗練されている。「おすすめ」タブが愉快な情報を次々と押し付けてくるので、止め時が分からなくなる仕組みだ。そして、バズらせようと必死なユーザーたちは、いかに140文字以内で刺激的な文章を作るか?という課題に命を懸ける。その結果、「5億年ぶりに◯◯したらどちゃくそ××で横転した」というような極端に誇張した表現が一つの最適解だと気づき、好んで使うようになる。

そのほか「バズる構文」がどんどん開発され、それに便乗したツイートも大量に出現する。これが一時のトレンドになるので、ツイートを作る側にも見る側にも「テンプレにはまったお笑いをテンプレ通りに楽しむ」という、楽ちんなエンタメルーチンが出来上がる。そこに創造や想像の余地はほぼない。

タイムラインを眺めることは情報処理です。先述の通り、おすすめタブには「巧みな投稿」がどんどん流れてくる。文頭から文末まで、意味のある情報がぎっしりと詰まったツイート。ユーザーは画面を高速でスワイプし、それらの情報を処理していくのです。「巧みな投稿」とは往々にして感情を揺さぶるものであり、面白いツイートを見て笑顔になったかと思うと、次に目にしたツイートでは怒りが沸き起こったりする。たった数分の間に、僕たちは喜怒哀楽の感情をものすごいスピードで行き来させられるのだ。自分の生活とはほぼ無関係なツイートを見ることによって。これで疲れないはずがない。

まったく僕は無力ですが、それでも「一石を投じてやるぜ」という思いで、最近はゆるめのツイートを多くしています。

僕が見た景色を切り取った、ほんの10秒程度の動画。これを見たからといって大笑いすることも激怒することもないでしょう。そのくらい意味が薄く、限りなく無意味に近い動画だ。しかし、僕とて何も意図がないわけではない。少なくとも「水が透明で綺麗だなあ。ピチャピチャという音が心地いいなあ。」と思って動画を撮ったし、これを見た人も何かを感じ取ってくれれば嬉しい。その感情に正解も意味もないけれど、想像をする余地や楽しみはあると信じています。これが心のゆとりなのではないか、と。

動画を10秒に設定している理由は、単にキリがいいというのもありますが、140文字の文章を読むのと同じくらいの所要時間かと思ったからです。意味だらけのタイムラインに、無意味な動画がぽつりと現れる。狼の群れに迷い込んだこの一匹の羊は、現在のツイッターへのアンチテーゼでもあります。

もし僕のフォロワーが同じようなツイートをしていれば、僕は嬉々としてそれを受け止めることでしょう。想像が膨らみ、その人の存在や匂いを感じ取れる気がするから。画面越しだからこそ、こういうアナログに近い温もりを伝えたいのです。世の喧騒に疲れたあなたにとって、僕のツイートが一時の癒しとなり得ることを祈って。

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