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みんなどこかへ行っちゃった
「お友だちの悪いところじゃなくて、良いところを沢山見つけましょうね!」そんな保育士さんの教えに背くように、何でもかんでも汚点ばかりに目が行ってしまう。
季節の変わり目だけでなく、何事においても切り替わりのタイミングというのは正念場である。僕はいま30歳ですが、そういう「節目」は何度も迎えている。回数は減れど、これからの人生にもあるでしょう。
この節目というのは、年齢を基準に迎えることも多い。現在、日本国民は18歳で成人となる。能力など関係なしに、誰もが平等に「あなたはもう一人前ですよ」という称号を得るのだ。
若い時は、この手の称号を勝手に与えられることが多い。幼稚園や保育所の「年少さん」から始まり、長い人は大学を出るまで約20年間、称号が毎年切り替わっていく。
称号自動切り替わりシステムに慣れすぎた。大学を出た途端、僕は社会人[N]になる。翌年も、そのまた翌年もN(ノーマル)のまま変わらない。自分から動き出さなければ。今までみたいに毎年新たな称号が自動付与されることはない。
ひ、ひどい!いきなり突き放して一人立ちしろだなんて...そんなの聞いていない!周りの同い年の連中だってみんなそう思っているはずだ。なあそうだろお前たち?一緒に異議申し立てをしようじゃないか!
...え?会社で昇進して部下ができた?結婚して家庭を持ったから休日は家族サービスで忙しい?資産運用を始めて老後の資金を蓄えている?
なんかね。気づくとみんないつの間にか色んな称号を持っているんだよね。おちゃらけたフリをして、学生時代から着々と準備してたってわけだ。まったく末恐ろしい!
学生時代はメイク禁止なのに、社会に出た途端「女性が人前でメイクするのはマナーでしょ」とか言われる世の中ですから。周りの言っていることを間に受けすぎて、「ほなワイも安心か〜〜」と思っているとエライことになる。
あれほど言ったじゃないか。テスト前の「勉強してない」と、マラソン前の「一緒に走ろうぜ」は絶対に信用するなと!
たまに地元の幼馴染と遊ぶ。彼は仕事で着々とキャリアを積み、結婚して子宝にも恵まれ、先日ついに家を購入した。しかも僕の実家のすぐそばに建てた!当て付けか!昨年末にお邪魔したのだけど、北欧風の温かみある空間が良かったよ。一緒にマリオパーティした。
おかしいな。約10年前までは彼と何ら変わりない生活を送っていたはずなのに。同じ地域に住んで、同じ高校に通って、同じように勉強して遊んで。なのに。僕はいま非正規でキャリアもへったくれも無いし、結婚はおろか恋人もおらず実家暮らしだし。
10年でこんなにも違う道を辿ることになるのだなあ。みんなみんな、大量に称号を持ってどこか遠くへ行っちゃったよ。
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