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ニオイで蘇るさまざまな記憶

昨日ラウンドワンへ行ってきた。最寄りの店舗まで車で1時間弱かかるし、最近はアーケードゲームもプレイしなくなったので、久々の来訪であった。店内に入って一呼吸しただけで、鼻の奥にスゥっとラウワン特有のカオリが吹き抜ける。ああ…これは…。その瞬間、さまざまな記憶がフラッシュバックする。東京・池袋にあるラウワンに通い詰めていた頃に見た景色、ラウワンという店に初めて訪れた時の第一印象、ラウワンにまつわる様々な記憶という記憶が、一瞬にして脳内で高速再生される。面白いもので、ラウワンにはラウワンのニオイがあるんですよね。ゲーセンならどこも同じかと思いきや、それぞれ特徴が異なる。北は北海道から南は沖縄まで複数のラウワンを訪れてきましたが、どの店舗に行ってもみな同じカオリがするのだ。

ニオイと記憶には、ただならぬ関係を感じてならない。思い出の景色を目の当たりにした時、過去の記憶が蘇ってくるものだけど、目で見た光景よりもニオイがそのトリガーとして大きいような気がする。甘い味、苦い味という味覚のように、甘いニオイ、酸っぱいニオイなど嗅覚にも分類がある。しかし、それとは別に、雰囲気を記録しておくような複雑なニオイがある。甘い、酸っぱいという単一のニオイではなく、もっと細分化された種々のニオイが折り重なって形成される複合的なニオイ。それが鼻の中に舞い込むと、インスタントカメラで撮影された写真のように、じんわりボヤァっと過去の景色が脳に映し出されるのである。

圧巻の景色を前にしてひどく感嘆することはあるけれど、感傷に浸るという場合、ニオイが原因になっていることが多いように思う。初めて訪れた場所であっても、これまでに嗅いだことのあるニオイが混ざっているはずで「なんで寺を見て親の実家を思い出すのだろう」とか、一見なんの結びつきもないような記憶が呼び起こされたりする。寺社に使われている木材とか、本堂の畳の香りとかが関係しているのかもしれない。

PCやスマホは日々進化していますが、いまだに情報通信でニオイを伝える手段が実用化されていない。もしそれが実現すれば、思っている以上に多くの情報を発信できることは間違いない。旅行系のVlogなんか、ニオイが伝わるだけで信じられないくらい臨場感が増すのだろうなあ。しかし、目で見ている景色と鼻で嗅いでいるニオイが旅行先の情報であっても、その動画を見ているのが自宅であれば、自分の身体が実在している場所と目・鼻から入ってくる情報とに大きなギャップが生まれる。果たして、脳はその状況をうまく処理できるのだろうか。僕はVRゴーグルを長時間つけていると酔ってしまうのですが、それは目で見ている景色と肌感との差に起因していると思っている。なので、動画がニオイを伝えられるようになると、VRゴーグルと同じく「ニオイ酔い」みたいな現象が起こるのかもしれない。

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